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負け組団塊ジュニアは親の介護を放棄しよう!〜恵まれた世代の余生を支援して消耗するより、自分の人生を優先しましょうという話【中村淳彦の名前のないコラム】

世代間格差を埋めるにはどうすればいいか。団塊ジュニア以下の不遇世代がいますぐ豊かになって格差を縮めていくのは現実的ではないでしょう。でも、恵まれた世代へのさらなる優遇をやめる、という考え方ならできるかもしれません。親は大事。それは素晴らしいことですが、自分が一番大事。無い袖は振れません。

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 先日、実話BUNKAタブー8月号で記事を書いたんですね。タイトルが「親の介護を放棄しなければ負け組団塊ジュニアの人生は崩壊する」。雑誌はあんまり読まれないので、尖り散らかしたこと書かなきゃいけなくて、団塊ジュニア世代は団塊世代の親の介護を放棄しましょうってやりました。
 介護をしたことがある人だと分かると思うけど、要介護状態になって、要介護1の人は1人でも生活できるかもしれないけど、要介護2、3ぐらいまでなっちゃうと介護する人が必要。介護をする人が放棄したら、まあ、死んじゃうでしょうね。死んじゃうと思いますね。
 でも、家族で介護をしなくても、介護業界にはポエム漬けにされた介護したいっていう人がいるから、そういう人たちにお任せして、丸く収めるのが一番いい。少なくとも、もう息子とか娘が親の介護をする必要はないと、意見として言ったんですよね。
 要介護状態になるとどうなるかと言うと人それぞれ。認知症とかになるとその人の本来の性格が先鋭化してくる。エロい人はとことんエロくなって、怒りっぽい人はイライラして怒鳴り散らしたり、良い人はとことん良い人、仏様みたいになったり。社会性がなくなってくるので、本来の自分がこうして出る。ありがちなのが、体がだんだん弱まって歩けなくなってきたりする、歩けないのに、歩けない自分のことを認識できないから、歩こうとして転ぶとか、それで頭を打って大怪我とか、骨折とかそういうことが起こる。
 で、そういうことを見守って、そういう事態にならないように予防するのが介護の主な仕事。介護の仕事って大変なところは大変なのかもしれないけど、基本的に見守りって言って、おかしなことを起こさないように見張るみたいな仕事がメイン。そんなに仕事は大変じゃない。でも、24時間ずっと見てなきゃいけないっていうことで、時間が圧迫されて、あと生産性がないので、収入が高くならない。介護に関わってしまう人が疲弊して、貧乏になってドロドロな人生になるのは、時間を取られるってことが一番の原因なんですね。

高齢者優遇社会は団塊世代のため、現役世代は…

 いま、少子化がもうシャレにならないことが明らかになって大騒ぎになっている。先日も扶養控除の見直し、子育て世代、現役世代からお金を取るみたいな政策が発動されて炎上していました。現役世代を痛めつけるのに、日本は政策として高齢者優遇を本当に徹底していて、その象徴のひとつが介護政策なのです。
 2025年問題って皆さん聞いたことあると思うけど、団塊世代が後期高齢者になるまでに、高齢者大国を作ろうみたいな政策、それを40年ぐらいかけてやっている。1980年代の半ばに、団塊の世代が後期高齢者になる40年後を見越して、高齢者天国を作るために政府がプランを発動した。それがゴールドプラン、「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」っていうものです。そこから介護保険制度を始めて、介護は家族で見るんじゃなくて社会で見ましょうという制度を作って、民間企業がどんどん入ってきて、「介護は素晴らしい」みたいなポエムで国をあげて推進して、現役世代を団塊の世代の介護をするために誘導した。介護をする人はもう二束三文で貧困で人生ボロボロ。現役世代の人生を潰しても、高齢者はちゃんと見ましょう、みたいな方針なんですね。

