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シャウエッセンという概念

昨日、嘘をついた。

いや、それすら嘘だ。だって嘘なんて昨日に限った話ではない。ペラペラと適当なことを垂れ流すのは毎日のことだ。ルーチンワーク、いや生きがいと言ってもいい。「私は生まれてから一度も嘘をついたことがない」という「嘘」すら日常茶飯事でつく。

嘘を上手につくのは案外難しいものだ。1つの嘘のために9つの「ほんと」が必要とされる。そして嘘っぽい話ほどキモになる部分は本当で、どうでもいいところが嘘だったりする。例えばこんな感じだ。

道を歩いていたら向こうからハロウィンらしく幽霊の格好をした双子の幼児がやってきて「ハッピーハロウィン☆ 悪い子はいねえがー」と言うので思わず吹いてしまった。

はい、これは「悪い子はいねえがー」が嘘である。あ、いやいや「よくできたネタだけど、こんなナマハゲみたいなこと言うわけないよね」ではない。それは言った。確かに言った。ナマハゲとハロウィンの国を超えた文化融合は確かに起きていた。ただそのセリフが「悪い子はいないかー」だったのだ。幼児だからそこまでリアルには言ってなかった。これは盛りました。

「餃子のおんがえし」の感想でもたまに「これはさすがに嘘だろ」と言われることがある。「そんな何回も”みどりちゃん”なんて呼ばれるわけない」とかエアリプされたりもする。だがみどりちゃんと間違えられたのは本当だ。本当に何度もある。え?「他の本で読んだことある」? そのエピソードの作者名を見てみろ。じろまるいずみと書いてあるから。ただ私をみどりちゃんと呼んだ嘱託おじさんのことは少し盛った。実際は朝も昼も午後も昼寝ばかりして全然働かず、何かしゃべったかと思ったらいびきかセクハラかどちらかだったのだが、そこまで描写することもなかろうとマイルドにしておいたのだ。話のキモではないのでそこは不問にして欲しい。


話を戻そう。昨日ついた嘘はこちらである。

どこが嘘だかわかるだろうか。

実は「シャウエッセン」が嘘だ。いや嘘をつくつもりはまったくなかった。だが結果的に嘘になってしまった。というのも私にとってシャウエッセンとは特定の商品を指すのではなく、概念だからなのだ。

シャウエッセンは概念だから、シャウエッセン的なソーセージはすべて「シャウエッセン」と呼んでしまっている。アルトバイエルンも香薫も「ごてあらポー」も、買うときはちゃんと商品名を見ているのに心の中ではシャウエッセンだ。パリッとして、ジューシーで、ボイルしただけで美味しい茶色の憎いやつは全部シャウエッセンだ。エレクトーンでマジックでサランラップだ。ジャンルの代表者がジャンル名になってしまったのだ。

概念だから、シャウエッセンでないといけないわけではない。今回使ったのは、セブンイレブンのPB商品で「7プレミアム あらびきウインナー」。ごく近所にセブンイレブンがある我が家では、常備品とも言える商品だ。だがこれを買うとき私はいつも「お、シャウエッセン切れてたな。買ってこ」と思いながら買うのである。朝ごはんのしたくをしているオットに向かって「シャウエッセンあるよ!」と提案するのである。オットの方も7プレミアムを手に「シャウ、何本食べていいの」と言うなど、なんら疑問を感じていない様子だ。ちなみに「シャウ」はお察しの通り、我が家での呼び名である。

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たまにはセブンではなく、最寄りスーパーで【概念シャウエッセン】を調達することもある。最寄りスーパーはアルトバイエルン推しを隠そうともしないので、ここで買うのはほぼアルトバイエルンなのだが、そんな時も私は「お、シャウエッセン切れてたな。買ってこ」と脳内でつぶやいている。そして朝になると「シャウゆでる?」と風呂場のオットに叫び、フライパンに水を入れながら「エッセン、エッセン(シャーウシャーウ)」と歌うのである。ちなみにお察しの通り、これは私のオリジナルソングである。

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たまに「私が概念シャウエッセンと呼ぶすべてのアイテムを集め、味比べをしてみたい」と思わないでもない。実はかなり味に差があるのではないか、本当はどれが1番好みなのか確認したいと思わないでもない。だがそれは本当に必要だろうか。

しょっぱい肉の加工品で食べる白ごはんのうまさに異議を唱える人はいないだろう。ベーコンもコンビーフもハムもサラミも、テリーヌですらも白ごはんを美味しくする。ソーセージごはんは言わずもがなだ。そこに優劣をつけるなんて野暮ではなかろうか。あのパリッとして、ジューシーで、ボイルしただけで美味しい茶色の憎いやつ。あれがいつでも買える喜びを脂と共に噛み締める、ただそれだけでいいのではなかろうか。

ところで「概念シャウエッセン」が大好きな私は、こちらの商品も大好きである。

これ最近扱いがめちゃくちゃ減っているのが悩みである。2年くらい前は割とどこのスーパーでも買えたものが、今は出会えたらラッキー。こないだ見つけた店に今日もあるとは限らないし、いつも無い店に突如として現れたりする。

なので「概念シャウエッセングループ」の皆様におかれましては、ぜひこの「シャウエッセンの肉で作りました」も作っていただけないだろうか。名前はなんでもいい。「概念〇〇の肉で作りました」であればそれでいい。7ミリ厚さにカットして軽くフライパンであっためた「〇〇の肉で」で食べる白ごはんは本当に美味しいんだ。これは本当。嘘じゃない。


めちゃくちゃくだらないことに使いたいと思います。よろしくお願いします。