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顧客にまっすぐ向き合うと、幸せになる

2019年を振り返ってみると、仕事を通じて「幸せ」を感じることが多かったと感じています。

わたしは企業の顧客の体験価値(CX=Customer experience)向上のコンサルタント。「顧客アンケート」を使って企業のファンを増やす仕事です。ファンになる顧客を増やす過程で従業員の仕事に対する熱意も高める効果もあり、収益・利益が効率的に向上します。

まずクライアント企業に「顧客にまっすぐ向き合う」ノウハウやテクニックを伝え(最近はここに専用ツールを使うケースが増えています)、次に顧客の声からわかった強みと課題を共有し、改善の取り組みを導入してよりよい結果を出す、というのが基本の手順。

やっていることは顧客接点の業務変革ですが、クライアントとクライアントのお客様との関係性が変わると(売上や利益が上がるだけでなく)エモーショナルな反応もたくさん聞こえてくるようになります。

お客様がわたしの対応に感激してくださって、
「娘が大学を卒業したら、ぜひこの会社に入社させたい」
とおっしゃってくれたのは、びっくりしましたし、嬉しかったです。
(アパレル企業)
お客様に何気なくお伝えしたことだったのに、
「それを言われてとても感激した」というフィードバックを頂いたんです。
それからはお客様の感動のツボはここだったのか!
と、接客トークを変えました。
また他にもそうした私たちの気付いていないお客様が感動するツボがないかとフィードバックをみんなで研究するようになりました。
(百貨店)

わたしたちコンサルの仕事の半分は「経験や伝聞によって蓄積されたノウハウやテクニックの伝授、それらを行使しての実行サポート」です。サーベイの設計や分析、判明した事実をもとにした行動デザインの手順など、クライアントから明示的に要望される仕事のほとんどはこの領域のものになります。

そしてもう半分は「実際に起こったことの取材と抽象化」で、様々な成功事例や失敗事例をインタビューし、時に既存のノウハウやテクニックに照らし合わせながら新しい知見や知識資産を追加・更新すること。コンサルティングの仕事の質を上げるための地道な作業です。

クライアントがコンサルティングサービス会社に求める価値は圧倒的に「ノウハウやテクニックの伝授」パートのものですが、常にアップデートし続けなくては陳腐化してしまいます。また、複数のクライアント案件を比較することで「隠れた重要項目の発見」をすることもあります。コンサルの立場でないと提供できない知見です。「取材と抽象化」の作業は地味ながら欠かせない作業なのです。

2019年は、アウトプットとインプット、ふたつの仕事ががっちりと噛み合うようになったことを感じました。そして顧客体験価値(CX)向上のループが回りだすと、際限なく関係者の「幸福」が連鎖することも実感しました。

まずクライアントの顧客はよりよい体験やサービスを得られるようになります。購買は単なる商品やサービスの取得行為ではありません。購買プロセスを通じて自分にぴったり合うものを知ったり、関連知識を増やしたり、生活の不満や不安を減らしたりしているのです。時には感動をもたらすこともあります。

そうした感動体験は顧客をファンにすると同時に、従業員に対するポジティブなフィードバックとなって返ってきます。顧客からお褒めのフィードバックを得たクライアントの従業員は、仕事の喜びを実感し、モチベーションを高めます。

労働者は賃金のみに働くにあらず。「自分の仕事は、こんなふうに顧客や社会の役に立っているんだ!」という気持ちを持つと、仕事に向き合う姿勢が大きく変わるのです。

お客様からたくさんのよいフィードバックを獲得すれば、当然、上司や周囲からも褒められるので、これまたうれしくなります。そしてその前向きな気持ちが次の顧客体験価値を改善する行動につながってゆきます。

基本的な施策はお客様にサーベイ(アンケート)回答してもらうことなのですが、そこに真摯に向き合う文化ができると、従業員ひとりひとりが「わたしたちが顧客に提供できる価値はなんだろう」と考えるきっかけになってゆくのです。

アルバイト従業員が
「わたしたちがお客様に提供できる価値は・・・」
と熱弁するのを見て、役員の中には涙を流すものもいました。
お客様のフィードバックを現場にきちんと届けると、人はこんなにも成長するんだと驚きました。
(アパレル企業)

ひとりひとりのスタッフの行動改善が「ハッピーなお買い物」「ハッピーな働き方」「ハッピーなブランド」を創造するピースになってゆき、成果として、企業は経済的なハッピーを手に入れます。すばらしい!

