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大好きだったホテルのフロントのバイトを辞めた話

先週、私は2年弱続けていたホテルのフロントのバイトを辞めた。

「いや、バイトでしょ、たかがバイト辞めたくらいの話なんて興味ねーわ」と思われてしまったらそれまでなのですが、、、(笑) 19歳から21歳、学年でいうと大学1年生から3年生という、価値観がコロッコロ変わるある意味多感な時期を費やしたと思うので、経験の棚卸的な意味でも2年弱のことをさっくりまとめていきたいと思います。

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【序章:はじめるまでの話】

バイトの面接を受けたのは、当時使っていたスケジュール帳によると2017年の1月27日。その前にやっていたチェーンの飲食バイトで店長と不仲になって辞めてから、新しいバイト先を探しているところだった。かつ、ちょうど来年からキャンパスが変わって一人暮らしを始めるタイミングだったので、新しい家の近くで探すことにした。

時給930円にも関わらずランチや土日の夜はてんやわんやで、クローズ後にはボロ雑巾のように疲れ果てるバイトを経験した私は、次はもっとキラキラした華やかな場所で働きたいという想いが強かった。あと、飲食では髪の毛を全部しまって黒ポロシャツに黒エプロンに黒スニーカーという格好だったので、少しならおしゃれをしてもよい職場で働いてみたいという想いもあった。


ちなみに当時の"次にやりたいバイト"の脳内イメージ(笑)

そこで私が候補に挙げたのはこのあたり
・ホテルのフロント
・ブライダルのスタッフ
・ショッピングセンターやデパートのインフォメーション
・きれいなオフィスで働けるなんかの事務

今思うと、特に「やりがい」とか「成長できる仕事がしたい」とかは全く考えていなかった。というか、成長できるかどうかを判断するものさしを持っていなかったという方が正しい気がする。とにかく華やかな場所で、そしてある程度若さを売りにできる仕事がしたいと思っていた。

そこで、とりあえずGoogleマップで「ホテル」と検索して、定期圏内で行けそうなところを探しては、公式ホームページから求人情報を見るという作業を繰り返した。なぜバイ○ルとかタウンワー○とかの検索エンジンを使わなかったのかは覚えていない…。公式ページの方が確実だと思ったのだろうか。とりあえず募集しているところを探し、最初に面接の予定を組んでもらえたのが、私が2年弱働いたそのホテルだった。

前提として言うと、ホテルと言っても星がついていたり有名人が泊まりに来たりするホテルではない。サラリーマンとか、出稼ぎに来ている海外の方が宿泊する、いわゆるビジネスホテル。なので私みたいな英会話力ゼロのノーマルてかそれ以下大学生でも普通に働かせてもらえる場所だった。(他のビジホのことはあまり知らないけど。)

面接なんて英検以外ほとんど経験したことがなかったので当日何も準備せずホテルに向かい、ロビーで待っている間「あ、これ志望理由とか考えといた方がよかったんじゃ…」と気付き(遅い)即興で考えて、後日無事働けるとの連絡をもらえた。

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【なにもわからぬひよっこ時代:~半年目】

働き始めて、とにかくカルチャーショック(いい意味で)が多かった。
制服は可愛いし一人ひとつロッカーがあるし(飲食時代は3,4人で共用だった)。それに一緒に働いている人がめちゃめちゃ親切…さすがホテルマン…。そして特に驚いたのが、めちゃめちゃ研修がしっかりしてること。
飲食バイトでは、

私「練習みたいのっていつさせてもらえるんですか?」
店長「そんなのないよ、やってくうちに慣れるから!」

とお冷の出し方だけ教わり初日から働いていた。
というのも自分がやることは大体決まっており
①席案内
②お冷だし
③注文とり
④食事提供
⑤会計
⑥バッシング(片付けのこと)
が大まかな流れで、突然お客さんに声をかけられても、せいぜい
「お水おかわりちょうだい」
「粉チーズ持ってきて」
「お手洗いどこですか」
とか、その程度だったので本当にやっていくうちに慣れた。
(決して飲食業をルーティンワークというわけではなく、モチベーションがなかった私にはそれくらいしか頼まれなかったのでした)

