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【洋楽雑考#19】〜 アイドル東西歌合戦 〜見えざる糸

皆元気? 洋楽聴いてる?

少し前の話になるが、第91回アカデミー賞はいろいろな意味で話題を呼んだ。

「Bohemian Rhapsody」でラミ・マレックがアラブ系男性(彼はエジプト系移民)として初の主演男優賞を受賞。

Queenのパフォーマンスや、1992年に公開され、同楽曲のリヴァイヴァルに当時大きな役割を果たした傑作コメディ「Wayne's World」の主演マイク・マイヤーズ、ダナ・カーヴィがスピーチを行なったりと、正にお祭り騒ぎになっていた。また、Lady Gaga 姉さんの「Shallow」歌曲賞受賞パフォーマンスもステキなものだった。

いまやアメリカを代表する俳優になった感のある共演のブラッドリー・クーパーだけど、

10年前なんて「Hangover」というウルトラお下品コメディの主演...時が経つのは。

作品賞の「Green Book」も黒人ジャズ・ピアニストを主題にした作品というだけあり、いつもより音楽が幅を利かせていたような。

完全に余談だけど「Green Book」で助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリは、「Spider Man - Into Spider Verse」にも声優で出演、同作は長編アニメ映画賞を獲得してるんだけど、あまり誰も喜んでない...

さて、仕事と関係ないところでネット検索をしていたら、90年代に全英で大人気を博したBoyzoneが再結成/フェアウェル・ツアーを行なっているというニュースを見つけた。

"どんな規模でツアーやるんだろう?"と思ったら、ビックリしたの何の。

O2、ウェンブリーといった巨大アリーナはもちろん、今月から来月にかけてはアジアまで旅程に入っている。私ごとながら、このグループとはデビュー当時からの数年仕事をしたことがあり、来日のたびに、スタッフ全員がげっそり疲れるという(良い)思い出が頭に。

というワケで(もないんだが)、今回のお題はイギリス(アイルランド)VSアメリカ・アイドルを考察してみよう。

このBoyzone、そもそものアイディアとしては、"アイルランド版Take Thatを作ろう"というものだった。

後のアイドル・グループに多大な影響を与えたTake That。"The Beatles以来、イギリスで最も成功したグループ"とも呼ばれる彼ら。

1992年にメジャー・デビュー、95年にロビー・ウィリアムズが脱退、翌年にはあれよあれよという間に最初の解散を経験するのだが、当時の勢いたるや。

後のイギリス系ボーイズ・グループの雛形を作ったと言っても過言ではないだろう。

それ以前のUK系というと、どうしてもバンド中心だった傾向が。Bee Geesがアイドルか?と言われてもちょっと困るよね。

Bay City Rollers あたりがその元祖か?さて、現在に話を戻すと今年2019年はTake That の結成30周年にあたり、それを記念して昨年にはベスト盤「Odyssey」を発表(Re-imagined Greatest Hitsとサブタイトルされている)、春には大規模なツアーが組まれている(O2アリーナ6回連続...恐れ入りました)。

アイルランド出身といえば、Westlife もかなりの人気だったよね。

Boyzone のローナン・キーティングがマネージメントに加わっていたというのも面白い。2012年に解散したのだが、こちらも昨年再結成、5月にツアー開始。

BoyzoneとWestlife、残念ながらアメリカでの大成功を収めるまでには至らなかった。

音楽的な要素を考えると、両グループとも、いわゆる"しっとり歌い上げ系ナンバー"がヒットの大半を占めていたのが大きいと思う。

Hip Hop の台頭とも関係しているかも。

で、アメリカでもイケる、"スタイリッシュでクール、かつストリートっぽさも感じさせる"次世代グループが、他ならぬSpice Girlsだったワケだ。

1996年リリースの「Spice」アルバムはBillboardチャート1位を獲得。

続く「Spiceworld」も3位と大成功を収める。

しかし、複数の女性メンバーの手綱を取る難しさにマネージメントは気づいていなかったのか、あっという間に失速したのは残念。

ちなみに、こういうグループが絶頂期に絶対やってはいけない事業が"映画製作"であるというのを実証したのも彼女たちだった気が。

さぁ、気を取り直して再結成だ!6月のハイライトは、なんとウェンブレー・スタジアム3連発。

しばしの空白期間を置いて、イギリスのみならず世界中を凄まじい勢いで駆け抜けたのがOne Diection。

5枚のスタジオ・アルバムのうち、4枚が全英、全米で1位を獲得(UKチャートでデビュー・アルバムだけが2位だったというのは意外。

TV番組(彼らの場合「The X-Factor」)にエントリーしている少年たちをグループとしてまとめあげ、デビューさせるという手法、現在にいたるまでアイドル・グループ生産方としては最も有効だ。

