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4/22 ニュースなスペイン語 Canaricidio:カナリア殺し

「-cidio」は「大量殺りく(genocidio)」とか「自殺(suicidio)」などに出てくるラテン語起源の接尾辞で「殺す」ことを意味する。

「殺虫剤(insecticida)」に出てくる「-cida」は「-cidio」の親戚(というか、こちらが歴史的には古いから、本家かな…。まぁ、それはさておき………)。

今回のキーワードは、「canari-」という語が付いてるので、タイトルのように「カナリア殺し」という意味なのだが、これは、あの炭鉱にお供する、黄色い鳥(写真)ではなく、この鳥が原産とされているカナリア諸島州のこと。

これは、以下のような、あるデモに参加している群衆の持つ横断幕に書かれていた、新語というか、言葉遊びの類。

ちなみに、横断幕の前半に書かれているのは「観光が嫌いなわけじゃない(No es turismofobio)」という意味で、ここに「まるでカナリア殺しだ(Es canaricidio)」という文言が続く。

カナリア諸島州の州内の総生産の35%、そして、州内雇用の40%が観光がらみ(el turismo supone un 35% del producto interior bruto de Canarias y cerca del 40% del empleo)だという。

そんな訳で、島民としては、まぁ、観光から十分に恩恵を受けているので、観光嫌いとは言えないところなのだが、デモ隊によれば、「カナリアにも限界はある(Canarias tiene un límite)」。

日本でも度々問題となる「オーバーツーリズム(overturism;sobreturismo)」にあえいでいる島民らの不満が爆発し、先週の土曜日、列島各地のみならず、スペイン国外の各地でも、同時多発的にデモが繰り広げられた。

主催者発表では、テネリフェ島とグラン・カナリア島だけで13万人以上参加したという(ちなみに、州政府(Delegación del Gobierno)は列島全体で5万6000人の参加としていて、相変わらず、政府の発表は主催者のそれよりも少ない)。

また、州外でも、例えば、アンダルシア州のマラガやグラナダ、そして、カタルーニャ州のバルセロナでも、さらに、ドイツやイギリスといった国外でも、同様のデモが発生したという。

デモの参加者らは、

◆ 今、私たちはここ(マドリード)にいるのは、もうあちら(カナリア諸島)にいられないから(Hoy estamos aquí porque no podemos estar allí)
◆ 持続可能でない企業の利益のために、地元住民が追い出されている(expulsando a la población local en beneficio de una industria "no sostenible")

などと話す。

なぜか?

それは、低賃金(bajos salarios)、高い貧困率(altos índices de pobreza)、家賃の高騰(escalada de los precios de los alquileres)、道路や様々場所の飽和状態(saturación de las carreteras y de los espacios naturales)などが島民を苦しめているから。

そのため、人々は新たな建築物の工事を一定期間中断する措置(moratoria)や、環境に負荷をかける商業的営みに対して税金をかけること(ecotasa)を求め、そして、外国資本による地元の住居の買い占めを規制すること(regulación de la compra de vivienda por parte de extranjeros)を主張しているのだが。

観光立国スペインにとっては、お客さんには来てもらいたいが、自国の民も自然も守らなきゃいけないところで、今回の大規模デモは、中々、痛いところをつかれた感がある。

と、高みの見物だが、同じことは、日本にも言える訳で……。

どうすれば良いの…。

写真はカナリア(スペイン語では「canario」)。

ちなみに、なぜカナリア諸島が「犬」の古語「can」から派生したのかについては、昨年の7月28日の小欄(https://note.com/jidequin/n/n176dd10d793f)を参照のこと。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240420/canarias-tiene-limite-miles-personas-manifiestan-contra-modelo-turistico-masas/16069282.shtml