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「演劇集団キャラメルボックスを開けてみた」Part.2

城西国際大学メディア学部キャンパス誌「Update Vol.2(https://online.fliphtml5.com/kbtoy/ayak/#p=1)」で行ったインタビューの完全版。
これを読めば、あなたもキャラメルボックスのことをもっと知りたくなる!
7つに分けて掲載しております。こちらPart2です。是非ご覧ください!


Part2

——キャラメルボックスにしかないと思う部分はありますか?

成井:2つありますね。1つは、私たちのホームグラウンドは池袋のサンシャイン劇場と神戸の新神戸オリエンタル劇場(現 AiiA 2.5 Theater Kobe)、客席数が800席くらいなのですが、このサイズの劇場でストレートプレイをやっている劇団は日本ではほぼないです。プロデュース公演を行うことはあると思いますけど、これだけ大きな劇場でストレートプレイをやる劇団は他にないと思います。サイズが大きくなればなるほどエンターテインメント性を生かしていかないとお客さんが飽きてしまうので、大きなサイズでストレートプレイはやりにくいのですが、私たちはそれに挑戦しています。
もう一つは小劇場の世界に限ったことにはなりますが、多くの劇団というのは旗上げのメンバーがずっと作・演出、主役、準主役ってやっていくものなのです。しかし、私たちは38年間の間に毎年オーディションを行い、役者として成長して5年から10年たつと主役が回ってくるという風に「世代交錯」しているのです。とにかく、その役者の成長を見せる劇団であるという風に捉えています。これは他の興業文化ではよくあるのですが、小劇場の世界ではやっぱりキャラメルボックスだけだと思いますね。スターシステムを取ってない役者の成長を応援してもらう劇団
この2つですね。

多田:僕はズバリ、成井豊の存在だと思っています。成井さんありきというか。劇団が今30年以上続いている間には、入れ替わりもありますけれど、みんなやっぱり作品を面白くしようと思って集まった勇士たちですから、みんな一生懸命。でも、この劇団の歴史の中でずっと変わらないただ一つのものは、成井さんがいて、成井さんの作品を演じ続けるという集団であるということですね。この作風というか、今までやってきた作品もほぼすべて成井さんの息吹がかかっているものです。例えば他の劇団だったら作家が何人かいてとか、演出が変わってとか、そういうこともあったりすると思うのですが、キャラメルボックスは成井豊がやりたいもの、面白いと思うものを上演し続けてきた集団なので、そこがやっぱり他の劇団とは違う、うちにしかない特色なんじゃないかなと思いますね。

鍛治本:完全に主観ですけど、誰も手を抜かないところが、僕は高校野球みたいだなって思います。高校野球って一塁で絶対にアウトになるタイミングでも最後ヘッドスライディングするし、9回裏でも最後にランナーが滑り込むじゃないですか。ああいう印象があって、絶対に最後まで手を抜かない。劇団のことだからこそだと思うんですけど、自分だけのことじゃなくて、全員のことをみんなが思っているし、稽古終わってもみんな帰らないんですよね。ずっと稽古しているんです。頼まれてもないのに後輩のお芝居の指導をしたりとか、セリフを面白くしたいなっていうところをみんなで考えたりとか。みんなが常に他方面に対して全力であるっていうのが、僕は好きだし、大きな特色だなと思います。

