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新幹線は魔法じゃなく、道具

去る3月16日、北陸新幹線が敦賀(つるが)まで伸びた。
 
弟の一家が福井県にある。乗り換えが一回減るので、訪れるにも来てもらうにも便利になる。これまでの新幹線開業のなかでも、最も身近に感じている。
 
ただ、これは東京に住んでいるから言えることだ。
 
もし大阪住まいだったとしたら「面倒くさいことになったなぁ」と愚痴をこぼしていたのだろう。乗り換えが確実に1回増えることになるのだから。
 
新幹線の何が便利なのかといえば、座ったままで速く移動できるということだ。自力で運転する必要がないのだから、お酒を嗜みながらの旅も楽しめる
 
ところが今回の関西~福井の間では、自分の足で歩かなければならない乗り換えが増え、しかも大して早く目的地にたどり着けるわけではない。これでは本末転倒である。
 
その辺は東日本の新幹線の方が上手にやっている。
 
山形新幹線と秋田新幹線はいわゆる「ミニ新幹線」だ。大雑把にいえば、規格は在来線のままにして、線路の幅だけを新幹線に合わせて広げるという方法だ。
その区間では最高速度は在来線並の130km/hしか出せないが、乗り換えなしで東北新幹線に連結して、その先は275km/h以上で関東へひとっ飛びなのである。
 
これでも十分に速いし、乗り換えを気にせず駅弁をゆっくり食べて居眠りできるのは、この上なく嬉しい。
 
山形新幹線も秋田新幹線も、運転開始の当初よりも増車されている。これは開業前の予測を超えた人気を博したという証拠ともいえよう。
 
どうも西日本はフル規格にこだわり過ぎて、利便性を損ねることが多いように思う。
 
整備新幹線のスキームとはそういうものだ、といえば確かにそれまでだ。とはいえ、北陸も西九州も一度はスーパー特急方式が取り沙汰された末に、あえてフル規格を選んでいる。
 
スーパー特急方式を選んでいれば、サンダーバードやしらさぎが200km/hで走り、大阪や名古屋まで乗換なしで行き来できるという未来があったかもしれない。西九州新幹線にしても、もっと素直に「便利になった」と喜べる未来もありえた。
 
新幹線開業で経済効果が生まれる、とはよく言われる。
 
それは新幹線という道具の力で街と街が近づき、相乗効果を得て、より大きな経済活動が生まれる結果ではなかろうか。
少なくとも「新幹線」という言葉を与えれば街のステータスが勝手に上がったり、お金が降ってきたりするような魔法は、この世の中にはない。
 
整備新幹線や並行在来線に関する様々なルールがあるのは分かる。
とはいえ道具というものは、ただ手にしただけでは何の役にも立たない。使いこなすことを学ぶことで、初めて暮らしや仕事を便利にすることができるのだ。
 
北陸新幹線の大阪開通はずっと先の未来だ。それまで不便なままでいいのだろうか。
 
新幹線は魔法ではない、道具だ。ルールもまた然り。
手を加える余地はたくさんある。使いこなそう。
 

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