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仮説を鍛えるために前提を疑い制約を緩和する

こんにちは。noteでプロダクトマネージャーをしているjitsuzonです。
先日pmconf2022というプロダクトマネージャー向けのイベントがありまして、ありがたいことに登壇の機会をいただきました。時間の都合でそこに盛り込めなかったけれどとてもご紹介したいことがあるので、発表に入れるつもりだったスライドを使いながら記事としてまとめていきます。

登壇時の資料はこちらに。本記事単体でお読みいただいても全く問題ありません。

この記事は note株式会社 Advent Calendar 2022 の 8日目の記事です。前回は ryo_manba さんの「noteで5ヶ月間インターンをして感じた3つのこと」でした。グッドインターン!

本編

問題解決をするときの思考法として、仮説思考を僕たちはよく使っています。プロダクト開発のような複雑な問題は、演繹的・帰納法的に導けるものではなく、仮説を用いた推論へと跳躍することが当たり前に必要とされます。そうして「仮説」を立てたとして、それは良い仮説でしょうか?立てた仮説をより良い仮説に鍛え上げることはできるでしょうか?前者は「直観」を鍛えることで解決し(ご興味あるかたは前述の発表資料をご覧ください)、後者へのアプローチをこのあとに説明していきます。

1つ目のアプローチは「前提を疑うこと」です。問題解決をする際に、いくつもの仮説が立てられるとき、どの前提レベルを対象にしているのかを考えてみましょう。上述の3つのりんごを分け合う問題で、30秒ほどで自分なりの回答を用意してみてください。この問題では疑える前提が以下のようにいくつも存在します。ご自身の回答はどの前提に対応できているでしょうか。

前提を何も疑わなければ「兄に2つ、弟に1つあげればいい。なぜなら兄のほうが年長者だから」という回答が出せるでしょう。しかし、それではこの問題の重要な点である「不平等」を解消することができず、喧嘩は避けることができません。そこで前提を疑ってみるのです。たとえば3つめのりんごを半分に切ってしまえば平等に配布することができます。このように、前提を疑うことでより高次な問題解決ができないか、と足掻くことが僕たちプロダクト開発者がもつべき姿勢だと思います。すこし論理学・哲学よりですが、ヘーゲル弁証法(アウフヘーベンで有名なやつ)も似たような話なので、掘ってみるとおもしろいですよ。

ちなみにこれらの前提は下になればなるほど根本的な前提になっています。プロダクトを「何のために」つくるのかを頻繁に考えるプロダクトマネージャーは「目的の前提」くらいから疑うべきでしょう。
次は認知科学の有名な「ろうそく問題」をご紹介します。

わかるといわゆる「アハ体験」を起こすような創造性を必要とする問題です。Dan PinkのTED Talkではこれを引用しつつ創造的な問題解決は外発的動機づけより内発的動機づけが重要であると話しています。(今回はそこには触れませんが面白いのでぜひ見てみてください)
次のスライドが答えとなります。

画像のように箱から画鋲を出し、箱を土台とするのがこの問題の解答です。
このような創造的な問題解決の際に重要とされることを少し抽象化してご紹介します。

創造的な問題解決において重要なのは制約を外すことです。与えられたものをそのまま捉えていては解決が一向にできません。なのでいくつかの試行錯誤のなかで制約を外すことが必要になってくるのです。それをいかに早く的確に行うかが、洞察を必要とする創造的な問題を素早く解決できるかに直結します。「制約」というのは対象レベル・関係レベル・ゴールという3つにわけることができます。さきほどのろうそく問題を例にして説明します。

箱は「画鋲を入れる容器」だというイメージがありますよね。しかしこの問題では「ろうそくの足場」として対象を捉え直さないといけません。また、関係も捉え直す必要があり、画鋲に刺されるという関係だったり、ろうそくを載せるという関係が発見されなければなりません。
もう1つ、ゴールの制約、というのはこの問題ではゴールがわかりやすい(ろうそくを壁にとりつけて明かりを灯す)のであまり意識する必要はありません。しかし現実の問題はゴール自体が明確ではない場面が多々あります。その場合、暫定の解答とゴールイメージを照合する必要があります。さらに解答の過程でゴールが徐々に見えてくる場合もあります。前述の「疑うことの前提たち」でお伝えしたように、前提を疑いつつ適切なゴールを設定することで適切な失敗をして、徐々に制約を緩和し正解に近づいていけるのです。『表象変化の動的緩和理論:洞察メカニズムの解明に向けて(開一夫・鈴木宏昭 1998)にてTパズルという問題を使って詳しい実験や考察がされていますので、ご興味あるかたはご一読ください。

ここまでのまとめです。直観から導いた仮説は、問題解決を「より高次に」「より素早く」おこなうために鍛えることができます。僕たちが創造的に人間の問題解決をしていくために仮説を鍛えていきましょう。それは雲をつかむようなことではなく、すぐ参考にできるような先人の研究がたくさんあります。プロダクトマネジメントがさらに進化していくために、私自身勉強と実践を続けていきたいと思います。

noteエンジニアアドベントカレンダー、次回はkihayaさんの「Railsの現在地 / Rails以外からTurbo(Hotwire)を使う」です。こちらもぜひチェケラお願いします。

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