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だんご汁と珍品奇品の書肆/1泊2日べっぷ旅行(後編)【ヤスデ丸の1万逃歩日記#3】

さて、お気づきでしょうか。前回の投稿から凄まじい時間が経ってしまったことを。
あまりの痴呆ぶりから、先日かかりつけ医にMRIにぶち込まれた私ヤスデ丸(結果は無事異常なしのノーマル痴呆)、アタマの中の開かずの間に記憶が封印されてしまう前に、前回のべっぷ旅行の続きを。

↓前編

初日、街を散策中に見かけた「エッチビル」。「エッチ美容室」がどうしても気になる

そもそもこの旅、なぜ別府の地を選んだかというと「書肆ゲンシシャ」さんに行くため。

ツイッター(と呼び続ける)でご存じの方も多いでしょうが、ゲンシシャってのは店主の藤井さんが個人的に蒐集してきた、ちょっと変わった書籍・写真・アート・古器物なんかの珍品たちを客人たちも楽しめる古書店です。

九州って確か行ったことないしよく考えたら別府って温泉地街じゃんって気ことで、別府温泉をエサに友人を道連れにしました。

午前10時。
ゲンシシャのオープン前に、まずは腹ごしらえから。

前日、名物の関あじ・関さばをいただいた居酒屋で締めに注文した「だんご汁」。これがまあめちゃくちゃに美味くて、食も男も気に入ったものは飽きるまで毎日リピートしがちなヤスデ丸は、この日の朝ももちろんだんご汁を訪ねて三千里しました。

昨日ぶりの再会に喜ぶヤスデ丸。推しは飽きるまで食い尽くす
名物・だんご汁。根菜、葉物野菜がたっぷり。隣の天むすが異様に美味くて追加注文したかった

土日の昼はいつも満席という「甘味茶屋」で注文した「だんご汁定食(大)」(1280円)。関東でいうところの、すいとん汁のような味噌ベースの味。付け合せでおむすびを選べたので私は天むすに。

おむすびダンジョン。「えび天か野菜天か?」と謎に挑発的な一文
郷土料理「やせうま」。黄粉餅好きにはたまらん(左)/ビターな抹茶ムースに乗った粒あんがまた上品な甘さ。絶対食べなくていいんだろうけど、なんとなく紅葉も食べた(右)

左のニョロニョロ、こちらも大分のソウルフード「やせうま」(400円)。きなこを眩した名物デザートです。だんご汁もやせうまも、どちらも小麦粉を団子状にしたものを伸ばしたもの。

さて、腹ごしらえもすんだところで、魔窟・ゲンシシャへ幻視体験に。

書肆ゲンシシャ。気をつけていなければ見落としそう

11時、入店。
口開け早々だったため客は私たちのみ。といっても、2人がけのソファが1台、一人がけのイスが3、4脚ばかしと、こじんまりとした店構えですぐ埋まっちゃいそう。

ドアを開くとすぐに広がるモダンなバロック風の店内

すると奥から現れたスーツ姿の男性。
噂の藤井さんだ!

「どうも。いらっしゃいませ。この中からお好きなジャンルをお選びください」

不思議の国の案内人、何か魂胆のあるストーリーテラーさながらの微笑を向けながら渡された、ラミネート加工された用紙。

そこには「拷問」「悪魔」「切腹」「医学」「奇習」など、大量の項目が並ぶ。
この中から3つ好きなジャンルを選ぶと、藤井さんがそれぞれのジャンルからランダムにおすすめを選んでくれます。

飲み物は1杯サービス。ティーカップもこだわっているそう

ジャンルを選択し、読書タイム開始。
小一時間すると大学生らしい2人組の女性客が来店し、すでに満席に。後に待っているお客さんもいたようなので、そろそろ帰ろうかと思ったタイミングで「良ければ展示品もご覧になってください」と藤井さん。