ホテルではフロントに立つまで1カ月くらい中で丁寧にいろいろ教わった。正しい言葉遣いやお辞儀の仕方からチェックイン・チェックアウトの受け方(主にホテルシステムの操作方法)、電話での予約の立て方などなど。

そして1カ月後、晴れてフロントデビューを果たしたものの、またまたカルチャーショックが待っていた。それは、


「研修でやったことと1ミリもかすってねぇ!!!」


ということ。

フロントに立ってみると、ほんっとうに色んな用件でお客さんが来る。
「この辺でどっかおいしいお店ある?」
「ここから羽田空港までタクシーでいくらくらいかかる?」
「ルームサービスのこの○○サラダって、何が入ってるの?」

んなこと知るかググレカ○!…。とはさすがに言えない(しサラダの材料はさすがにGoogle先生も知らない)ので、いつも先輩にフォローしてもらっていた。


こんな感じで、始めて半年は何もわからずとにかくメモを取り先輩に質問してメモを取り…を繰り返す日々で、あっという間に過ぎていった。

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【やる気マックス時代:半年~1年目】

半年たったころから、なんとなく仕事に慣れてきた。正直、この頃バイトが楽しくてしょうがなかった。どれくらい楽しかったかというと、もはやお金をもらわなくていいから働きたいと思うくらい。

要するに、この頃からモチベーションは完全にお金でなく「やりがい」だった。いろんな用件のお客さんが来るからこそ、それに柔軟に対応できるのが楽しい。段々自分が対応できる範囲が広がっていくのが、純粋に嬉しかった。

中でも覚えているのが、ランドリー事件。
ホテルには、クリーニングのサービスの他にお客さん自身が使えるコインランドリーが複数設置してあった。

事件はとある平日の夜、そのランドリーが設置してある階からの内線を取ったことから始まった。

私「はい、フロントでございます」
男「今コインランドリー使ってるんですけど、エラー出てきて…これどうすればいいんですか?」

うーーーーん知らんなぁ。

とはさすがに言えず。(笑) でも研修でもさすがに「洗濯機にエラーコードが出た時の対処方法」なんて教わらなかったので本当にわからず。とりあえず説明書だけ持って向かった。

到着して対応するエラーコードの説明文を読んでみると、どうやら洗濯物が偏り過ぎていて、上手く脱水ができなかったらしい。とりあえず、水を抜いて蓋を開ける必要がある。ロックを強制的に外す方法を調べると、

どうやらこの部分に秘密のボタンがあるらしい。ここを押せば開くようだった。なるほどなるほどとりあえずコンセント引っこ抜いて脱水し、よしこのボタンを押せばいいんだなと思った矢先

(これ、なにで押せばいいん…汗)

そう、あのゲーム機のリセットボタンを想像していただければと思うのだが、あれと同じ。指じゃ押せないやつ。

(でも後ろでお客さんめっちゃ待ってるしなぁ。フロント戻って探してくるのも怒られそうだなぁ…何か細くて尖ったもの、細くて尖ったもの…)

あ…!

あった。とっさに私は自分の頭にぶっ刺さっていた黒ピンを取りボタンを押し込んでみると、、、開いた。心の中で全私がスタンディングオベーションしていた。その後未使用のバスタオルを一緒に放り込んで偏りによる脱水エラーは表示されなくなり無事解決。一件落着したのであった。

このように、初めてのシーンでも、その場で頭を働かせて対処していくのが自分にとっては新鮮で、楽しかった。

もう一つ、この頃海外の方ともっとうまく対応できるようになりたいという想いから、独学で英会話の勉強をしていた。駅から家までの時間でリスニングをしたり、印刷したスクリプトを手元に洋画を字幕なしでシャドウイングできるまで繰り返し観たり…。『ティファニーで朝食を』に関しては世界観に憧れて10回くらい観た。

1カ月くらいではあったが、誰にも監視されていないのによくあそこまでやる気になったな、というより本当にやることなかったんだな…泣 と思う。

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【やる気急降下期:1年目~2年目】

特に、何が大きなきっかけだったという訳でもない。ただ、「飽きた」
それだけだった。いくら色んなお客さんが来るとはいえ、ある程度はパターンが決まっていることに気づいた頃から、毎回毎回「早く帰りたいなぁ」と思うようになっていた。

