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遠巻きにみつめる

ドーナツは冷凍保存すればほとんど買った日と同等のおいしさを維持できるとはじめて知って、インターネットありがとう! と久しぶりに本気で思った。ドーナツショップに行って、一日で食べ切れる個数ならどいつを持って帰るのがベストな選択かどうかショーケースの前を犬みたいに行ったり来たりしながら吟味して買わなくてもいいというのはうれしいこと。オールドファッションとチョコファッションを同時に買っていいというのはもはや革命並みである。似てるからってどっちかをベンチ入りさせるのは不憫だと常々思っていたのだ。冷凍庫にはご丁寧にラップにくるんだドーナツがいまも3つくらい眠っている。毎朝ひとつづつ起こしていただく。

天気予報は外れてばかりでうんざりする今週だった。雨の日も必要とわかってはいるけど、むわっとじめじめした雨の日はさすがに好きじゃない。春になったから履こうと思って出したフラットな白いスニーカーがみるみる薄汚れていくので、来週くらいに洗わなくちゃと思う。冬物をクリーニングにも出さなくちゃと思いつつ2週間くらい経った。なんでもない用事のために外へ出るのがほんとうに億劫。いっとき好きで通っていた近所の花屋にもあまり行かなくなってしまった。春は眠たい。頭も痛い。

仕事で訪れた街をぶらぶらしていたら、おそらく学校帰りであろう、ランドセルを背負ってひとりで歩いていた小学生の女の子に、すれ違う街の人たちが「おかえり」となにげなく声をかけていてちょっと感動した。移住者が多い街だと聞いていたが、こういう土地柄にあこがれて、住みたいと願う気持ちはわからなくもなかった。じぶんの子どもがこんなふうに日ごろから見守ってもらえるとわかったら安心だ。いやな出来事ばかり目にするけれど、なるべく他人を信用していたいなと思う。人生のしかるべき瞬間でふりかえった時に、他人からもらったよいことの総量が多ければうれしい。むろんそれを与えることも。

テレワーク講座、みたいな今更すぎるベリーどうでもいい会社指定の講座をむちゃくちゃ忙しい日の真っ昼間に2時間も受ける羽目になって、「テレワーク中にはどんな気分転換をしたらいいと思いますか」とかいうベリーどうでもいい質問を投げかけられ、「タバコでも吸ったらいんじゃないすか笑」という瞬間最大風速のイキりをかましてしまったことをちょっと反省している。他人へのやさしさはどうした。2時間ぼんやり座っているだけでサラリーが発生するんだから儲けたと思わなきゃダメだ。いや、やっぱりその2時間早く帰りたかったかもしれないが。支社のおじいちゃんが、「気持ちを切り替えるために朝、庭でラジオ体操をしています」と言っていてなごんだ。全体的に牧歌的なのが弊社のよいところである。

5月の文学フリマにエントリーしたのに新刊をつくる気力がまったくわかない。でも作ってみせます。意外とじぶんのことでもどんどん忘れていくもので、ここ数年で書いてきたものをちゃんとまとめておくのもおもしろいことだとわかった。きっととりとめない1冊になると思うけれど、なにより黙々とものをつくるのは楽しいのでやめない。




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