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【秋春制】もう「雪・寒さ」では反対できない

 地球温暖化のおかげで秋春制が可能になるわけじゃない。

 炎天下でスポーツすることの危険性も、冬の豪雪地帯で試合を開催する困難さも、昔と同じだ。
 むしろ、Jリーグ30年の歴史を振り返れば、夏と冬の寒暖差は拡大する方向にある。東京を例に挙げるとこんな感じだ(※1)。

Jリーグ誕生直前(1988~1992)
1月平均:6.78℃ 8月平均:27.04℃

直近5年間(2019~2013)
1月平均:5.74℃ 8月平均:28.32℃

 それでも、Jリーグのシーズン移行(いわゆる秋春制)に反対する理由として「雪・寒さ」を前面に掲げるのは厳しい、と認めざるをえない。

 去る18日、Jリーグが秋春制を推進するという方向性を示した。オープンにされている検討状況(※2)を見ると、現在のシーズンオフ相当の期間をウインターブレイクと想定している。

 つまり、冬季の観戦環境は現状の春秋制とほぼ同じだ(※3)。

 雪国クラブでのリーグ戦開催で大きな障害となる「雪・寒さ」の時期を避けるとJリーグが明言したのだ(※4)。
 それでもなお「雪国クラブを切り捨てるな」と言い続けてしまうことは、かえってJリーグが反対派の声を無視する口実を与えてしまいかねない。

反対派「豪雪で試合ができない!秋春制反対!」
Jリーグ「秋春制でも豪雪の時期に試合やりません」
反対派「いや、雪国クラブのことを考えろ!秋春制反対!」

 いや、こう書くと滑稽に見えるかもしれないが、ドメサカブログやヤフーニュースのコメント欄をはじめ、秋春制に反対するネット上の意見には、いまだにこのような論調が目立つ。
 さらに困ったことに、必要以上にこの論調を取り上げて、あたかも「雪・寒さ」が未だに一番の争点であるかのように強調する大手メディアも存在する。

 これでは「反対派は話を聞かない、説明を繰り返しても無駄」とリーグ側が見切りをつけても、こちらも文句が言えない。

 振り返れば秋春制の論議も長くなってきた。
 話が出始めてから20年以上、犬飼氏がJFA会長(※5)に就任して論議が本格化した2008年からも15年が経とうとしている。
 その間にJリーグは色々と対策を重ねてきて、今に至っている。ワタシたち反対派のファン・サポーターは現状認識を更新し続けてきたと、胸を張って言えるだろうか?

 いま議論の焦点はむしろ、年度跨ぎに伴う困難を乗り越えられるのか(アマチュアとの接点・スタジアム確保など)という点に移っている。
 これは雪国クラブに限った課題ではないし、「Jリーグの外の世界」「サッカー界の外の世界」との折衝が必要で、気候とはまた別の困難が待ち受けている。

 秋春制に反対するのであれば、主戦場をこちらに移さないとJリーグ側に押し負けちゃうよ?とワタシは思っている。

 ピントのズレた主張で時間を空費して、本来あるべき議論を置き去りにしたまま秋春制に移ってしまうとすれば、それが一番のガッカリだ。

注釈

※1:東京(東京都) 日平均気温の月平均値(℃)(気象庁ホームページ:随時更新)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=44&block_no=47662

※2:シーズン移行の検討状況について(Jリーグ公式:2023年8月7日付)
https://www.jleague.jp/news/article/25760/
 その概要はyoutubeのJリーグ公式チャンネルで「シーズン移行議論とは?Jリーグがさらに成長するための最適なシーズンを考える。」という動画でも確認できる。
(前編:2023年10月13日配信)
https://www.youtube.com/watch?v=s1gRHKxU5-c&t=11s
(後編:2023年10月14日配信)
https://www.youtube.com/watch?v=E5hFED5zPYk&t=1s

※3:実際には2~3週間短縮するというプランも選択肢にあがっている。雪国クラブにアウェイ3連戦以上という不等なハンデを負わせてしまう「ウインターブレイク短縮」を防ぐためであれば、「雪・寒さ」を訴え続ける意義がある。

※4:現状の2月後半開幕も避けられておらず、雪国クラブにハンデを負わせてはいる。それだけでもコンペティションとしては十分に不健全だとは思う。

※5:犬飼氏の肩書を誤っていたのを訂正(2023/12/26)

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