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【じんたろホカホカ壁新聞】私立大学が日大を批判できないオトナの事情

臨時理事会では田中理事長解任に反対した理事も評議員会では賛成に回った不思議!

日大学長の会見がまだ尾を引いている。
日本大学の改革は本当にできるのか? 
田中(英寿)前理事長に選ばれた加藤直人学長兼新理事長に改革できるわけがない。
加藤理事長にその資格があるのか?
という指摘もあるらしい。
しかし、田中理事長は解任され、「田中色」は一掃するという。

学校法人トップの理事長やその側近の理事が逮捕される異例の事態となっている日本大学は、東京地検特捜部の強制捜査から3か月余りたった10日、初めてとなる記者会見を開き、加藤直人理事長は「田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除する」と宣言しました。

でも、みんなが排除に賛成したのではないみたいだ。

加藤理事長の招集で午後2時から日本大学本部で開かれた臨時評議員会には、評議員121名のうち、欠席1名、委任状による出席者15名を除く、105名が出席した。欠席は田中前理事長ということだろう。委任状での出席者は、議長を務めた加藤理事長に「一任」だから、採決においては加藤氏の意見に賛同する形だ。採決の結果は、賛成119、棄権1で解任が決議された。棄権1はやはり賛成に投じられない人がいたことを表しているのだろうか。

そうそう、1日の臨時理事会では解任に反対していた評議員もいたよね。たしか6人が解任に賛成しなかったという報道があった。

関係者によると、1日の臨時理事会で理事全員の辞任が決まったが、田中容疑者からは3日までに理事を辞任するとの連絡がなかった。田中容疑者は理事長職は1日付で辞任していた。
日大では、理事が法令に著しく違反したり重大な非行があったりした時、全理事の4分の3以上の議決で解任できる。この日の議決では33人中27人が賛成したという。
田中容疑者の退職慰労金や賞与については、支給が保留されている。

マスコミの批判で6人のうち5人は態度を変えたんだろうか。
この6人は校友会からの選出ではないかという報道もある。

臨時評議員会でも評議員のひとりが加藤理事長に、「一部のテレビ番組で校友会長を解任されたか除名されたと報道があったが本当か?」と質問したところ、加藤理事長は、「他の組織のことは発言を控えたい」と答えたという。つまり、いかに現状、田中前理事長が築き上げた強大な権力を田中に変わって保持している加藤理事長にしても、『校友会長解任』までは自ら手を下せない。校友会の中枢を担っているのが、理事会で理事解任に反対票を投じた6名ではないかと見られている。
要するに、この6名が現状を認識し、田中追放やむなしの結論に至って行動しなければ、校友会長留任の可能性はゼロではない。

日本大学再生会議の「再生」って何?

加藤学長の会見で「日本大学再生会議」なるものが出てきた。
ホームページにも出ている。

この再生会議で行われるのはどういうことなのか?

理事の選出方法の見直しなど組織改革を議論した上で、来年3月末までに結論を出す

らしい。

おお、日大のガバナンス改革なんだろう。
理事、理事長にふさわしい人を選ぶ。
その選び方を議論する。
ってことなのかと思う。

日大問題がホントはわずらわしい私立大学経営者

日本大学の前理事長が逮捕されるなかで、一躍脚光をあびたのが、「学校法人ガバナンス改革会議」だった。
この会議は文部科学省に設置された会議のはずだった。

こうした中、公認会計士や弁護士などで作る文部科学省の専門家会議が今月、学校法人の最高機関を学外のメンバーだけで構成するなどとした提言をまとめたのに対し、私立の大学や短期大学の団体は「教育現場の声を反映させずに議論が進められ、大きな懸念を抱く」とする声明を出しました。
文部科学省は調整が難航している状況を踏まえ、学校関係者も含めて合意形成を図る場を設けて年明け以降も議論を継続する方向で調整に入りました。

ありゃりゃ、改革に私立学校の経営者たちが反対しているってことか。
どうしてなのか?

