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⑤天使セラフィーナの授業『分離の意義』

アリエルは、セラフィーナ教授の次回の授業に胸を躍らせていました。
前回の「分離の仕組み」についての講義で新しい視点を手に入れ、今度は「分離の意義」について学ぶことができると知り、期待に満ちた気持ちで教室に足を踏み入れました。

セラフィーナ教授は白い翼を広げて優雅に教室に入ってきました。

「皆さん、前回の授業で『分離の仕組み』について、お話しました。
今日は『分離の意義』についてお話ししましょう」

と微笑みながら言いました。

生徒たちは興奮と興味津々の視線でセラフィーナ教授を見つめ、話を聞き入れる準備を整えました。

セラフィーナ教授の声が教室に響き渡ります。

「人間の人生の最大の目的は、富や財産を得ることではありません。
富や財産を得ようと努力したり、自分に価値がない前提で、一生懸命に結果を出して、自己評価を高めようとする取り組みは、『自分でない者』になってみての、仮の取り組みなのです。

正確には、人生の本当の目的の準備なのです。」

多くの生徒達がキョトンとした顔をして、教授の言っている意味を咀嚼しきれずにいるようでした。

「先生、それでは『人生の本当の目的』とは何なのですか?」

セラフィーナ教授は、その生徒の質問に満足するように頷きました。

「はい、『人生の本当の目的』は、『自分を知ること』です。

みなさん天使は、ありのままの自分を知っていますね。どんなに愛が深く、喜びに溢れているか、分かっています。

しかし、その『ありのままの自分』という状態が、あたり前になりすぎていて、その素晴らしさを実感することができません。

そこで、『自分を知る』ためには、一旦『自分でない存在』になる必要があるのです。分かりますか?

光を見い出すには、闇が必要である、と言えば、みなさん分かりますか?

あるいは、
低いという状態を知らなければ、高いが分かりません。
寒いという状態を知らなければ、暑いも分からないのです。

何かを知るには、比べる必要があるのです。
その対極にあるものと対比することで、はじめてそのモノを知ることができます。

人間の世界では、
失敗を繰り返した後に、成功を収め、大きな喜びを感じられるように、

『自分でない存在』を満喫した後に、『本当の自分』を思い出した時に、その愛と喜びに溢れた『本当の自分』の素晴らしさを、感じることが出来るのです。」

生徒たちの間から、感嘆の声が漏れました。

セラフィーナ教授は続けます。

「宇宙に存在するものすべては、『愛そのもの』です。

『自分を知る』ということは、『愛を知る』と言い換えることもできます。

『愛を知りたい』、と思うのなら、一度、愛から遠く離れてみることで、愛を客観的に、そして、俯瞰して捉えることが出来るようになり、
もう一度、愛に戻ることで、『愛』の素晴らしさを、改めて、体感することが出来るのです。

このために、人間界では、「分離の仕組み」を活用して、「自分でない者」になれるような仕組みを創り出してあるのです。

みなさん、『分離の意義』が分かりましたか?」

教授の言葉が優雅な余韻を残しながら教室に広がります。
生徒たちは深い哲学に思索する表情を浮かべ、心に響く授業を終えたことを感じていました。

セラフィーナ教授は微笑みながら締めくくりの言葉を放ちました。

「今日の授業で皆さんが得た気づきや疑問、それらを胸に秘め、次回の授業にお持ちいただければと思います。宇宙の全体に広がる『愛そのもの』に向き合い、より深く理解していく旅を楽しんでください。それでは、また次回お会いしましょう。」

授業が終わると、生徒たちは深呼吸をし、今日の学びを胸に抱えながら教室を出ていきました。それぞれが内省にふけりながら、次回の授業への期待が募っていくのでした。


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