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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】兵庫県神戸市の「スコッティさん」

異常な存在感のパフォーマー


 JR神戸駅やそのすぐ近くにある元町駅などに、「謎めいたファッションに身を包んだ男性が出没している!」という情報が飛び込んできた。それによると、この男性は、1960年代に見られたフラワーチルドレン風の格好をしていたり、ピエロもどきの格好をしていたりするという…。早速、元町駅界隈を散策していると、それっぽい人を発見した。

「わたしの名前は、スコッティといいます。今日は天気もいいですね。月に何度かこの辺でパフォーマンスをしています。会社に衣装を置いてあるので、駅で着替えて来ました」

 道行く人たちは、彼のファッションを見て「???…」という表情を浮かべている。関西では、中年の女性がヒョウ柄のパンツを履いている姿を見かけるが、それと比べてもかなり異端だ。パフォーマンスも変わっていて、一旦立ち止まると、ピタッと動かなくなることがある。道行く子どもたちも不思議そうな表情を浮かべている。パフォーマンスは、場所を変えながら続けられる。

「このようなことを始めたのは、今から10年以上前のことになります。元々、ビートルズなどのコピーバンドをやっていたのですが、ちょっとしたことがあって辞めました。洋服は、バンド時代から古着屋などで買っていたものです。あのー、実は、世の中に笑いをもたらしたいんですよね。でも、本音を言うと、モテたくてやっているんですよ。まだ独身なんです。女の子が苦手でね…」

 スコッティさんこと谷口邦雄さんは、兵庫県神戸市の出身だ。現在は、清掃関係の仕事をしている。地元でもちょっと知られた存在のようで、顔なじみの店に立ち寄ると、熱烈歓迎されていた。数年前、どうしても結婚したいと思っていたことがあるという。

「大阪の道頓堀や京都に行ってパフォーマンスをすることもあるんですよ。こういうことをしているうちに女の子とも話せるようになったんですね(笑)。人って変わるもんですねぇ~。でも、全然彼女できないんですよね…(苦笑)」

 突然の取材にもかかわらず、スコッティさんは、とても親切にしてくれた。読者の方もスコッティさんを見かけたら怖がらずに声を掛けてみて欲しい。彼はきっと優しく対応してくれることだろう!!

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai