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スリットスカートの切れ間から

ジネンジョ というコンビを組んでいる。
幼馴染と漫才をコンビネーションさせてもらい始めてから数年が経つ。

なんで今回noteを書き始めようと思ったかと共に、まずは僕の相方のことから書いていこうと思う。

僕の相方の、加藤のりゆき君。
僕もまわりのみんなも「のり」と呼んでいる。白くて丸い愛くるしいフォルムの男だ。
のりとは小学4年生の時からの付き合いだからもうかれこれ何年だ、これを書いている時点で僕らは26歳だから、まぁ約15年か。
15年てすごいよ。犬からしてみたら、その時産まれた子なんてもう今や立派なおじいちゃん犬だし、猫からしてみたら、その時産まれた三毛猫なんて相当なおばあちゃん猫になってる年数だよ。(三毛猫はメスが多いんだってさ)
それに鶴からしてみたらあと985年しか生きられないし、亀からしてみたらあと9985年しか生きられないんだから。15年てすごいね。

そんな長い付き合いの腐れ縁の相方だけど、まぁ〜〜〜〜自分の事をしゃべらないやつで。
それに気づいたのも実はコンビを組んでからで。その前はそんな所、気にもなっていなかったんだけれど、気付いたら「あれ?こいつからなにかエピソード聞いたことあったっけ?」そう思った。
そう思った時には口に出ていたよ。
「あれ?こいつからなにかエピソード聞いたことあったっけ?」ってね。


昔、俺らが20か21歳の頃、のりの実家が改装して綺麗になったからと、俺ともう1人の地元の友達とでのりん家に遊びに行った時の話。

「うわ〜めっちゃ綺麗じゃん!」と、リフォームしたのりの実家を一通りツアーし終えて、のりの部屋のコタツに3人で潜り込んだ。

その時、なんの流れかそのもう1人の友達が
「墓場まで持っていきたい話はあるか?」
という話題をふってきた。
俺は当時けっこうオープンになんでも話していたし、特に浮かばなかったので素直に「ないな〜」と答えた。
もちろん、その友達は自分はあるからその話題をふっている。

「のりはある?」

「………あるね。」

「あるんだ!!」
俺と友達の声がそろう。

あったとしても「ない」と答えるだろうと思っていたから、驚いた。そこからはもちろん友達と俺でのりに質問攻めだ。どんな話か聞くまでは帰れない。
「墓場まで持ってく話って言ったろ!!」
その一点張りでいなそうとする我が相方、のりゆき。

そもそも「墓場まで持ってく話ある?」という話題で本当に墓場まで持って行ってどうする。
最初に話をふった友達はそもそも話したがりな奴だから、本当は自分の話をしたかったんだ。それが話しにくい内容だから、みんなも墓場まで引きづり込んでから話そうとしたアンデッド野郎なのだ。

その点うちの相方はピュアなのか、本当に話したくないのに「ある」と答えたのだ。
「ある」と答えた時点でのりゆきよ、お前はもう死んでいる。ゾンビ化してしまっているのだよ。
それでもまだ自分が人間のまま必死に逃げていると思って「墓場まで持ってく話って言ったろ!!」と声を張り上げている。
もう目は充血して肌も緑色になってきているし、腐敗臭もしているのに。
「じゃあお前んちの墓地はどこだ、どこの寺だ?そこ行ったら話せるだろ?」と小学生みたいな屁理屈で押し通す俺。
「墓場までってそういうことじゃねえよ!」と、唾をとばすゾンビ。

まぁ、幸いな事にここはのりの家だ。話すまで帰らなければいいだけだ。
リフォームした過ごしやすい家に、のりの親父がローンを返し終わるまで居続ければいいだけ。

そんなこんなで2時間ほど押し問答してとうとうのりが折れた。言うぞ。
さぁ、なんだ。言えよ。言っちゃえよ。





「俺、、、実は、タバコ吸ってるんだ。」



は?



「実は俺、言ってなかったけどちょっと前からタバコ吸ってるんだよね」

ウソだろ?

