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和歌心日記

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百人一首から想像したストーリーを書き集めました。
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記事一覧

和歌心日記 14 西行法師③

嘆けとて 月やは物を 思はする ***  キリエと一日児童館で過ごした藤原晴家は、母と車で…

函館次郎
2か月前
5

和歌心日記 14 西行法師②

嘆けとて 月やは物を 思はする ***  あれは藤原晴家が10歳の時だった。  晴家は街の児…

函館次郎
2か月前
3

和歌心日記 14 西行法師①

嘆けとて 月やは物を 思はする  藤原晴家(ふじわら はれや)が彼女を初めて見たのは、彼の勤…

函館次郎
3か月前
5

和歌心日記 11 藤原義孝

君がため 惜しからざりし いのちさへ…。 そいつは、いつも一人だった。 そのせいで気味悪が…

函館次郎
11か月前
13

和歌心日記 10 右近

忘らるる 身をば思はず ちかひてし…  まさか、そんなわけないよね。  入間愛子は、菊田明…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 9 壬生忠見

恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり… 「ピアノ、好きなんですか?」 少し上気した顔で覗…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 8 のニ 小野小町

花の色は うつりにけりな いたづらに 町子は、姉の絹子が働いている神社(それは自分の生まれた家でもあるのだが)のそばに数日前に落ちたと思われている隕石の痕跡であるクレーターを調べにいった。 その途中、隕石が落ちたとされている日とほぼ同じ頃からこの神社の周りに現れるイケメンの若者高村清和と出会い、共にクレーターを調べることになった。 クレーターには何もなかったのだが、そこで高村は突拍子もない小野小町の物語を話し出した。 高村は小野小町に1000年前に出会ったという。高村によれ

和歌心日記 8 小野小町

花の色は うつりにけりな いたづらに… 「この辺りに電気屋さんはありませんか?」 6月のある…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 7 入道前太政大臣

花さそふ 嵐の庭の 雪ならで… 「もう何回目の春だろう」 坂口智也は会社の窓から見下ろす桜…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 6 崇徳院

瀬をはやみ 岩にわかるる 滝川の… 「いってらっしゃい」 「あぁ。ありがとう」 「ごめん。…

函館次郎
1年前
6

和歌心日記 5 壬生忠岑

有明の つれなく見えし 別れより… 寒空の下、篝高道はとぼとぼと線路脇のいつもの帰り道を歩…

函館次郎
1年前
8

和歌心日記 4 参議篁

わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 「山手さん、ほんとに戻っちゃうんだべか?」 「そうな…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 3 在原業平朝臣

千早ぶる 神代もきかず 龍田川 あの人の傘は、 目の醒めるような、からくれなゐのような赤だ…

函館次郎
1年前
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和歌心日記 2 参議等

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど 「そりゃ彼氏くらいいるわな」 山脇聡史はひとりごちた。 山手線の曇った窓からぐずついた雲が見える。 山脇は恵比寿で電車を降り、肩を落として恵比寿のオフィスに向かった。 *** あの子に会ったのは一ヶ月前。昔よく通った六本木のオカマバーだった。 山脇は普段大手ビールメーカーの報道対応を行なっている。 新製品のプレスリリースから役員人事、不祥事の記者会見など仕事は多岐に渡る。 最近ではSNSの炎上をうまく沈める仕事も増えている。 このバ