現在の私立学校法は、「理事会」を学校法人の最高議決機関とし、監視役の「監事」や諮問機関の「評議員会」を置くよう義務づけている。理事会は教職員や卒業生などの学内関係者を軸に構成し、理事が評議員を兼ねるケースも多い。
ただ、日本大学の理事会メンバーが相次いで逮捕・起訴されたように、この仕組みでは理事会の独走に歯止めを掛けられない恐れがあると指摘されてきた。
文科省は改革の方向性として、理事会へのけん制機能が発揮されるよう、理事会、監事、評議員会の相互関係を見直すとしている。ただ、最高議決機関の位置づけや評議員会を学外者のみの構成にするかどうかなど、関係者の間で意見対立がある点については、年内段階での改革案では「現場の実務的な運用に配慮しつつ、適正なあり方となるよう見直す」との表現にとどめる。具体的な制度は、関係者の合意形成の場で議論し、来年の通常国会で私立学校法の改正を目指す。

この問題、二年前から議論している。
もともとは骨太方針で示されていたガバナンス改革だった。このもとで、公益法人、社会福祉法人なんかも法改正された。それらはコーポレートガバナンス改革という上場会社のガバナンス改革をモデルとしている。2015年に法改正されて、同時にスチュワードシップ・コードという株主の規律を示すものとコーポレートガバナンス・コードが示された。さらに2018年にも法改正された。
学校法人ガバナンス改革は、最初有識者会議で1年くらい議論していた。そして今年から学校法人ガバナンス改革会議が設置されていた。

しかし、私学経営者や文科省もこの会議の過激さにたじろいだようだ。

私学の統治体制を巡っては、弁護士や公認会計士らが中心メンバーの「学校法人ガバナンス改革会議」が3日、提言を取りまとめた。学外者からなる評議員会を最高議決機関とし、理事の選任・解任権を与えることなどを盛り込んだ。改革会議は提言に沿った法改正を同省に求めたが、学外者に権限が集中する内容に対し、私学側が「学問の自由が脅かされる」などと反発。文科省内では提言通りの法制化は難しいとの見方が出ていた。末松信介文科相も14日の記者会見で「改革会議の結論や議論の進め方に対し、与党議員から様々な意見がある。広く意見を求めなければならない」と話し、慎重な姿勢を示していた。

で、ガバナンス改革会議の報告って何?

ガバナンス改革会議の報告書はそんなに反対しなければならないことが書かれているのか?

もっとも反対されているのがこの部分。

現行の学校法人における評議員会は、理事長が業務に関する一定の重要事項についての意見を聴取する諮問機関という位置付けであるが、理事による業務執行の監督機能を強化するため、評議員会を最高監督、議決機関と定めることとする。また、現行の学校法人では評議員を理事が兼務する例が多く見られるが、監督機能の実効性を担保するため、現役の理事、監事及び職員との兼任は認めず、その選任も理事又は理事会において行うことを認めないものとする。その一方で、評議員については、その任務に適する人材が確保され、適切な議決及び監督が行われるようにするため、条文上、善管注意義務を明記することにしている。

今の制度では、理事会に権限が集中するしくみ。評議員会は諮問機関で重要事項の意見を聞くところ。もし反対されても無視できる。理事の選任・解任権はない。そこが覆るのが嫌なのだ。

私立学校のいくつかの経営者団体はガバナンス改革会議の報告内容に反対声明を出している。
例えばこれ。
日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会による「学校法人のガバナンス改革に関する声明」。

「学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる」という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員会が暴走しても止めることが出来なくなります。

じゃあ、今の評議員会ってなんやねん!
ってことにならないのか?

