JAMのある風景

「ごめん!9時に着く!」
ライブハウスへ向かう電車の中で、僕のポケットのiPhoneがけたたましく震えた。
通知欄にはLINEのアイコンと、まんたろうの文字。
東新宿のマクドナルドを通り過ぎ、今日もJAMには2分前の到着。
軽く会釈をしながらフロアに入り、さっとセットリストに記入する。

9時に駅に着くなら、リハーサルに間に合うか。

そんな事を考えながら、もう一人、まだ連絡がないものの名前を思い出していた。
伝説くんだ。
彼からの連絡はいつも少ない。
けれどきっと時期にくるはず。

そう信じながら、ギブソンのギターのチューニングを済ませた。
案の定、二人はリハーサルよりも前に来た。
急いでシールドとギターを出すまんたろう。
伝説くんもいくらで買ったかは分からないご自慢のスネアを取り出し、意気揚々とステージに向かおうとしている。

しかし、今この時点で、この後今日起きる大事件を知るのはこの僕だけだ。
「今日は、ききビール選手権をやりまーうっす。」
そう言いながら石塚さんは僕のケツをきゅっとひねった。
いつもの合図だ。

今日は荒れる。

そう確信しながら、
各バンドから二人選出しなければならない「ききビール選手権」の参加者の欄に、私は二人の名前を書きなぐった。

続く。

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