女子大生たちも交えて店内の展示物の解説がはじまります。

世界中の珍品奇品が並ぶ。奥にある「人骨ラッパ」はチベットの民族が人間の大腿骨から作ったもの。吹くと人々を飢えから救うことができるらしい。マジ?
主に戦中、戦後の薬瓶などが並べられたコーナー。よく考えたら「正(征)露丸」って攻めた名前だよな
ゲンシシャ名物の人皮で装丁された本。触ってみると固くこわばっているものの、確かに人の皮そのもの。手術痕などが生々しい
裏返すと紺に塗られた板に「警戒警報発令中」の文字が。わかりやすくていいね

他にも色々撮影させてもらいましたが、斬首されたの生首のプリントされたポストカード(どういうこと?)や死因が明記された死体写真集などハードなものが多いため、気になる方は是非現地へ!

一旦店を後にし、近所にある別府公園で休憩。こんな長閑なところに、あんな奇怪な店があるなんてな。

拳法的なのやってるおばあちゃん集団とか、息子は乗り気じゃないのにサッカーをやり続けるお父さんとか、いろんな人がいた

元々は駐留米軍のキャンプ地だったという別府公園は、別府市へ返還されて今年で47年。一見見たら普通のキレイな公園だけど、いろんな歴史があるんですね。

休憩中のヤスデ丸。このあとめちゃくちゃ虫にかまれた

ゴロゴロした後、再びゲンシシャへ吸い込まれる。

中にはお客が一人。青年が伊藤潤二のマンガを読みふけってる。常連という20代の彼は「藤井さんには感謝してるんです」と語り始めました。

「昔から人とは少し違うものが好きで、同じ趣味の人なんてなかなか出会えない。でも別府にやってきて、ゲンシシャに通うようになったら、いろんな面白い趣味を持った人と出会えました。こういう場所ってなかなかないので、ありがたいなって」

そのあとも好きなヘヴィメタルバンドのことや、自宅に現れた霊に取り憑かれた話なんかをしてくれた青年。しばらくすると、常連さんがもう一人来店。もちろん二人はお知り合い。

「この人、ナックルズの人らしいよ」

「へ~! 僕、昔『GON!』めっちゃ読んでましたよ。あれ、アタマおかしかったですよね~。面白かったな」

すると気を利かせて藤井さんが昔のいろいろな雑誌を奥から持ってきてくれた。
三島由紀夫の生首が掲載された雑誌や(生首ネタが多いな)、あさま山荘の事件現場の遺体写真が顔つきで載った雑誌、創刊号の『フライデー』など。昔はこういうの普通に載せてたんだよね。

ジャンルリスト(奥)と死体写真集(手前)。下にある黒い表紙のものも確か同じジャンル。さすがは第三書館

次は何を集めたいか聞いてみると、
「いまは拒食症患者の写真集を探してるんです。意外と少ないんですよね」
と藤井さん。私は江戸時代の男娼にまつわる本とか写真を見てみたいので、良かったらそちらもお願いします。

みなさんに見送られ、無事、剥製にされたり本の装丁にされたりせずに別府を後に。

大分空港までの帰りのバスで、甘味茶屋で購入した和菓子たちを食す。

「石垣もち」はゴロゴロとしたさつまいもダイスの入った小麦粉のお菓子。鬼まんじゅうと似ていますが、石垣もちの方が水分量の多いもっちり感があるのが特徴。地元の人らしきおばちゃんが、箱詰めで20個くらい買ってたあたり、地域に愛された手土産・おやつなんでしょう。

大分、美味いものづくしで最&高!

甘味茶屋で購入した和菓子。手前が「石垣もち(餡なし)」。近所にあったら通ってたなぁ

さてこの日の歩数は【9887歩】。惜しくも1万歩届かず。
相変わらず摂取カロリーの方が多いですが、魔窟でハラハラした分消費されたということにしよう。

それではまた次回~!

【著者プロフィール】
ヤスデ丸(やすでまる)
▶『実話ナックルズ』の女性編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。乗っているバイクはYZF-R3。オススメのプロテインは「ウマテイン ミルクティー味」「ウルトラ 黒ゴマきなこ風味」。