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赤字商品なのになぜ売れる?不動産Gメン滝島に学ぶワンルーム投資の実態

「不動産Gメン滝島」というYouTubeチャンネルがある。これがめっぽう面白い。

滝島氏は新宿で不動産会社を営む経営者であるが、その独特すぎる容貌からは想像できない、達者かつ熱量のある語り口でたちまち人気を博し、2024年2月時点のチャンネル登録者数は40万人に達しようとしている。個人が運営している不動産投資系YouTubeチャンネルとしては、ぶっちぎりの人数だ。

つい先日、息子の胃腸炎を移されて床に伏せていたときにたまたまこのチャンネルを見つけたのだが、あまりの話の面白さに夢中になってしまい、それ以来公開されている動画はほぼすべて見てしまった。

滝島さんのYouTubeチャンネルの中でもダントツの人気を誇るコンテンツ、それがワンルームマンション投資だ。滝島さんによれば、いまのところ業者が勧めるワンルームマンションで投資に見合う価値のあるものは一つもないという。それにもかかわらず多くの人が数千万円ものローンを組んでワンルームマンションに投資し、その結果として人生を棒にふるような借金を背負ってしまっている。これからの未来を背負うべき若者に負債を押し付けることは国にとっての損失だ。滝島さんは怒り、嘆き、ワンルームマンション販売会社に辛辣な意見を投げかける。同業者にも関わらず忖度せずに真実を語るその姿が、これほどまでに人気チャンネルとなった理由であろう。

それにしても、である。絶対に儲からないと断言までしているワンルーム投資に、なぜこれほど多くの人が惹かれ、そして騙されるのだろうか。滝島さんの動画を見ていると、ワンルーム投資には一定の型があることに気づく。そこで今回は、ワンルームマンションという商品がどのように販売されているのか、私なりに理解した内容を整理したいと思う。

なお筆者には不動産投資の経験はないこと、本記事内において不動産投資の勧誘をすることは一切ないことを付け加えておく。ここに書かれている情報の正確性については読者の判断に任せられるが、興味を持った方はぜひとも滝島さんのYouTubeチャンネルの視聴をお勧めする。

ワンルームマンションとはどのような商品なのか

サラリーマンとして安定した収入はある程度はある。さりとて思い切り贅沢できるわけでもなく、貯金があるわけでもない。年金は当てにならず、将来に不安がある。ストレスの多い仕事から解放され、自由な人生を歩んでみたいとも思っている。投資用ワンルームマンションというのは、こうした人に向けた商品である。

販売価格はおおよそ2千~3千万円程度。決して安い金額ではないが、ローンを組めば年収500万円程度の会社員でも手に入れることは可能だ。頭金は入れず、フルローン、金利2%くらいで35年かけて返済する。そうすると、月々の返済は10万前後になる。

一方で収入はどのようになるか。投資用なので自分が住むわけではなく、賃貸に出して家賃を得る。これがワンルームが生み出す収益だ。ではどのくらいの家賃が取れるか。借金の返済が毎月10万円であるなら、10万円以上ないと黒字にならない。ところがほとんどの場合、ローン返済と家賃額はほぼ同額になる(そのように商品設計されている)。そんな馬鹿な、それでは全く儲からないではないか。そのとおりである。

それどころか、マンション管理費などの諸経費や不動産関連の税金を支払うと、月々の支払いは赤字になることが多い。赤字額は月2万円弱くらいのことが多いが、この金額は所有すればするほど拡大していく。マンションが古くなれば維持管理のための費用が増えるし、それと反比例して家賃額は減少していくからだ。

投資用とうたっておきながら、買った瞬間に毎月の手出しが発生する。それがワンルームマンションという商品である。このような摩訶不思議なものであるにも関わらず、資産形成したいと考える人々が買っているというのは、なんとも奇妙なことではある。

赤字の商品をどのようにして売るか?

いまわたしは「ワンルームマンション投資は儲からない」という前提から議論をスタートしている。だから毎月赤字の商品を「摩訶不思議」だと言える。しかし、これは答えを先に聞いてから問題を解きにいくようなもので、フェアではない。ワンルームマンションで資産形成できます、というセールストークを前提知識無しで聞かされたとき、冷静でいられるだろうか。そもそもワンルーム業者は一体どのようにして赤字の商品を売りつけるのだろうか。

ワンルームマンションは投資商品として優れているという議論からスタートする場合、その根拠として挙げられるのが「節税」と「将来の資産価値」であることが多い。

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