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刑事柳田、もう我慢できません! 第四話 赤のれん@西麻布

前回四ツ谷駅で後輩の来栖が、ターゲットから逆に狙われていたとは思わなかった。一人で行かせなかったのは正解だった。

結局我々の行確情報が漏れていたわけだが、逆に言うと奴はスパイで間違いなかったと言うわけだ。

この件は申し送り事項になり、アジトを見つける本格的な作戦に変更となった。

俺はまた新たな案件に勤しんでいる。今度は西麻布だ。ここらは麻布警察署の管轄だか、最近チャイナとコリアに日本の裏世界が絡んでいるという複雑な地区。

ここに新たに南米系が入り込もうとしているらしいという情報が入った。麻布警察署の連中は既にあるルートの調査が忙しいということで、新規ルートが俺たちのチームに割り当てられた。

しかし、腹が減ってきた。夜中の一時。終電を逃したお気楽なサラリーマン達が闊歩している。やっと人手が戻ってきて、街も喜んでいるのだろう。同時に俺たちの仕事も増えるということだ。

目当てのマンションの少し離れた場所に、黒のスカイラインを停めている。しかし、そろそろ腹が減ったな。動く気配もないし、そうなるとこの辺はやはり赤のれんということになるだろうか…。

若い頃は良く先輩に連れられて来たもんだ。思い出したら無性に食べたくなってきた。

携帯が鳴る。
「はい」
「動きはありません」
「このマンションではないという話もあるそうです」
「暫くは仕方ない」
「はい」
「短気と単騎は禁物だぞ」
「うまいこといいますね。了解」
電話が切れる。来栖も慎重になったようだ。

さてと、やはりこれは…。

***

「いらっしゃい」
「ラーメン、ネギトッピング」
「はい、かしこまりましたー」
やはりサラリーマンが屯している。いい気なもんだ」
奥に南米系の男が一人でラーメンを啜っている。
まさかな…年齢、人相は少し似ている。

はいよ!

ラーメン、ネギトッピング

来た!これよこれ。
柳田はネギをぶちまけた。

さてと、いただきますか。

柳田はスープを啜る。
おお、変わらずうまい。醤油と豚骨の絶妙な組み合わせ。深夜も昼もイケる味だ。

ズルズルッ、ズルズルッ♪
柳田は麺を思い切り吸い込んだ。
うまい!
ネギと生姜、スープ、そして麺が一気に口の中に入ってくる。最強のコラボだ。
ズルズルッ、ズルズルッ♪
うめー!やはり深夜に持ってこいだ。

柳田の携帯が鳴った。
む。
「どうした?」
「どうやらマンションにはいないようです」
「本当か?」
「はい」
柳田の背後を通ってさっきの南米系が店を出て行く。
「で、次の目星は?」
「どうやら赤のれんに入ったらしいです」
「何!」
「一旦切る」

柳田は電話を切った。
こりゃまずい。
「おやじ!ここに代金置いとくぞ!釣りはいらん」
柳田は1000円をカウンターに叩きつけると店を出て行った。

「あ、足りないよー」
店主の声が虚しく西麻布の街に響いた。

柳田は走る。ようやく南米系の背中が見えたが、既にタクシーに乗るところだった。

「俺だ」
「はい」
「六本木通り、溜池方面、黄色のタクシー、287だ」
「了解」
「俺は権八の前だ。拾えるか?」
「はい勿論」

電話が切れた。
「くそ、次は逃せないな」
柳田の前を酔っ払ったサラリーマンたちが通り過ぎていく。

「親の心子知らず、だな」
柳田は独りごちた。

続く。

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