BTS"Butter"に隠された、 A Tribe Called QuestとSugaの抵抗。
それはまるで鍛え抜かれた国策のように、米国社会に溶け込み(バターのように)、もうBTSを否定することはポピュラーであることや現代人であることを否定するようにメインストリームの一丁目で嘘のように屹立している。
嘘のようだ。アジアンアーティストがこんな立ち位置にやってくる日が来るなんて。それがBTSだなんて。
これはスペイン風邪よりもコロナウイルスよりもひょっとするとセンセーショナルなことであって、テニスコートで誰が誓おうが、ロベスピエールが孤立しようが知らないような完全無欠の事件になろうとしている。
しかし、Butterというタイトルはどうだろう。
最大のヒットはDynamiteで、今度はButter。一体どういうことだろうと思いながら僕の頭に射し込んできたのは一つの考えだった。
これはSugaの仕業だと。
Butterはこう始まる。
Smooth like butter, like a criminal undercover.
この一節で思い出されるのはあの男たちだ。A Tribe Called Quest。
1990年代のヒップホップ、ニュースクール界隈でヒーローといえば、デラソウルとこいつらだった(と言っても僕は子供だったから後追いだけれども)。
ノイジーだったりストリートなヒップホップが仕切るなかにあって、堪えようのないクールさを携えて登場したのが彼らだった。
中でも2枚目のアルバム"The Low End Theory"はロン・カーターの殺人的に野太いベースとともに名盤として知られている。
その4曲目のタイトルは"Butter"だ。
少しでもSugaのことを知っている人なら、彼がこの曲を知らないわけはないとわかる。彼はアンダーグラウンド・ヒップホップシーンから膿んで出たIdolなのだから。
A Tribe Called Called Questの"Butter"はコーラスの直前でこう囁く。
「'Cause I got the crazy game and yo, I'm smooth like butter」
これをSugaの抵抗と見なくて、我々膿んだファンは彼に許してもらえるだろうか?
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