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【フォト・ドキュメント】パンクムーブメントの軌跡【第12回】

かつて日本のポストパンクバンドに比類なきカリスマ性を持ったベーシストがいた。モヒカン頭にド派手なファッションで鮮烈なフレーズを弾く姿は、一瞬誰もが女性だとは信じられなかったかもしれない。彼女の名前はU子。ALLERGYのメンバーである。そしていまなお業界では伝説的に語られている。彼女の魅力とは一体なんなのか。地引雄一氏が語る。

『ALLERGY』
パンクに殉じた女「U子」

新宿ロフトの楽屋で(1983年8月)


新しいパンク世代



 東京ロッカーズによるパンクムーブメント以降の80年代初頭、様々なポストパンクバンドが出現した。なかでも頭角を表したのが「スターリン」「じゃがたら」などだが、若手世代で異質なカリスマ性を持っていたバンドが「アレルギー」だった。
 バンド結成は81年で、85年に解散。活動期間は実質3年半程度である。メンバーは宙也(Vo)、荒木康弘(D)、U子(B)、小野昌之(G)の4人編成。音楽性はゴシックロックやポジティブパンク系のロックサウンドを軸に、ファンクやプログレ風のアプローチなどが随所にみられるアレンジが特徴的で、若手世代のバンドのなかでは群を抜いて目立っていた。

「スターリンやじゃがたらは東京ロッカーズの面々と年齢はほぼ同じだからね。ただ表に出てきたのが遅かっただけ。でもアレルギーは完全にひと回り下の年齢だから、本当の意味で新しい“パンク世代”だよね。なかでもベースのU子がバンドメンバーのなかで特別の輝きを放っていたんだ」

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