はじめに

　Jリーグはシーズン移行、いわゆる秋春制についての決議を12月にするとしている（※1）。

　リーグ側はこの1年、じっくりとデータを集め、理論武装して、丁寧に反対派の外堀を埋めてきた。
　現行のシーズンオフとほぼ同じウインターブレイク、雪国クラブへの冬キャンプ費用の助成という対策を出された以上、「雪・寒さ」がシーズン移行反対の理由としては弱くなってしまった。

　立ちはだかる大きなハードルはなくなった。だから、おそらくシーズン移行は実行に移される。

　その発表は会見という形で行われるだろう。

　Jリーグは理事会後に質疑応答のある会見を開いている。時おりしも、ジャニーズや宝塚の問題で「会見のあり方」そのものに厳しい視線が向けられている2023年後半。
　その最中に、シーズン移行決定の時だけ会見なしとか、批判的な質問を封じるような小細工を、Jリーグはしないと信じたい。

　そのシーズン移行の会見の場で、記者にJリーグへぶつけてほしい質問を3つほどまとめてみた。

質問１：ACLが春秋制に戻されたら、Jリーグも再移行するのか？

　シーズン移行の議論は2017年、当時のJクラブの約8割の反対を受けて10年ほど凍結されることになっていた。

　しかしながら、実はこれには「凍結解除」の条件があった。その中の1つがACLの秋春制移行だ。
　これは今もシーズン移行に反対しているアルビレックス新潟の社長の口から語られている（※2）。だから、リーグ側の後出しではないだろう。

　であれば、何らかの理由でACLが春秋制に戻される事態になったら、Jリーグのシーズン制も元に戻す議論を始めるのが筋ではないか。

質問2：シーズン移行の効果・影響を、実施後も検証をするのか?

　Jリーグはシーズン移行のメリットとして以下の2つを挙げている（※3）。

① 夏場の試合数減により、プレイの質が向上する
② シーズン途中の欧州移籍を減らすことで、大会価値が向上する

このうち②に関しては、別項で欧州との選手・監督の移籍活性化、移籍金・放映権料の増加も目指すともしている。　

　しかしながら、いずれもJリーグ側の言っている「可能性」でしかない。思惑通りに事が進まないという可能性も、当然ある。

　それが思惑通り進んでいるのかどうか、ファン・サポーターや雪国クラブなどが被るデメリットを最小化できているのか、オープンな形で検証を進めて欲しいと思っている。

　Jリーグの進めようとしているシーズン移行が、本当に持続化可能なスキームなのか。ワタシたち反対派の主張が杞憂というのなら、実際にやってみたデータを見せて納得させてほしい。

質問3：J2・J3の経営規模拡大に具体的な道筋があるのか

　Jリーグは『次の10年』で目指す姿として、J2・J3を含めた全Jクラブの経営規模を1.5～2倍にするとしている（※3）。

　一方で、近年のJリーグはビッグクラブの創出というお題目で、分配金などをJ1上位に集中するよう傾斜配分を強めている。
　J2・J3の自助努力に頼る割合を増やしながら、経営規模を10年で1.5倍に拡大することなど可能だろうか？

　動画などでは、CWCで勝てるビッグクラブが誕生して大会そのものの価値が上がれば可能であるかのような物言いもしている。

　ただ、本邦では壮大な社会実験によって、トリクルダウンなんてものは幻であると、多くの人々が学んだはずだ。そんな「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話を信じろと言われても、困惑するしかない。

シーズン移行は、目的ではなく手段ですよね？

　シーズン移行を進めようとしているJリーグも、それを支持する側の皆さんも、良かれと思ってそれぞれ主張しているのだとは思う。

　それは反対派のほうも同じだ。デメリットを指摘しているのもJリーグの土台を支えるクラブから脱落者を生みかねない、と懸念しているからこそだ。

　シーズン移行の会見に参加される記者さんたちには、シーズン移行そのものが目的になってないよね？と釘を刺してほしいのである。

注釈

※１：「2023年度 第10回Ｊリーグ理事会後会見発言録」（2023年10月30日：Jリーグ公式サイト）
https://www.jleague.jp/news/article/26324/

※2：「Ｊリーグのシーズン移行に関する報道対応について（5月24日）」（2023年5月25日：アルビレックス新潟 公式サイト）
https://www.albirex.co.jp/news/64350/

※3：「シーズン移行の検討」（Jリーグ公式サイト）
https://www.jleague.jp/season-transition/