あと、入ってすぐのころは気付かなかったが、ホテル業界はまだまだアナログで、本当に非効率なことが多い。FAXで自動取り込みされる予約を紙とPC画面が一致しているか確かめる謎作業があったり、基本的に管理や引継ぎはすべて紙面で行われたり…

今働いているIT系スタートアップにジョインしてからは、なおさらその違和感が大きくなっていった。今思えば少しくらい改善案を提案してみてもよかった気もしなくもないが、たかだか週数回しか顔を出さない自分が声をあげてもしかたないだろうと決めつけていた、というか「辞める」ということを考え始めた時点で、もはや仕事を効率よくしよう、という向上心が完全に失われていたのだった。

とにかく、特に頑張らなくても、時間が経てばお金がもらえる。実際当時は金銭的にもバイトを続ける必要があったので、細々と働いては、フロントでネットサーフィンをしながら時々チェックインを受けることを繰り返していた。だれかがやる必要があるサイドワーク的なことも、ほとんどやらなくなっていた。

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【決断のとき:入ってから1年と9カ月後】

「あの、ちょっとお話させていただいてもいいですか」

退勤後、4番(タバコ休憩)に向かう社員に思い切って声をかけた。
(正直、この日は最初から最後までいつ切り出そうか見計らっていてまるでバレンタインのチョコを好きな男子にいつ渡そうかひやひやしているあの感覚と完全一致だった)

退職の話を切り出すと、案の定めちゃめちゃ引き留められた。人が足りなくて困っているという情報を小耳に挟んでいたからだ。

でも、悲しかったのは引き留める理由が、私個人を求めていることでなく、
ただ人員としてほしいという意味にとれてしまったことだった。

「人足りてないんだよねぇ」
「誰か働いてくれそうな友達いない?」

一度はこのまま就職して社員になりたいとすら思った職場。だから、なおさら「大勢の中の一人」としてしか見られていないことがショックだった。
まぁ、バイトだしそりゃそうだよね…。
その場では辞める方向で話を持っていき、後日支配人と話をすることになった。

ホテルの会議室辺りで話す気でいたが、ゆっくり食事をしながら話しましょうとの返信。

これ絶対めっちゃ引き留められるやつじゃん…

断り文句をいくつか用意しつつ、
待ち合わせ場所の横浜駅に向かい、駅近くの居酒屋さんに入った。

初めから本題に入るかと思いきや、最近私が何をしているかということで、大学にもほとんど行かず働いている話をした。
そうしたら、

「正直、今日引き留めるつもりで来たけど、そんなに楽しそうに仕事の話されたら引き留められなくなっちゃったよ」

そんなことを言ってもらえた。全然わざと楽しそうに話したとかつもりはないんだけど、そう聞こえたのかな…。

ただ一つ、言われて反省したのが、辞め方が急すぎたということ。
1週間前に言ってすぐ辞めるって、残された人にとってよいことではない。きちんとお礼も皆には伝えられなかったし、何より他の学生バイトに
「あ、言えばすぐ辞められるんだ」という意識を植え付けかねない。

それに引き換え自分は、言ってすぐに辞めるスタイルがかっこいいと思い、自分に酔っていた節まである。いかに自分中心でしか物事を考えられていなかったかを反省した。もう少し早く、心が決まった時点でいうべきだった。大事なことを言うのを先延ばしにしてしまうのはよくない。そんな反省をビールとともに流し込み、最後のお別れをして、帰路についたのだった。

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バイトを辞めたことで、土日はほぼ自分がやりたいことに時間を費やすことができるようになった。noteも始めよう始めよう思いつつ、辞めたことでようやく始めることができた。これから土日、好きに時間を使えると思うと非常に心が軽い(といいつつ平日やる暇のない仕事をやる未来がみえているのだけれど…(笑))。

今回は出来事ベースで文章を並べていっただけだけど、これからは感じたこと、学んだことを中心に書いて行けたらいいな。

明日は休憩室に人がいないタイミングを見計らって、お菓子と手紙を置きに最後のお別れに行こうかな。


なにがいいかなぁ、ヨックモックあたりかなぁ

おしまい

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