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だんだん高くなるドライブ #毎週ショートショートnote

 未だ常世辺の余韻が残り、脳内では先程まで流れていた一節がリフレインしていた。口ずさめば隣のシートに座る妹がつられて身体を揺らしだす。土産に買ったシャープペンシルやマスコットチャームを見せ合うことに飽くと、再びあのキャラクターの口調がおかしかっただの、あそこで急に乗り物が落ちたと思って吃驚しただのと、おしゃべりに花を咲かせた。しかし、娯遊の過ぎた帰り道はなんと長く感じることだろうか。渋滞で遅々として進まず、長引く帰途にいつしか口数も減り始めた。

――まだ着かないの。
――何時に着くの。

 そんな言葉ばかりが零れ始めた。すると、バックミラー越しの父は皆に目を瞑るように言った。その束のあいだ、車がくうを駆けるのだ。そっと目を開けた時には、先程まで前を走っていた赤い車が後方にあった。助手席で苦笑いする母には誰も気が付こうとはしなかった。

 私達を乗せた車は三度みたび飛んだ。いつしか、夜のとばりと共に瞼が下りてきた。四度目、今とばかりに車は夜さりを翔けはじめる。

<了>


たらはかに(田原にか)様の下記の企画へ参加しています。

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