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Victory Over the Sun - Dance You Monster To My Soft Song!


おいら、この世で嫌いなやつランキングの上位に、ハンター・ラヴェンナ・ヘンドリックス率いるLiturgyを聴いてもいないのにLGBTQやジェンダーにつてを語るラディカル・フェミニストがランクインしてて、というのもオレゴン州はポートランドを拠点に活動するドイツはドルトムント生まれのVivian Tylinskaによる独りブラックメタル・プロジェクト、Victory Over the Sunの4thアルバム『Dance You Monster To My Soft Song!』の何が凄いって、彼女と同じトランスジェンダーの女性であるラヴェンナ・ヘンドリックスが提唱する“transcendental black metal”の系譜にある(自身でオマージュを公言している)、いわゆるトレモロ・リフを主体にデプレッシブな自傷性を内包したDissonant系のブラックメタルと、グラスゴーのAshenspireさながらのヴァイオリンやトランペットを駆使したアヴァンギャルド・メタルという二つのトレンディな要素を大きなバックグラウンドとしながらも、時にサイケデリック・ロックや初期のLiturgy譲りのマスコアを装いながらプログレッシブ・メタルとして楽曲を構築していく、その一方である種のハイパーポップ的な超越性を垣間見せるThouやChat Pileに肉薄するカオティックなノイズ~スラッジの轟音がインディーズ・メタル仕草を極めている。

荒涼感溢れるメロブラとしても聴かせる、Dissonant系ブラックメタルの邪悪ネスを撒き散らす前半~ジャズ味のあるメロウな中盤~素っ頓狂なアヴァンギャルド~サイケデリック・ロック~ポストロック的な後半で構成された17分弱の超大作プログレ・メタルの#1”Thorn Woos The Wound”、イマドキのノイズを象徴するChat Pileばりのスラッジーな轟音とサイケデリックなシンセが混沌を呼び込む#2”WHEEL”、Liturgyの影響下にあるマスロックやポストロック的なリフメイクとアヴァンギャルド・メタルならではのチェンバー・サウンドが融和した#3”The Gold of Having Nothing”、プログレッシブな変拍子を効かせたブラックメタルのパートとダンジョン・シンセ味のある古き良き香港映画風のメロディが瞬くメルヘンチックなパートが複雑怪奇に交わる#4”Madeline Becoming Judy”、ブラックメタル由来の邪悪ネスと#2の延長線上にあるノイズ/スラッジ由来の歪んだ邪悪ネスがスクラムを組んだ#5”Black Heralds”まで、同じトランスジェンダーとしても音楽的な面でもLiturgyから受けた影響を我流に噛み砕くと同時に、アンダーグラウンド・メタル界のトレンドを巧みに咀嚼した、そのフレキシブルかつプログレッシブな創造力に脱帽すること請け合いの一枚。


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