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PUPIL SLICER - Blossom


ピッツバーグのコード・オレンジやボストンのVeinとともに、新世代エクストリーム・メタルを牽引するUKはロンドン出身のスリーピースバンドことPUPIL SLICERといえば、ヘヴィ・ミュージックシーンに衝撃を与えたデビュー作の『Mirrors』における、バンドのアイコンでありフロントウーマンのケイト・デイヴィスによるDIR EN GREYの京に肉薄する獰猛なスクリームと、まるで「3の倍数と3のつく数字だけアホになる世界のナベアツ」とばかりに激しくマスを掻くTDEP直系のDissonant系のマスコア/カオティック/ブラッケンド・ハードコア由来の邪悪ネスや初期Deafheavenの影響下にあるブラックゲイズ~エモバイオレンスがエクストリーム合体した、その20年代を象徴する新世代メタルコアの金字塔を打ち立てる事に成功したカッ飛んだ音楽性は、約2年ぶりとなる2ndアルバム『Blossom』でも広義の意味では不変だ。

そのマシズモを極め尽くしたマスコアの1stアルバムと比較すると、マッシーでズモッシーな数字に囚われない代わりに、近年のRolo Tomassiやエンター・シカリさながらのシンセ/キーボードのメロディを多用しながら、俄然コード・オレンジを想起させるオルタナティブ・メタル的なヘヴィネスを強調することで、楽曲に彩りと緩急を施してソングライティングの幅を広げてきた印象。

オープニングを飾る#1からして、キーボードのメロディを強調したインストという変化球を放り投げてくるも、続く#2”Momentary Actuality”では冒頭からブラストを駆使して突っ走るエクストリーミーな暴虐性とサイケデリックなクリーンパートがカチコミ合う、数字に頼りまくった前作とは一線を画した(”ヤバい”もとい怪し気なルック的な意味でもコード・オレンジ的な)新世代メタルコアらしい楽曲を披露する。同様に、本作を象徴する#5”The Song at Creation's End”やシンセ効かせまくりの#6”No Temple”では、Rolo Tomassiの正統後継者と呼ぶに相応しい存在感を示す。

実は、PUPIL SLICERのアルバムって最後の楽曲で最も影響を受けた存在、そのヒントを楽曲内に仕込んでくるバンドで、例えば前作のラストを飾った”Collective Unconscious”は、初期のDeafheavenと近年のDeafheavenの美味しいとこ取りしたような楽曲であったように、一方で本作のラストを飾る表題曲の”Blossom”は、それこそコード・オレンジの紅一点ギタリストのレバ・マイヤーズがボーカルを担う楽曲を露骨にオマージュしている点からしても、本作がいかにコード・オレンジを意識して作られたものなのかが嫌でも理解できる。

確かに、マス一辺倒だった前作のカチコミっぷりに衝撃を受けた人からすると、驚きよりも「そうきたか」と意外性の方が勝るかもしれないが、この「新世代メタルの未来を担う立ち位置のバンド」という視点を持ってすれば、今回の方向性はあまりにも筋が通り過ぎているので、驚きや意外性よりも「納得」の方が勝るはず。


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