見出し画像

Wednesday - Rat Saw God


おいら、カネコアヤノやUKのマリカ・ハックマン、そしてLAのcrushedらと同様に、知る人ぞ知るTrespassers Williamのロッテ・ケストナーの気だるい歌声、その面影を感じる女性ボーカルだと問答無用に好きになっちゃう人間で、今回新たにその枠組みに追加されたノース・カロライナはアッシュビル出身の五人組、Wednesdayの4thアルバム『Rat Saw God』は、それこそカントリーゲイズ(country-gaze)を自称するだけあって、90年代シューゲイザーの影響下にある轟音ノイズを土台に、シューゲイザーのみならずNothingやJesuを連想させるノイズロックやエモやスロウコアを行き来する現代的な側面や、フィラデルフィアのThe War on Drugsを想起させるペダルスチールギターが揺蕩うフォーク/カントリー成分を融合させたオルタナティブなサウンド・プロダクト、そしてバンドを率いるギターボーカルのカーリー・ハーツマンによるロッテ・ケストナー風味の倦怠感溢れるグッドボイスは、もはやシューゲイザー化したTrespassers Williamとして聴けてしまう楽しさに満ちている。

ほぼNothingと言っても過言ではないゴリゴリなノイズロックの#1”Hot Rotten Grass Smell”をはじめ、けたたましい轟音ノイズをバックにシャウターとしての素質を覗かせるカーリーがJulie Christmasさながらの狼狽型シャウトを吐き散らす、その俄然ポスト・ハードコア的な側面を垣間見せる8分半に及ぶシングルの#2”Bull Believer”からして、もはや「ただもんじゃない感」しか醸し出してなくて笑ってしまう。

本作で最もTrespassers William味のある曲で、ペダルスチールギターが揺蕩うローファイ志向のカントリー/フォークの#4”Formula One”、その流れのままThe War on Drugsを想起させるインディー・ロックの#5”Chosen To Deserve”における大胆不敵なダイナミズムはロックンロール以外の何物でもないし、カントリーゲイズらしさに溢れた#6”Bath County”やラブ・サイケデリコ味のある歌メロがパンチライン過ぎる#7”Quarry”、初期のマリカ・ハックマンさながらの倦怠感が溢れ出すフォーク調の#9”What's So Funny”、そしてTW然としたセンチメンタルな寂寥感を醸し出す#10”TV in the Gas Pump”まで、初めて聴くバンドなのにの不思議と懐かしいノスタルジーを感じてしまうほど、とにかく自分の嗜好回路をピンズドで攻めてくるグッドな”ロック”アルバムです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?