"打倒アメリカ"をいつも考えている(ワケでもないんだろうが)イギリス人としては、彼らの大成功によって、ようやく念願がかなったという感じか。

さて、海を渡って、アメリカに目を向けると。

いわゆる"アイドル・グループ"として、最初に認知されたのがJackson 5になるのだろう。

というか、最初にこの名前が出ちゃったら、後はどうするんだという決定版なんだけどね。ご存知マイケル・ジャクソンをメイン・ヴォーカルに据え、1969年デビュー。

アルバム・クレジットにデカデカとあるように、当時の彼らをサポートしていたのはダイアナ・ロス。

それはともかく、Jackson 5 (後にJacksons)の素晴らしいところは、黒人グループでありながら、白人ファンにもまったく違和感なく受け入れられた点だろう。楽曲の素晴らしさは言うに及ばず。

リリースから数十年経っても歌い継がれてるんだもんね。

Jackson 5 以外で、懐かしのボーイズ・グループというと、1970年代に日本ではカルピスのTVCMで有名だったThe Osmondsが浮かぶ。

外国人が食品のCMに出演するというアイディアも当時は斬新だったし、何よりもメイン・キャラクターのドニー・オズモンドのキュートさが話題に。

ちなみに彼らのヒット曲のうち、「Love Me for a Reason」はその後、Boyzoneがカヴァーするという意外な展開に。

もう少し、パンチが欲しいんですよ、先生方...

その後、1980年代になり登場したのがNew Kids on the Block。

ボビー・ブラウンらを擁した黒人グループNew Edition の結成に関与していたプロデューサーのモーリス・スターによって発掘された彼ら。1984年にモーリスが見出した最初のメンバーがドニー・ウォルバーグ(ちなみに弟の俳優マークはNew Kids最初期メンバー、

俳優転向以前に組んだユニットMarky Mark and Funky Bunchでは1991年に「Good Vibrations」シングルがBillboard1位を獲得)。

1986年リリースのセルフ・タイトル・アルバムこそ全米25位と振るわなかったが、セカンド「Hangin' Tough」(1988年)

そして、4作目の「Step by Step」(1990年)では見事に1位をゲット(同タイトル・シングルも1位)。

海の向こうのイギリスは再結成ムーヴメント真っ盛り(ホント、よくこれだけ多くが今年に集中したものだ)なんだが、

対するこちらアメリカでは解散を経験せずに(エラい!!)見事なカムバックを果たすという稀有な例が。

Back Street Boys である。

今年リリースの新作「DNA」は見事全米1位を獲得。

キャンペーンの規模も大きかったよね。

今時、アーティスト(しかもグループ)がプロモーションで来日するというのはけっこう珍しいことなんだけど、TV出演もあったし、あらゆる意味で貫禄を感じさせる存在になっていた。

細かいイザコザこそあれ、メンバーが不動というのも美しい。

同時期にファンの嬌声を浴びまくっていたのが*NSYNC。

1995年から2002年と、BSBに比較して活動期間はかなり短いが、2000年リリースの「No Strings Attached」では初動セールス240万枚という大記録を手にしている。

その後、ソロ活動に移行したジャスティン・ティンバーレイクの活躍も記憶に新しい。

という感じで、実にさらっとなんだが、英米におけるアイドルの変遷みたいなものを書いてみた。

お互いの土壌が一見無関係なように見えて、実はぼんやりと繋がっている気もする。

大陸東部に移住したアメリカ人の祖先である当時のイギリス人たちに、「これイギリスの音楽なんですよ」とOne Directionとか聴かせてみたいね。

では、また次回に!

※本コラムは、2019年3月28日の記事を転載しております。


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