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生成AIを取り巻く環境を把握する

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
先日、OpenAIによる生成AIがついに動画も生成するという発表がなされました。
実際にビジネスの現場でも、テキスト生成AI等を活用している層が増えているのではないでしょうか?

本日紹介する一冊はこちらです!


目次

第1章 AIの概要
第2章 生成AIの誕生と現在までの系譜
第3章 現在の生成AI(ジェネレーティブAI)の動向
第4章 インターネットリテラシーと権利関係
第5章 AIに関する基本理念・社会原則・ガイドライン
第6章 テキスト生成AIに関するプロンプト
第7章 生成AIパスポート模擬問題


現在のAIは「限定的な専門家」である

「生成AIパスポート」とは、生成AI活用普及協会が定めた資格制度。生成AIを活用する際に求められる簡易的なスキルを、広く可視化するためのものです。生成AIによる成果物の法的規制は、現在グローバルでの大きな課題のひとつともなっています。「生成AIパスポート」は、AI活用のテクニックだけではなく、そうした法的規制に関する基礎知識もおさえることのできる制度です。

本書では、章構成のとおりAIの背景からその発展の歴史、現在の生成AIのトレンド、法的・社会的規制を踏まえて実践編へと移ります。
各章のおわりには「確認問題」とその回答・解説があり、各章の振り返り学習にも役立ちます。

例えば、第1章第5節での「AIの種類」。みなさんは現在のAIの姿と将来のAIが目指す姿について、その違いをご存じですか?

ANIは、「専門家」のようなAIで、ある1つの分野ではプロフェッショナルですが、それ以外のことは基本的にはできないという特徴があります。たとえば、チェスをプレイするコンピュータ(チェスプレイヤー)や、音声をテキストに変換する音声認識システムなどが該当します。ANIは、それぞれのタスクには非常に優れていますが、チェスプレイヤーが別のゲームでうまくプレイすることや、音声認識システムが画像を分析することはできません。 他方、AGIは、何でもこなせる「多才な天才」のようなAIで、学習、理解、推論、計画など、人間の知能が持つ多様な能力を持ちます。人間のように新しい環境や状況に適応し、さまざまな問題に対処する能力を持ちます。 なお、現時点ではAGIは存在しませんが、将来的に求められているコンセプトがAGIです。

P40(太字は本記事の執筆者による)

現在の生成AIは、分野ごとのANIが数多く存在し、精度向上の過程にあるといえるでしょう。AGIの登場は、本当に人類の社会を激変させるかもしれませんね。

AIの成り立ち

我々が現在「生成AI」と呼んでいるテクノロジーは、さかのぼること1980年代後半の「ボルツマンマシン」に端を発すると解説されています。

この第1節では、生成AIの祖となる多くの基礎技術(CNN,VAE,GAN,RNN,LSTMなど)が解説されます。
そして、生成AIの名を一躍広めたChatGPTの概要が第3節に続きます。現行バージョンのGPT-4と、ひとつ前のGPT-3.5では、ハルシネーション(AIが、誤った情報を正しい情報であるかのように生成してしまうこと)のパーセンテージが最大30%程度減少したのだそうです。

感情もトレースできる?

テキストだけではなく、現在は画像や動画も生成AIの領域となっています。
第3章では現在の生成AIの使われ方を解説しています。
その中で驚いたのが、以下の音楽生成AIに関する記述。なんと、「人間のリスナーからのフィードバック」なる記載があります。

SUNO AI等のように、楽曲のイメージテキストをプロンプティングするだけで適切なクオリティの楽曲データが生成されてしまう現在、リスナーがその楽曲を聴いた際に心の動きも、AIでトレースされてしまい得るのですね。

「AI成果物」をどう扱うか

これだけ多岐にわたる出力が可能となる生成AIにおいて、既に議論の焦点となっているのが法規制との関連性です。
個人情報保護、知的財産等の観点からは、生成AIによる成果物の法規制が未整備であることが問題とされてきました。
EUでは2023年12月に「生成AI規制法案」(筆者による略称です)も案出されたことから、この潮流はグローバルでも強化されていくと思います。

本書でも第4章では各法分野と生成AIとの関連性が解説されており、特に不正競争防止法違反に関する規制整理はなるほど、と思いました。

「プロンプト」とは何か


第6章では、我々が生成AIを使う上で欠かせない「プロンプト」が解説されます。プログラムのコマンドとは異なり、プロンプトには特定様式がありません。適切なプロンプティングを行えば、生成AIからの出力は向上します。そのための4つの条件が、次の表です。


本書は「生成AIパスポート」取得のための解説書という位置づけですが、現在における生成AIを取り巻く環境を把握するための一冊としても大変優れています。日常的に生成AIを使っている方、また興味のある方であれば、一読をおすすめします。

最後に、「テキスト生成AIの不得意なこと」。意外かもしれませんが、文字数を指定して回答を求めたり、計算分野は今の生成AIではまだ不得意とされているんですね。

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