冒頭で、仕事を通じて「幸せ」を感じることが多かった、と書いたのはこのことなのです。わたしたちの支援や働きかけによって、クライアントの関係者全員が笑顔になってゆくのを見られるのは、喜びであり、幸せです。

「顧客にまっすぐ向き合うと、みんなが幸せになる」という確信を得ました

もちろん多くの企業は顧客に「それなりに」向き合っていると思います。けれど、「まっすぐ向き合う」ができないと、お客様も従業員も化学反応を起こしません。上で書いたような幸せを感じるループが発生しないんです。

逆に「顧客にまっすぐ向き合うようなしくみ」を導入すると、お客様も、従業員も、経営者も、わたしたちのようなサポートする企業のスタッフも、幸せを感じる場ができあがってゆきます。

顧客フィードバックの体制を導入してから2年、お客様からの評価や売上金額が向上したのはもちろんですが、「我が社が大好きだ」と回答する社員の数が約8割になりました。離職者が減ることで採用や教育のコストも下がって利益が増える。すごくよいサイクルができたのです。
(アパレル企業)


「顧客にまっすぐ向き合える」か?

さて、2020年。日本のメディアは「オリンピック・イヤー!」と認識しているところが多いようですが、海外のメディアを見ると「新しいディケード=2020年代の幕開け!」としているところが多いようです。

10年後の2030年に振り返ったとき「新しい価値観が従来の価値観を塗り替えたタイミングだった」と語られる話題のひとつに、"企業と顧客・従業員との関係" が挙がるようにしてゆきたい、と切に願っています。

過去10年、2010年代を振り返ると、企業と顧客・企業と従業員の関係については「ひどい!」例が多かったように感じます。

2019年12月には顧客を騙すような手口を駆使して巨額の保険金を稼いだかんぽ生命トップの交代や営業停止の処分が発表されました。「保険の不適切販売」と言われていますが、目標達成のため、成績のため、お年寄を騙すという営業手法は詐欺・組織犯罪レベルで謗りを免れないのではないかと思います。失った信用の回復には長い長い年月が必要になるでしょう。「顧客にまっすぐ向き合う」を意識できていれば、回避できたのではないかな、と思います。

「ブラック企業」は2010年代を代表するキーワードのひとつです。従業員のやりがいを搾取しその犠牲の上に利益を獲得するという経営方針、今だけトップ層だけウハウハできればよい(現場の社員はどうにでもなれ)という、まるで人間焼畑農業のような経営をする企業が次々と明るみに出てきました。

経営者はさまざまな言い訳をしていましたが、2020年を迎える前に、多くのブラック企業では離職者増と就業希望者減、評判下落による売上減というしっぺ返しを喰らいました。

働き方改革の大号令もあって、ぱっと見は「ホワイト化」した企業も多いようですが、単に就業環境がよくなれば売上が向上するわけではありません。就業環境の向上と「顧客にまっすぐ向き合う」しくみづくりが従業員を輝かせます。

2010年代の負の教訓を踏まえて、2020年代の経営者は顧客・従業員との関係性構築にもっと知恵を絞るようになるはず、と信じています。それは、顧客だけでなく、従業員をもファンにして、応援される企業を目指すということ。販促やら福利厚生やらお金の力にモノを言わせて成長する時代は過去のものになったのです。SNSによって表も裏も丸見えになる時代、関係者みんなとよい関係を築くことが最大の差別化施策になるのです。

そして、おもしろいことに、そうした組織を作るのに巨大な資金や巨大なプロジェクトは不要なのです。さっくりお手軽に始めて、2年程度の期間で変化を実感できるのです。これこそ、まさにICTの恩恵!

「顧客や従業員の声を聞き、経営と現場にフィードバックする」というフローをサポートする専用ツールはコストも手間もこの数年間で劇的にリーズナブルになりました。導入検討を諦めたという経営者はあらためて検討すべきチャンスです。

背景には2010年代に米国や新興国の企業が数多くのチャレンジが繰り返され、成功のノウハウやテクニックが蓄積されたこと、必要な機能がWebサービスでツール化されたこと、わたしたちのようなコンサルタントの経験が増えたことなどがあります。

日本でも成功事例は増えています。「CXは日本では通用しないのでは?」という不安は杞憂でした。フルスロットルで踏み込んでいいタイミングです。

Customer eXperience(CX=顧客体験価値)の向上とかEmployee experience (EX=従業員体験価値)の向上とかいう言葉を使うと、なんとなく流行りモノっぽく感じられると思います。それは否定しません。

けれど、その本質は「顧客にまっすぐ向き合う」という企業姿勢なのです。それができれば、自然と従業員にもきちんと向き合うことができます。そして結果、仕事がうまくいき、みんな、幸せになります。

今年、2020年はCX⇆EXが、もっともっと注目される年にしてゆきたいと考えてます。記事を書いてゆきたいです。

そんな気持ちを込めて、noteをエントリーしました。

中谷健一

トリムタブジャパン 代表

CXやEXについての質問、いつでも受け付けてます。


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