成井 豊 さん、多田 直人 さん、鍛治本 大樹 さん


——劇団外での公演とキャラメルボックスの公演、違いを感じる部分はありますか。

成井:演出のやりやすさですね。言葉が通じやすいです。
例えば、“リアリティ”という言葉が何を意味するのか。現実感とか真実味っていう風に普通は訳されるのでしょうけども、これは劇団によって演出家によって微妙に違うのです。私がその役者にダメ出しをするとき、もっと強くとか、もっと運動量欲しいなとかを劇団員ならすぐわかってくれる。この言葉の言い方で、どれくらい必要なのか、多分嗅ぎ取ってくれるのだろうと思います。プロデュース公演で初めて一緒にやる方には、逐一説明をしていかないと通じないのですよ。プロデュース公演をすることによって、自分が今、“リアリティ”っていうものをどう捉えているのかってことを検証することもできるし、また初めて会う役者から教わることによって、また新たな“リアリティ”を確信していくことも起こり得るとは思うのですが、時間がかかるのは間違いない。下手すると公演が終わるまで分かってもらえないで終わってしまうなんてこともあったりしますね。劇団員だとそれが全く必要ないので、芝居を作りやすくために、形になるのがすごく早いです。でも稽古時間はまだあるから、さらにもっといいもの、さらにもっといいものっていう風に深掘りができる。そこが劇団のいいところじゃないかなと思います。

NAPPOS PRODUCE
『嵐になるまで待って』(2023) (c) 引地信彦

鍛治本:いいところ、そうですね。またこれもちょっと言うと、勘違いされそうなのですが、外のお芝居の方が断然楽です。

多田:ええ?そう?

鍛治本:それはいろんなところで知り合ったり、僕のお芝居を見たり、こういう役をやってほしいっていうオファーをもらうことが外のお芝居でやるときの基本なんです。そうすると、やっぱりこういうイメージを持っているのだなとか、こういうことをやってほしいのだなというのが分かっていて、それを提出するっていう作業になると思うんですけど、キャラメルボックスのお芝居って何年やっても難しいなっていつも思っていて。外のお芝居とは違った意味で求められているものがはっきりしているので、それをクリアしつつ、自分がやりたいこととか自分が役で表現したいことを両立させるにはどうしたらいいだろうって考え始めると、すごく難しいことをやらなきゃいけないなと思っています。でも、それが僕は楽しいです。

多田:僕はもしかしたら逆かもしれない。

鍛治本:ほんとですか?

多田:うん。外の現場の時だと、初めましての共演者と初めましての演出家の方で、「あなたは何が面白いと思うのですか?」っていうところの探り合いから始まるので、最初探り合いに時間がかかって難しいですね。一緒の共演者でも「僕はこうしたいと思っているけど、あなたはどう感じていますか?」みたいな探り合いがやっぱり最初の1週間2週間くらいどうしてもあるので、そこをすり合わせていく作業っていうのが外の現場だと結構苦労する部分だなと思いますね。そういう意味ではやっぱり劇団の稽古の方がスタートダッシュを切れる感じがあります。でもその分、もう20年僕劇団にいるので、言ったらある程度のところまでできるっていうのは当たり前のこととして自覚を持って、そこから先何ができるか。外の現場で何か身につけてきたこと、感じてきたことを、この劇団で何かフィードバックできることはないかっていうことをもう一さじ二さじ自分の中で加えられるようにするのが、自分が劇団の中で今課題にしていることです。

NAPPOS PRODUCE
『嵐になるまで待って』(2023) (c) 引地信彦

Part3へ!

好きな劇場、尊敬する人や影響を受けた人https://note.com/jiu_uda_seminar/n/n6628c33f5de5


最新情報!(2024年3月時点) 詳細は各HPをチェックしてください!

<演劇集団キャラメルボックス 次回公演予定>
キャラメルボックス2024 クリスマスツアー
2024年12月 大阪・東京公演

<成井豊さん 最新作、鍛治本大樹さん 出演予定作品>
NAPPOS PRODUCE 『湯を沸かすほどの熱い愛』
【原作】中野量太 【脚本・演出】成井豊
2024/5/18(土)~5/26(日) @サンシャイン劇場
2024/6/1(土)~6/2(日) @サンケイホールブリーゼ

<成井豊さん 脚本・演出・作詞、多田直人さん 出演予定作品>
『無伴奏ソナタ-The Musical-』
【原案】 オースン・スコット・カード 【翻訳】 金子司
【脚本・演出・作詞】 成井豊 【音楽】 杉本雄治
2024/7/26(金)~8/4(日) @サンシャイン劇場 ※大阪公演あり
2024/8/10(土)~8/11(日) @森ノ宮ピロティホール

村上


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