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大阪の食と心の旅 ― 「551蓬萊」という名の饅頭物語

口腹の欲求と心の旅が共存する街、それが大阪です。この街で、特に私の注目を集めたのが、饅頭の店「551蓬萊」。昭和20年(1945年)に始まった「551蓬萊」は、羅邦強氏と彼の3人の台湾のパートナーにより大阪難波で創立された「蓬萊食堂」から始まりました。初めての時期には、彼らは主にカレーライスを提供し、食料が乏しかった当時、一世を風靡しました。



しかし、その繁盛も長くは続かず、次第に人気は衰退しました。そこで彼らは自問自答を始め、新たな看板商品をどうするか考えました。その答えは神戸の南京町からやってきました。そこで販売されていた「豚饅頭」が彼らに新たなインスピレーションを与えました。ただし、彼らはその豚肉の饅頭をそのままコピーしたわけではありません。日本人の口に合うよう、新しい味付けをし、豚肉と玉ねぎだけを具材としました。



この改良版の豚饅頭が昭和21年(1946年)に発売されると、すぐに人気商品となりました。そして翌昭和22年(1947年)には、店頭で即席調理を始め、焼き立ての豚饅頭が帰り道のお土産となりました。さらに、自家製のからしを添えて提供することで、一層の風味を加えました。この自家製のからしは今も工場で毎日作られており、防腐剤は一切使用せず、豚饅頭と同じ新鮮さを保つことができています。



台湾でもこの特別な豚饅頭はブームを引き起こしました。羅邦強氏の甥、羅伯揚氏は彼の励ましを受けて1984年に「蓬萊」という名前のハンバーガーショップを開設しました。マクドナルドが台湾に進出した時、蓬萊ハンバーガーショップは店頭でハンバーガーを調理し始めました。自家製のパンに肉パテ、刻んだ玉ねぎとキャベツを添えた彼ら独自のハンバーガーは、30年以上にわたり嘉義の人々から愛されてきました。しかしこの店は2020年に閉店し、人々の心に美しい思い出として残りました。



「蓬萊ハンバーガーショップ」が閉店したとはいえ、「551蓬萊」は今でも豚饅頭の手作り製法を守り続けています。毎日約3トンの豚肉と4トンの玉ねぎを使って作られる、それが彼らの秘密であり、これらの美食が人々を引きつける理由です。食材の新鮮さ、調理の精緻さ、そして長年受け継がれてきた伝統的な手法は、この美食がただの食事ではなく、深い感情と文化の継承の象徴であることを示しています。



「551蓬萊」の物語から、美食がいかにして異なる文化や時代を繋ぐかを感じ取ることができます。大阪であれ嘉義であれ、豚饅頭であれハンバーガーであれ、同じような情熱とこだわりが見られます。それこそが私たちの美食への追求であり、また、それこそが私たちの生活への愛着なのです。

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