このことを巡って、理事長の問題としてパターン別に鋭く批判するひともいる。

大学の理事長はいくつかのパターンに分かれる。
まず多いのは創立者や創立者の一族が理事長に就任しているケースだ。他の財団などに比べて、一族支配への歯止めは厳しい。ところが現行制度では理事長の権限が圧倒的に強く、理事長ポストさえ握ればほぼ自由に経営権を行使できる。学校法人の理事長の半数以上は、こうした創立一族だとみられている。
株式会社と違って、財団法人など公益法人は「出資」や「持分」という概念がないため、カネで組織を支配することはできない。だからこそ、理事長を押さえることが重要なのだ。こうした創業一族理事長が、評議員会の権限強化に反対なのは言うまでもない。
次が早稲田のような学者がそのまま理事長になるケース。企業経営をしたことも、組織運営をした経験もない学者が突然経営トップになるわけだから、ほとんどが素人経営者ということになる。
自分を理事長に持ち上げてくれた教員仲間や職員の利益を第一に経営することになりかねない。教員や職員の待遇をどうするかは経営にとって最大の懸案事項だが、まず給与カットやリストラなど手が付けられない。こうした学者理事長も、社会で活躍する評議員が学内に入ってくることを忌避するケースが多い。
もう一つの理事長のパターンは天下り、である。文科省の役人が監督権限のある大学に直接天下るのはこのご時世難しくなっているため、他省庁や日本銀行などのOBが理事長になっているケースが少なくない。特に日銀は信用金庫や地方銀行などの経営が厳しくなり、昔ながらの天下り先が細っているため、大学は良い再就職先になっている。
改革提言が実現すると、卒業生や教員OB、地域社会の代表らが評議員になると想定されるが、そうした人たちが天下りに寛容であるはずはない。これまた天下り理事長たちも改革には反対するのだ。

私立学校の経営者団体の声明はあまりにもレベルが低すぎるのは確かだろう。

この声明は私立学校の総意なのだろうか?
日大と同じような問題に悩むところはないのだろうか?
私立大学の約4割は同族経営だ。
日大のような同族経営でないところも理事長が長期に居座ることができる仕組みが今の学校法人のガバナンスだ。同族経営のところはよほど倫理観がある経営者でないと似たようなことになりかねない。
それに、この時期に日大問題に触れない神経を疑う。この時点でアウトだろう。
それから、「株式会社のステークホルダーは株主である」なんて書いている。今のコートポートガバナンスやコーポレートガバナンス・コードを読んだことがない人ばかりなのだろう。従業員を含む多様なステークホルダーを定義してそのコードを表しているのが今のコーポレートガバナンス・コードだ。

でも、この低レベルの声明を出しても恥ずかしくないのが今の私立学校の経営者なのだろう。

日大ガバナンスの被害者は誰なのか?

日大は会見で、再生会議を作ったり、不正の舞台となった日大事業部の清算を予定しているという。
たしかに、板橋病院の改修費で上乗せした2億4000万円の設計費は日大が払わなくてよいお金だったんだろう。

中間報告書では、元理事の井ノ口忠男被告が、日大の関連会社「日本大学事業部」で業務を掌握し、受注した設計会社に板橋病院の設計費を約2億4000万円水増しさせたり、リベートを要求したりしていたと認定。設計会社は井ノ口被告の指示で、大阪市内の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告側の会社に2億2000万円のリベートを送金した、とした。

そのために補助金が停止または減額される可能性がある。

日大は学費改定を心配する学生・保護者のためにホームページに改定なしの告知を出した。

日大の内部留保資産は2000億円近くある。
学費改定などしなくても補助金分くらいは十分ある。
しかし、学生や保護者の怒りは抑えられないかもしれない。


日本大学に通う息子のためにパートで働き続けてきた母は、これまで働いてきた理由を「子供が学費の事ばかり考えてバイトをするのは、あまり良くないかなと」「今しか出来ないことを体験してもらいたいので、学費についてはなるべく親が手伝いたかった」と話した。しかし、今後は闘病のため以前のように働けなくなる。「身体の事が不安でしょうがない」と打ち明けたが、その一方で「これから奨学金として借りたお金を払い続ける息子が気がかり」とも話した。
そして、逮捕された田中前理事長らについては、「その人たちが裕福になるために学費を払い続けてきたわけではない」「正直、許せない」と憤った。

ガバナンス改革は、この人たちにとって相応しくない人を理事にしないこと、相応しくないとわかったらすぐに止めさせることなのだが。

オトナの事情でそれを言っちゃいけないことになっているんだろう。

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