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九州一人旅③ 唐津に家族ができた話

一人旅②で書いたように、お店で出会ったお客さんたちにすっかり誘拐されてしまった。
シェフのお店でランチを食べ、小学校で演奏し、お客さん達の家族と会うことになった夕方頃からの話。

お客さん二人は私とシェフが話をしているうち、私のTwitterアカウントを見つけだしていた。ネットってすごい。
東京からやってきた若いピアノ弾きが来るというので、それぞれのお子さん達にLINEがいった。みんなびっくりしつつも、大変な喜びようだったらしい。
小中学校帰りの3人を順に拾ってしばし観光。最初は他人行儀だった彼らもすごくはしゃいでフレンドリーに喋ってくれた。

虹の松原や鏡山に車で連れていってもらう。
海を走り回ったのはいつ以来だろう、屋久島の筋肉痛が地味にきている。

鏡山から見る絶景。
旅をするといつも空は晴れてくれる。

車の中で、後ろに乗る子供達に質問攻めされた。
自分が続けている音楽のこと、東京のこと。音楽をやっている彼らは興味深々なようで、座席から身を乗り出して聞いてくれる。唐津のことも沢山話してくれた。親子5人でご当地の色々なものを教えてくれる。

それぞれのお父さん達、ご実家のおじいちゃんおばあちゃんと、結局8人で私を迎えてくださることになった。車内でお母さんは焼鳥を80本注文。あっけに取られている私に、唐津では5本ずつ頼んでこれくらいが普通よと教えてくれる。むしろ東京では2本ずつ頼むことに相当驚いていた。
ご実家では刺身を用意してくれていたみたい。スーパーでたくさんのお酒と(私は九州に来て今まで苦手だった焼酎がすっかり好物になっていた)、子供たちのソフトドリンクを買い込む。

お家に着き、おじいちゃんおばあちゃんが迎えてくれた。当たり前の話だが事の顛末を理解するのに苦しんだようで、長い話をしつつみんなで食卓を整える。子供達はそれぞれの家に一旦帰り、私に弾けと差し出す楽譜を取りに行っていた。お父さん達も仕事から帰ってくる。

宴会が始まりそうな頃、先にピアノを弾いてと子供達にせがまれた。さっき厳木小学校で弾いた曲を弾いたり、卒業式で弾くという合唱の伴奏を初見で弾いたり。40年物のアップライトだが、ちゃんと良い音が出るんだと皆さんびっくり。そんなに調子が良かったわけではないけれど、小学校で弾いた時以上に喜んでもらえて私も感動した。

音楽の力がどうとか言うのは好きでないし、もちろん万全な状態でいつも演奏したいけれど、このような経験は自分にも新鮮。近い距離で聴いてもらえて、人ってこんなに感動するんだ、と思わんばかりの顔を見せてもらえるのは実に嬉しいものだった。

その後は子供達2人にワンポイントアドバイス。

革命のエチュードを頑張っているそう。

そんなこんなで、宴会はすごく盛り上がった。
ちょっと教えただけだが、ふだん練習嫌いな男の子は焼鳥に目もくれず、練習をしまくっていた。

勧められるがままお酒を飲み、買ってあったお酒やお猪口をプレゼントしてくださることになった。一人旅でぶらぶらするより何倍も楽しかったと思う。

貴重な限定酒。
これ、めちゃくちゃおいしかった。

みんなで集合写真を撮る。皆さん家族のように私を迎え入れてくれて、子供達はもはや弟妹だし、たったの数時間でずいぶん仲良くなれた。こんなことになったのをシェフが知ったら驚くだろう。

すっかり遅くなってしまったので博多には行かず、近くのホテルに泊まる。翌日、お母さん方に唐津や糸島を案内していただき、空港まで送っていただいた。本当に素晴らしい出会いで、私もきっとまた会いに行くんだろうなと思いつつ、東京に戻った。

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