ウソだろ、というのはもちろん
「それが墓場まで持ってく話だなんてウソだろ?」の、ウソだろ?だ。
のりがタバコを吸っている事に対して驚いてるんじゃあ無い。
それを墓場まで持って行こうとした事が理解できないし、2時間も喉をからしてまで「墓場まで持ってく話って言ったろ!!」と声を張り上げていたことも理解できない。
「実は大麻を吸っている」くらいの隠し事じゃないと割りに合わない。
いや、大麻じゃなくて良かったんだけども。
とにかく俺らの2時間を返して欲しい。

確かに俺も、周りの地元の奴らも1人もタバコを吸わない。でもそれはたまたま誰もタバコを吸っていないだけで、タバコを吸っている人に対してどうこう思っているわけではない。
「タバコを吸っている」
それくらい言えよ…。
そして堂々と吸えよ…。
100歩譲って言いにくいのはわかる。
けど墓場まで持ってく話か?それ。
お前が死んだら、誰もお前の好きなタバコの銘柄を棺桶に入れてくれないじゃないか。
どんだけ自分の話をしたくないんだよ。

「なんだ、俺らがみんなタバコ吸ってないから言いづらかったのか?」と聞いたら、
「いやそうじゃなくて、20歳超えてからタバコ吸いはじめる奴なんてお前らバカにするだろ?」
いや、タバコは20歳になってからなんだよ。
なにを言ってるんだこいつは。

まぁ確かに俺は今の所、ちゃんと20歳を超えてからタバコを吸いはじめたやつはコイツしか知らない。


他にも、いい感じになった女の子がいた事も5年くらい経ってから話し出すし、休みに誰と会うかなんて絶対言わない。基本的にこちらが聞き出さないと話さない。
それくらい自分の事を話してくれないやつなのだ。
そして単純に話が下手なのもある。

だから寂しい俺は、芸人として話が下手なのは問題だ。と理由をこじつけて相方に宿題を与えた。


「1週間に1本ラジオを録れ」


自分の家で1人でしゃべって録音し、俺にLINEで送らせる。
そんな宿題を与えたのだ。

それからは30分のトークを毎週送ってくるようになった。そこは真面目だ。嬉しい。
それを俺は1人で聴く。まるで相方が自ら自分のことを話してくれるようだと錯覚する。
聴いてられないようなラジオを、ラジオと呼べないラジオを毎週1人で聞いている。
ただ、最初は少し新鮮だったが、段々「なにしてるんだこれ?」という気持ちになってきた。

俺がやらせてるんだけども、「こいつどういうつもりで喋って、録って、送ってきてんだ?」と思いはじめた。

だってすごいでしょ。
家で1人で誰も聞いてないのにしゃべってんだよ。別に俺に話しかける様にじゃなくて、一応ラジオ風に、全国民が聞いてるかのようにしゃべってるんだよ。で、それ録ってさ、送るんだよ俺にだけ。変態じゃん。

普通、ラジオってパーソナリティは1人でも聞いてる人はいるじゃん。その場に。スタッフとか。だから楽しく喋れるし。もちろん電波にのって聴いてくれている人もいるし。想像するだけでわくわくするよ。
でもうちの相方は1人で喋ってるんだよ。
で、1人で笑ってんの。ぞくぞくするよ。

もちろん中には1人でYouTubeチャンネルとかさ、なんかラジオアプリみたいなので1人で喋ってる人もいるかもしれないよ。でもそれは一応世界に発信してるから。不特定多数に。
でもうちの相方のラジオは俺だけが聴くの。世界で俺だけ。最特定少数に。

そしたらさ、ちょうど俺が集めてる恋愛漫画の中で、高校生の男女がやってたのよ。全く同じことを。
夜中電話するのは親とかに聞こえちゃうから、片方だけが話すのはどう?みたいな。それをイヤホンで聞いたらそれって、私たち専用のラジオだね。みたいな。
で、お互い交代で相手にラジオみたいに電話で話しかけて、相手はそれを布団の中で聞いている。「耳がくすぐったい」みたいな。きゅんきゅんするシーンがあったのよ。

やってる事は同じだけど、こうも違うかというね。耳なんて一つもくすぐったくないもんね。二つもついてるのに一つもくすぐったくないもん。

まぁ苦行をやらせているわけですよ。相方に。

だからね、不公平じゃないように俺も返さなきゃなって思って。なにか1人ラジオに変わるものを俺もやらなきゃなと思って。じゃあ俺は書く方にしようかなと、noteを開いてはじめたわけです。

まぁこの場合、フェアにするためには相方にだけ、相方が読む手紙を書いて送るべきなんだけど。それはもうラジオへのお便りになっちゃうから。
というかやれと言われたらそれもやるんだけど、言ってこないからあっちから。
なので1人で勝手にnoteを今更ながら始めてみました。

なのでこれを見つけたみなさんは、これからもこっそり見守ってみてください。
スリットスカートの切れ間から、足の向こうを覗くように。
そっとのぞいて みてごらん。



読んでくれてありがとうございます。

僕も、さも全国民が読んでるかのように思いながら、相方にだけ届け。と書いていこうと思います。

ただ相方にはこれを書いている事は言ってません。
墓場まで持ってくつもりです。








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