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2/17 ニュースなスペイン語 Apaleamiento:棒で叩くこと

集会の参加者らによってなされた最も暴力的な行為はダンボールで作られた人形を棒で叩いたことにある(El acto más violento realizado por los asistentes fue golpear una piñata o muñeco de cartón)――。

昨日、マドリード地裁の裁判官コンセプシオン・ヘレス(Concepción Jerez)はこのように判決文を読み上げた。

取り上げようとずっと思ってたら、先に判決が出てしまった…。

コトの発端は、去年の大晦日、スペイン社会労働党(PSOE)の本部があるマドリードのフェラス通り(Ferraz)で、以下のような人形を吊るし、これを棒でこてんぱに叩くというイベント(主催者によれば「新年を迎えるための平和的な集会(concentración pacífica con el fin de celebrar el año nuevo)」)にある。

スペイン社会労働党の本部で、「あの人」を彷彿させる男性の人形を吊るし上げて、これを滅多打ちにするとなれば、同党としては黙ってはいられない。

総書記たるペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)首相とその政治思想に対するヘイトクライムを助長するもの(incitación al odio)として、マドリード地裁に1月12日、提訴した。

で、その判決が冒頭に上げたもの。

しかし、判決文は次のように続く。

人形は一本眉毛で、耳が際立っており、鼻は長い。その外観は、どのように見ても、スペイン政府の首相の姿を表すものではない(una figura con apariencia de varón unicejo, con orejas prominentes y nariz larga. En ningún caso su apariencia reproduce la imagen del presidente del Gobierno)。

さらに、

恐らく、こうしたイベントは市民の視点からは良くは見えないし、その場で発せられたことばは粗悪であり、卑わいである。従って、この観点の限りにおいて、非難されるべきである(Quizás no esté bien visto desde un punto de vista cívico, y el lenguaje sea vulgar y soez, y evidentemente, podrían ser censurables desde esta perspectiva)。

乱暴なことばを発しながら、人形を棒で滅多打ちにすることはまずいとした上で、しかし、人形はサンチェスではないとした。

そして、次のことばが、中々、含蓄がある(し、含意がありすぎて、訳が困る……)

Educaciónが無いことは犯罪ではない(La falta de educación no es delito)。

Educaciónは学校などで成される教育全般も指すが、家庭などでの教育、つまり、しつけも表す。

公の場で卑わいなことばを発しつつ、群衆が人形を棒で野蛮に叩くことは、果たして、教育の欠如か、はたまた、家庭でのしつけが行き届いていないためか。

または、その両方か。

いずれにせよ、判決は「本件は訴追されるべき案件ではない(por tanto no deben ser perseguidas)」とし、これ以上の捜査はしない(archiva)と結審した。

社会労働党の幹部らの苦虫を噛み潰したような顔と、デモの主催者や参加者らがベロベロバーと舌をだして笑っている光景が目に浮かぶ。

写真は滅多打ちにされた人形。

当時は「サンチェス人形」としているメディアも多かった。

ちなみに、社会労働党の連立パートナーであるスマール連合(Sumar)のトップ、ジョランダ・ディアス(Yolanda Díaz)は、件のイベントを民主主義の観点から耐えられるものではない(intolerable en democracia)、としながらも、ヘイトクライムには当たらない、と当初から説いていた。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240216/jueza-archiva-causa-apaleamiento-muneco-sanchez/15974164.shtml