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ツノがある東館 #毎週ショートショートnote

 今日は雨だからパンを食べることにした。空気ばかりのクロワッサンなんかが丁度良い。湿度で重くなった体には、重たいものは入りっこないから。

 あの壁が真っ白に塗られたパン屋は私の行きつけだ。パン屋というには厳かで、館と呼ぶ方が合っている。いつも扉が僅かに開いていて、香ばしい匂いが立ちのぼるものだから頭の先までそぞろきだす。ところが今日は、その建物の真東に見慣れない建物が忽然と建っていた。別館ができたのだろうか。こぢんまりとしていて、赤い屋根はてっぺんがぐーんと高くてまるでツノのようだ。ツノのある東館からは甘ったるい砂糖菓子のような匂いが広がり思わず食指が動く。ネットにもまだ載っていないのに、匂いを嗅ぎつけてか僅かに透けて見える店内は盛況な様子だった。

 その様子に軽蔑の眼差しを向けまっすぐにパンの館を目指す。しかし、扉に手を掛けた時、虫の知らせとでもいうべきか、その時つい東館に目をやった。そこへ入っていく後姿は間違いなく毎日目に焼き付けているストリーマーだった。私は瞬間的に方向転換し、東館のツノにある穴から館内に飛び込んだ。ぶわっと全身が甘い香りに包まれる。私は一面に広がる黄色いゼリーに溺れていった。

<了>



たらはかに(田原にか)様の下記の企画へ参加しています。


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