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中学3年生の孫息子の合唱祭が、先週、行われた~「ばあば冥利」に尽きる私

中学最後の合唱祭なのに、コロナのため「ひと家庭、1名のみの入場」で、「ばあばの私」は、会場で鑑賞することは叶わなかった。

孫息子からは事前に、どんな曲を歌うのか、学校から配られたパソコンに、音源が入れられてあり、それを聴かせくれた。

彼のクラスが合唱する曲は「ヒカリ」

「ずいぶん難しい曲を選んだね。」と私が言うと、「イントロが、ピアノの和音で一拍、ジャーンって入るだけだから、出だしを合わせるのが難しいんだ。」と彼が言った。

「もっと流れるようなメロディーの曲の方が、歌いやすいよね。」と私が言うと「別のクラスは、この曲を歌うよ。」とパソコンで聴かせてくれたのが「春に」という、作詞が谷川俊太郎さんの合唱曲だった。ご存じの方もいらっしゃるかと思うけれど、とても美しい、流れるようなメロディーの曲だ。(作曲は、木下牧子さん)

孫息子から、聴かされたこの「春に」という曲に、私はちょっと「複雑で苦い思い出」がある。

むかし「PTAコーラス」で、この曲のピアノ伴奏を、私は弾いたことがあった。ところが本番、区民ホールの大きな会場で、前奏の「出だしの音」を思いっきり「はずした」のだ。その時、指揮をされていた先生が「険し表情」で私を見たことを、今でもハッキリと覚えている。さらに「PTAコーラス発表会」は、地域のケーブルテレビで放送され、音をはずした私のピアノ演奏も放映された。

この出来事があったのは、孫息子が生まれる半年ぐらい前だった。

何気なく聴かせてくれた曲に、15年前の記憶がよみがえった。

孫息子の母親である「私の娘」は、シングルでこの息子を産んでいる。当然ながら、その当時、家族でさんざんもめた。

「春に」のピアノ伴奏をしたのが、そんな大変な時だった

だから久しぶりに、この曲を聴いて、当時のことが鮮明に思い起こされたのだ。しかも、その曲を聞かせてくれたのが、当時、娘のお腹の中にいた孫息子なのだ。

娘は、高校を卒業後、大学には進学したものの、その頃から自分自身のことがわからなくなったようだった。大学は2年で辞めてしまい、その後、仕事をしながら、彼女は自分を模索していた。それから、色んな事があって娘は、孫息子を妊娠し、「シングルで産む」ことを選んだ。
我が子が大人になれば、親としての役目は終わるのかな~と思っていたのに、その真逆で、それまで親として「経験した事がない難題」を突き付けられたような思いだった。

この頃、あまりに沢山のことがあって、何があったのかを時系列でよく覚えていない。娘に対して、ずいぶん「酷いこと」を言ったことだけは、覚えている。

息子を産んだ後も、大変なことは、沢山あった。「最低な母親だ」と我が娘に対して思うことは、何度もあった。それでも、覚悟を持って息子を出産した娘にしてみれば、ひとりで頑張るしかなかったのだ。「意地」もあったと思う。だからこそ、よくぞ「素直に育ってくれた」と、15歳になった孫息子に、私はそう思うのだ。

「春に」の楽譜を引っ張りだして、伴奏をピアノで弾いてみた。

「ここの音、外したんだよな~」と思いながら、何度も弾いた。ピアノを弾きながら、この曲のメロディーの美しさを改めて感じた。当時、一緒に歌ったママ友達の顔も、懐かしく浮かんだ。あれから15年経ったのだ。

大学を辞めてから、自分自身を模索し、藻掻いていた娘に「地に足を付けて人生を歩んでいこう」と勇気をくれたのは「まちがいなく孫息子だ」と私は思っている。だから、「ふつつか者の娘」を、今日まで支えてくれた孫息子に、私は、感謝しかない。

母親と二人だけの生活の中で、かわいそうなぐらい、幼い時から「寂しい思い」も沢山してきたのに、学校ではこんなに、立派に頑張っているんだ。娘が、LINEで送ってくれた「合唱祭の動画」を観ながら、涙が出た。

孫息子にとって中学最後の「合唱祭」は、沢山の「感動」を心に刻みながら、終えたようだ。

結果は、孫息子のクラスは2位で、「春に」を歌ったクラスが1位だったそうだ。2位という結果に、少し悔しそうだったけれど、1位のクラスの合唱は、本当に素晴らしくて「こんな感じ~」といって「春に」の「歌いだし」を歌ってくれた。

15年前、まだこの世にいなかった孫息子が誕生し、成長し「私」に話をしてくれる。また「私の話」を聞いてくれる。こんな「ばあば冥利」に尽きることは、他にはない。

中学3年の彼は、年が明ければ「高校受験」が待っている。合唱祭の次の日、日曜日だというのに朝早くから「模擬テスト」にのため、彼は出掛けて行った。

近頃、会う度に身長が伸びている孫息子に「あなたの前途は、希望に満ちている」とばあばの私は、確信している。





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