養生テープと台風と
まず、ブルーシートが欠品した。
次にロープ。
そして窓ガラス飛散防止フィルム。
プチプチ君やダンボール、養生テープ、それから板状のものなら、木でもアクリルでもポリカーボでも。
ホームセンターでは、代用品の代用品の代用品が手に取られていく……。
養生テープを窓ガラスに張るということ
どうやら、メディアでガラス飛散を防ぐには養生テープがいいと報じられたらしい。
実際、窓にテープを張るのは効果的ではある。僕はその「メディア」がなんと報じたかは知らないが、どうも窓にテープ跡が残らないとか言ったらしい。
しかしそれは誤りである。
正確には「残りにくい」。
つまり状況によっては残るし、まして透明な窓ガラスだとしたら、多少の糊残りが目立ったり、張った部分に汚れが付きやすくなる、という事態が起こりうることだろう。
売場の人間なら周知の事実だ。なぜなら、商品を並べる陳列棚の仕切りに使う板を固定するとき、養生テープを使うからだ。
そして商品の入れ替えをする際、仕切り板を外す、つまり養生テープを剥がす。
そのとき、大抵、陳列棚にはテープの後が残る。
そういうものなのだ。
もちろん、張ってすぐに剥がせばその危険性は少なくなる。
しかしながら、養生テープは熱と紫外線に弱い。
熱によって糊の粘度が上がり、紫外線によってテープ繊維が脆くなる。
台風が過ぎるから台風一過。さんさん降り注ぐ太陽の光がまぶしい。
そんな状況下、窓にひっついた養生テープはなにを思うだろうか?
養生テープの特性を理解した上で張るのであればありがたい。
そうでなくても、自己責任で施工するのであれば大変素敵なことである。
だが、養生テープを魔法のテープだと盲信して使うのだけは、お願いだから控えたほしいと、ホームセンター販売員の立場として、思うのである。
きっと、魔法がとけた途端に、彼らは悪魔に惑わされていたことを他人のせいにすることだろう。
養生テープは、魔法のテープではない。
塗装が付いてほしくないところを覆うシートを仮止めするためのテープだ。
糊残りは確かに少ないし、ガムテープと比べようもないくらい、その特性は際立っている。
しかし、これは窓ガラスの飛散を防ぐためのテープではない。
(さらに言うと、これを張ればガラスが強化され割れなくなる、なんてこともあり得ない。でもたまに問い合わせがある)
これを書いている間に、最後の養生テープが売れてしまった。
次はガムテープが品薄になっていく。
「一日くらいなら大丈夫でしょ。剥がしても跡残んないよね?」
そう訊かれた。
哀しいけれど、ガムテープは思うほど親切には剥がれてくれない。
防災とタピオカミルクティー
とはいえ、僕は世間への嘆きを吐露したいわけではないのだ。
そもそも、養生テープが欠品することなんて一度たりともなかった。
(特に当店の塗料担当は「養生テープが欠品したら仕事辞める」と宣言するほどこの商品が欠品にならないように魂を注いでいたし、それほど塗料関連施工の基礎商品なのだ)
それが欠品したということは、先日千葉県を中心に猛威を振るった台風15号ファクサイの教訓が活かされているということだ。
大勢の方が災害が起こる前に備える。こんなの、ホームセンターにそこそこ長く勤めているけれど、めったにない。初めてといっていい。
驚きと素敵さと、そしてホームセンターマンとして、これに充分な対応ができなかった自分が悔しい。
我々は教訓を活かしている。
……いや、もしかしたらそれは幻想かもしれない。
もしかしたら、単純に我々がメディアに鵜呑みにし、踊らされているだけなのではないだろうか。
つまり一種の流行りみたいなもので、つまるところタピオカドリンクだ。窓ガラスを飛散させたくないというより、みんな買ってるから養生テープを買うのだ。
(窓飛散防止を真剣に考えているならば、あらかじめ窓に飛散防止フィルムが張られているだろうし、あるいは養生テープの備蓄があってもいいだろう。
養生テープというものを知らなくても、ある程度熟練したホームセンターの販売員に尋ねれば、候補のひとつとして案内されるはずである)
ただ、いつものように台風が過ぎてから波板や波板に打ち込む釘が欠品するよりかは、まだましなのだろう。
これがメディアに踊らされた我々の喜劇であるならば、それで構わない。
これで知識がつくのであれば、いくらでも喜劇役者になってやる。
・養生テープは魔法のアイテムではない。
・直前に備えたところで手遅れになる場合が多い
だからそう、日頃の備えというのが大事だというメディアの呼びかけに、今から躍り狂えたらそれでいいのだ。
なにはともあれ、お客様と、このnoteをご覧になった皆様がどうかご無事であることを祈ります。生きて、生きて……。
20191013追記
窓から養生テープを剥がしたとき、また布粘着テープを剥がしたとき後が残ってしまった……。
そんなときは、「粘着材はがし」「シールはがし」などをご利用ください。
ただし、相性によっては窓ガラスや窓枠を傷める場合があるので、まずは目立たない部分に付けて様子を見るといいです。
どうかいつもの暮らしが少しでも早く戻りつつ、
このnoteを読んだ方が、なんでもいいので、
日頃からの対策をされるようになれば、幸いです。
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