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ゲームオーバー後の世界

私は幼い頃からテレビゲームが好きだった。
何度も何度もミスを繰り返し、ゲームオーバーとなった。
その度に悔しがり、何度もコンティニューして挑戦した。
テレビゲームの良いところは、ゲームオーバーをなかったことにできるところだ。
大抵のゲームは主人公が敵に倒されたとしても、それをなかったことにして挑戦できる。
つまり、やられる直前に戻って再挑戦ができるということ。
そして、主人公は一度も敵に敗北したことのない伝説の勇者となってエンディングを迎える。
完璧主義の私にとってこれだけ気持ちの良いものはなかった。

では、自分の人生はどうだろうか。
私の人生を振り返ると、伝説の勇者とは程遠かった。
勉強にしても、スポーツにしても、恋愛にしても負けてばかりだった。
というより、失敗した記憶の方ばかり頭に残っているのである。
「あの時、こうしていれば成功していたのに。」
そういうことばかり考えていた。 
そして失敗した自分をいつまでも責め続けた。
だからゲームに逃げていたのかもしれない。

今の自分の人生は、ゲームオーバー後の世界だと思っている。
犯罪を犯して警察に捕まったのだから。
失敗する直前に戻ってコンティニューできるなら、ぜひそうしたい。
そうすれば今度は真っ当な人生を歩める。
でも現実はそうはいかない。
ゲームに魅了されていた私はゲームオーバー後の世界のことなんて考えたこともなかった。
いや、正確には考えないようにしていた。
今後どうなっていくのか、今の私には想像もできない。

知人の中には「時間が解決してくれることもある」、「人生100年、何とかなる」と励ましてくれる人もいる。
自分の価値を見失っていた私には大変ありがたい言葉だ。
でも正直に言うと、未来が怖くて仕方ない。
明日を迎えるのがたまらなく怖いのである。
全部自分が撒いた種であることは承知している。
この苦しみを背負いながら生きていくしかない。
それが責任をとるということなのかもしれない。

まずは当面の目標を立てることとした。
「人に迷惑をかけるのではなく、人の役に立てる人間になる」
まるで小学校の道徳の授業のようだ。
でも自分はこれができなくなっていた。
冷静になれば当たり前にわかることでさえも、わからなくなっていた。
これは当面の目標でもあり、一生の目標でもある。

私はゲームオーバー後の世界の主人公として、今後も生き続けなければならないのだから。
いつの日か「私の人生はまだゲームオーバーではなかったようだ」と言える日が来ることを願う。

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