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【SEALDs研究】第二回 野党共闘の緩衝材になった若者たち

シールズ結成当時の野党

【SEALDs研究】第一回 リベラルはイケてるを全力で演じたマネキン部隊

第一回ではSEALDsが左派・野党支持者のマネキン、モデル像だと指摘しました。そしてもう一つの特徴として野党共闘のクラッチ、そして緩衝材のような役割を果たしました。第二回は野党共闘におけるSEALDsの立ち位置を検証していきます。

「野党共闘」、もとは「民共共闘」。現在は関係は解消に向かっていますが、2017年の第48回衆議院議員総選挙、2019年の第25回参議院議員通常選挙で一定の成果を挙げました。野党共闘においてもSEALDsは影響力を持ったと思います。

SEALDsの結成は2015年、当時の状況を紹介します。まだ「民主党」の時代でした。旧民主党政権時代は外交、安全保障、教育、こういった場面で部分的に共産党と協力することはありましたが、「共闘」というレベルではありません。

象徴的な出来事は2015年8月29日、兵庫県内で開催された「8・29政党と市民の対話集会」です。

主催者の「護憲円卓会議ひょうご」によると民主党・社民党・新社会党・緑の党4党からは5月末に「参加」、共産党は5月20日に、生活の党は5月28日に「不参加」の連絡があったとしています。

共産党は特に新社会党との関係、また生活の党は民主党との対立上、不参加としたのでしょう。この時分は野党間の軋轢が強かったのです。こうした政党の動きを見てSEALDs・奥田愛基氏は「護憲円卓会議ひょうご」の編集後記で野党の協力を促しました。

⦿ 6/29奥田愛基(シールズSEALS:自由と民主主義のための学生緊急行動) 『さらに力を入れたいのは野党の結束だ。全野党に言いたい。 主張をぶつけ合っている場合じゃない。小選挙区制度の中でどうすれば与党に太刀打ちできるか、真剣に考えるべきだ。 14年12月の衆院選も打倒自民で候補者を一本化できれば勝てた。(自公の得票よりも野党の得票合計の方が多い)、各選挙区で野党候補者を絞る予備選挙の実施を求めたい。この国が立たされている危機的状況を理解できていれば必ずできるはずだ。』 

同年は民主党・岡田克也代表(当時)から「国民連合政府」の呼びかけがありました。トップレベルでは共闘という目標があっても実際の現場では相当な距離があったとは容易に想像できます。

当の奥田氏も同年9月25日にTwitterにこう投稿しました。

流石に国民連合政府は無理でしょう。岡田さんが今日言ってたラインが妥協点。それでも大分マシでしょう。

まだ選挙協力もできない時代、国民連合政府は壮大すぎます。しかしこうした見解を述べる辺り発言権も高まったと言えます。

クローズアップ現代最終回で特集される

2015年に結成されたSEALDsはわずかのうちの政党、マスコミも重視する存在になりました。市民集会でSEALDsの活動家がヒップホップ芸というのはよく見かけたものです。

2016年3月17日、NHKクローズアップ現代の最終回でSEALDsが取り上げられました。SEALDsが若者の代表という訳ではありません。特定の活動家を「代弁者」として扱うのはマスコミの常套手段。長寿番組・クローズアップ現代の最終回で報じられるのはマスコミがSEALDsを重要視していることがよく分かります。いわゆる「寄り添い報道」」というもので、私たちは若者に「寄り添っている」というポーズのための報道ですね。

そしてSEALDsが関わった集会で最も重要なのが、同年6月5日の「全国総がかり大講堂」です。ここで特筆すべきは野党議員が集まったこと。野党共闘に弾みがつきました。

同年8月5日には日本共産党創立94周年記念講演会で来賓のSEALDs・諏訪原健氏が挨拶。

シールズは8月15日に解散します。シールズは「自由と民主主義のための学生緊急行動」です。緊急行動をおしまいにして、もっとポジティブにどういう社会をめざすかという提案をしたい。(中略)。大事なことは、その議論を政治家だけにまかせないことです。参院選で成立した野党と市民の共闘をもう一歩前にすすめることを私たちの手で成し遂げましょう。

その通り8月15日に解散。市民運動に大きなインパクトを与えたSEALDsですが公式的にはわずか1年の団体でした。

その後、野党共闘は急ピッチで進みます。

2017年には日本共産党第27回大会で3野党・1会派代表が挨拶しました。これを同年1月19日、赤旗でこう主張しました。

日本共産党の躍進と、市民と野党の共闘の前進という、二つの仕事に同時に取り組むためには、国民と深く結びついた強く大きな党が必要であり、分厚い党をつくることは歴史的な大きな責務です。日本の政治で、戦後初めて焦眉の課題として、自民党政治を本格的に転換する野党連合政権をつくる可能性が生まれている、胸おどる情勢です。その可能性を現実のものにするため、ともに知恵と力を尽くし、さらに進もうではありませんか。

2015年に地域の集会ですら拒絶した共産党が「野党連合政権」と訴えるまでになりました。共闘関係の構築にはSEALDsが少なからず影響力を持ったのではないでしょうか。

ここで前稿の「イケてる」要素が大きくモノを言います。各政党としてもSEALDsの意見を取り入れ協力することは先進的で先端的と考えたのでしょう(実際はマネキンに過ぎませんが)。逆に言えばポッと出の若者たちの冗長な演説にすがる他ない野党の体たらくとも言えます。ただ共産党、非共産党野党の軋轢に対してSEALDsが緩衝材役になったのは間違いないと思います。

緩衝材というと大袈裟でしょうか。SEALDsがいるからなんとなく盛り上がっている感があって各野党も相乗りしたい、そんな意味ですね。一見は盛り上がりマスコミにも持ち上げられる、ですが市民運動には好影響だったかと言えば―――微妙です。

市民運動はライブハウス

どこか怪しげで怖いデモですが、SEALDsによってフレッシュなイメージをもたらしたのは事実でしょう。

私個人のイメージとしてはやはり前回述べた通りです。

限界集落のお祭りに突然、都会の若者たちがやってきて一時的に盛り上げてくれたけど、祭りが終わって町に戻って行った感じ。

実は何よりSEALDsの支持者たちも「お祭り感覚」なんです。2012年東京都知事選で宇都宮健児候補の選対本部委員で市民運動にも積極的に関わる澤藤統一郎弁護士は2015年7月24日、自身のブログで友人の郷路征記弁護士の発言を紹介しています。

SEALD’sのスピーチとコールがメチャカッコいいと思っています。こんな
カッコのいい若い女性の口から、「アベハ ヤメロ」、「コクミン ナメン
ナ」、「センソウシタガル ソウリ ハイラナイ」等という激し い言葉が飛び
出してくると、私の理性は霧消してしまって、聞き惚れてしまいます。

若い女性が「アベハ ヤメロ」、「コクミン ナメンナ」、「センソウシタガル ソウリハ イラナイ」と発言していることについて聞き惚れているって(笑)。なんだか老いらくの恋みたい。

しかもこんな幼稚なアジテーションで政治が変わるとは思えません。だって大学生ですよ。高度なお勉強をしてるはずが「コクミンナメンナ」ですか?
それでも盛り上がるのは要するにお祭りだから。市民運動家の人たちはこれでいいんでしょうかね。

今でもSEALDsがネタ扱いされるのは発言の幼稚さ、チープさにあったかもしれません。では今後、再びSEALDsのような団体は生まれるのでしょうか。私は形を変えてネオSEALDsは活動していると思っています。それは次回に続きます。


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