 介護施設に行くとびっくりするんだけど、職員は高齢者のジジイとかババアに「様づけ」させられる。現役世代の貧困の人たちが集められて高齢者の介護をすると、「⚪︎⚪︎さんじゃない、⚪︎⚪︎様だ」みたいな。まさに奴隷みたいな感じで、離職率が高い。ポエムと現実が違いすぎて、どんなに頭が悪い人でも2、3年やっていたら、これおかしいんじゃないか?みたいなことに気づく。それで離職しまくりなので人手不足なんですね。
 徹底した高齢者天国をつくろうって政策は本当に大がかりで、ゴールドプランができて10年ぐらいかけて介護福祉士制度、社会福祉士制度って国家資格を作った。福祉の専門学校とか大学とか今までもあったけど、それを資格養成機関に変えさせた。国家資格を取る養成所になった。大学にも福祉学科とかガンガン許可して、いま福祉学科みたいなものが山ほどある。2025年に向けて団塊世代の介護をする人を増やして、団塊世代が本当に幸せに亡くなるようにしましょう、ってことを国策としてがっちりやったんですね。
 高齢者を大切にするとか、幸せに亡くなるっていうのは別にいいけど、一方、いま少子化が大変なことになったって騒いでるけれども、このゴールドプランを行った1986年にね、ゴールドプランじゃなくて少子化のために動けば、こんな事態になってないわけです。それでどうして、団塊の世代がここまで徹底的に優遇されるのか? なんか根拠がやっぱりよくわからないけど、このゴールドプランの段階で高齢者優遇社会を進めて、もう現役世代は切り捨てるみたいなことをやった。今みたいな少子化を迎えることは多分わかっていたことだと思うので、ちょっとね、騒いでいることに首を傾げます。現実として、大変まずい結果になっているわけです。

 それで団塊ジュニア世代がどうして親の介護を放棄した方がいいのかと言うと、理由はいっぱいある。簡潔に言うと、団塊ジュニア世代は世代格差の一番のババを引かされてる世代で、大変まずいことになっている。うちの近所見てもね、僕と同年代ぐらいの子供部屋おじさんが膨大にいる。半径30メートル以内に子供部屋おじさんだらけで、多くの人が人生奪われてしまっているわけです。団塊世代を国をあげて優遇して、「介護は夢がある」とか言って団塊世代の奴隷となる現役世代を集めて介護をさせようってことなんですね。
 いろんなインフルエンサーがいて「親の介護は素晴らしいことですよ」みたいなことを言う人もいる。団塊世代を死ぬまで幸せにって、巨大な計画があるわけです。その子供である団塊ジュニア世代は死屍累々で、生き残った人もわずかながらいるけど、その人たちも親の介護をやってしまうと、人生が潰れちゃう。団塊ジュニア世代が後期高齢者になるのは25年後、昨年の出生数が団塊ジュニア世代の3分の1、77万人ぐらいで、とんでもない少子化がもう決定した。団塊の世代は国をあげて幸せに亡くなろうとして、団塊ジュニア世代は様々なババを引かされて、もう死屍累々の中で親の介護をさせられる。
 親が亡くなった後、団塊ジュニア世代は高齢者になる。出生数が77万人では誰も支える人がいないので、団塊ジュニア世代はもう幸せな高齢者になれません。幸せな老後は迎えられませんってことがもう決定したわけです。
 僕は世代格差みたいなのはこれ以上はつらいので、恵まれている親をさらに自分たちの人生を削って、面倒を見ることはないんじゃないかっていう考え方なんですね。親が要介護状態になって、厄介なことになったなと思ったらすぐ、自治体の地域包括支援センターってところに行って、要介護認定をもらう、プロの介護事業者に任せて、プロの介護事業者が見れない部分はもう放置。そこで転ぼうが何しようが、もう仕方がないっていう考え方に切り替えていった方がいいと思うんですね。
 国の方針として高齢者優遇はもう決定している。だから団塊の世代の幸せのために、いろんなところから刺客が送られてくる。「介護はどんなに素晴らしいことか」みたいなこととか、「絆」とか、「産んでもらってありがとう」とか。「自分は頑張って面倒を見る」とか、そういう美談みたいなことが立て続けにくる。そういうことを真に受けちゃいけません。真に受けないで、ちゃんと自分を持って、「自分は悲惨な老後が決定しているから、親には何もしなくていいだろう」みたいなことが正解だと思う。

 少なくとも介護職みたいなことは、生き残った人はしないでくださいね。生き残った人は幸せにずっと生きてきているからお花畑な人もいて、そういうポエムの刺客にやられてしまって、親の介護に身を捧げる人も出てきかねない。そういうことはやめてくださいね。ちゃんと働いて社会貢献して欲しいですね。
 介護をしなかったら転んで大変なことになるかもしれないけれども、親が転んでしまったのはあなた方家族のせいじゃない。家族のせいじゃなくて、転んだ本人の自己責任です。自分で体が弱っていることを自覚してなくて、だけど立って歩きたくて、立って転んだ。自分が立とうと思って転んだことなので、まったく家族のせいじゃなくて、立ちたかった自分のせい。そういう考え方で、気楽に考えていきましょうってことですね。

<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」日々更新中!https://voicy.jp/channel/2962