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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県・西表島の『高倉健が愛したホテル』

現在は廃墟に


 沖縄県・西表島に80年代のバブル期に高倉健がお忍びで来ていたという、高級リゾート・ホテルの廃墟がある。高級感を売り物にしているダイビング・ショップの裏にある白い建物がそれにあたる。

白い建物が残されている

 小高い丘の横に建てられた建物は、ちょっとした〝要塞〟のようだ。ダイビング・ショップの方向には、大きな窓ガラスがない。外部から中の様子を覗くことができないような構造になっている。〝隠れリゾート〟らしい怪し気な雰囲気が漂っている….。

階段には雑草が生い茂る

 小高い丘から伸びる木々の枝をよけながら階段を上がり、2階部分にある玄関から中に入ると、30畳くらいの広さの寝室があった。窓際には、3~4人の大人が寝ることができる木製ベッドが残されている。いかにも、大物芸能人を呼び込むために作ったような部屋だ。寝室の隣には、青いタイルの貼られた浴室があって、とても豪華だ。

巨大な木製ベッド
洋風の浴室
金があしらわれており何ともバブリー
廊下やレストランは朽ち果てボロボロ
ここに訪れる者は誰もいない

 リゾート・ホテルの前から奥の方に続く道の先には、ゴルフ・コースがある。雑草すら生えていないので、誰かが使っているものと考えてチェックしていると、地元の小中学生がクラブを持ってやって来た。このような本格的なコースで、しかも無料でゴルフ遊びができるなんて羨ましい限りだ。

子供たちが遊んでいたゴルフコース

 オープン当時、高級コテージに泊まったことがある観光ガイドの与那嶺さん(仮名)は、「この施設には、あらゆる贅沢がありました。完全会員制リゾート・クラブだったのですが、健さんは、名誉会員のような存在だったので、ゴルフ・コースの手前にある白い建物を自由に使っていたようです」などと説明してくれた。

昭和の大スター、高倉健が愛したホテルは時代の流れと共に廃墟へ変貌していた

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai