人生の湯 コラムとかエッセイとか #13

温泉に浸かることが気持ちいいことだと気づいたのはいつからだろうかと考えてみると、18歳を超えてからのような気がする。

小学生の時から、寒い季節になるとよく祖父に連れられて車に乗り温泉に行っていたが、その時は正直熱い湯に浸かるイベントくらいにしか思っていなかった。安らぎだとか心地よさなんか、打たせ湯の飛び散りの二次災害の回避に忙しく、感じることはできなかった。

少年野球の友達のお父さんに引率してもらってみんなで自宅から1時間ほど離れた温泉に行くこともあったが、その時も温泉が楽しみというよりか、ただ友達と遠くに遊びに行ける楽しさのほうがあった。それから約20年経ったが今でも"天然温泉みちしお"に行くとテンションは上がる。これから先も営業し続けて欲しい。

高校を卒業し、ひとり暮らしを始めるとひとりで温泉に行く機会がとても増えた。この頃からお湯から安らぎを得れるようになってきたのだと思う。体の不調を抱えていたことはあまりなかったので効能を気にしたことは今までないが、もしリウマチを患ったら四六時中温泉に入ることにしよう。
友達と、ちょっと温泉いこーぜーと湯船に浸かりに行くことは増えたし、ライブやフェスと温泉は切っても切り離せない関係になった。フェスの後の温泉はフェスおわりの客が全員流れてくるため、心地よいとは程遠い密集した空間になるのがかなりネックだったが汗まみれよりマシなので仕方がない。
当時の彼女と温泉旅行に行くことなんかも増えたが最初の方は、温泉ってなんか個人競技じゃない?と彼女は不満そうだった。疲れが取れたり安らぎを得れることを発見してからは彼女はしっかり長風呂をするようになっていた。
温泉の効能に、温泉嫌いを温泉好きにする効能があるのかもしれない。
温泉を個人競技と例えた人は後にも先にも彼女ひとりである。

ヨーロッパで暮らすようになって、気軽に温泉に入りにいけなくなってしまい、湯船に浸かることもほとんどなくなってしまった。日本に一時帰国をした際に入浴剤を購入し、持ち帰ってきたがいまだに使っていない。出張先のホテルにバスタブがありそうな時に持っていく予定にしている。ヨーロッパのほとんどのホテルにはバスタブはないが、ギリシャのホテルはバスタブがある割合が割と高い気がする。阿部寛のテルマエロマエの影響か?!
温泉施設の代わりにスパと呼ばれるものがヨーロッパにもあり、日本の温泉のようなものらしい。一度トライしてみたいが絶対に安らげない自信がある。そもそも全裸?水着?男女一緒?疑問と不安しかない。よくわからないまま行ったら逮捕されるまである気がする。邦人男性が意味わからない理由で捕まっていたらワタシのことだと思ってもらえると嬉しい。

2年ぶりに日本に一時帰国をした際に、何度か念願の温泉に行くことができた。
2年ぶりに会う友達と湯船で現地集合にしたら、湯煙でちょうど温泉に来ているお客さんの顔が認識できず、友達かと思ったらめちゃくちゃ似ているおじさんだったということが何回か起きてとてもおもしろかった。久々に会う人との待ち合わせ場所に水風呂をかなりおすすめしたい。

この時代に必須になったスマートフォンを唯一手放すことができ、ひとりだと頭の中の考えのみに集中したり、何も考えずに頭を空っぽにできる空間であり、友達とだと、お互いの頭の中の引き出しでしか会話できないこの空間は今後もこの形のまま維持されて欲しいと心から思っている。

そりゃじじいはみんな温泉好きなわけや。

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