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KRUELTY - 虚像の理想郷


この90年代デスメタル然としたオールドスクールのバチコリかっこいい音作りキメてんの一体誰?と思って、よくよく聴いてみたら日本語の歌詞だと気づいた瞬間に国産のバンドであると理解したバンドこそ、名門レーベルのProfound Loreに所属する東京出身のKRUELTYに他ならなかった。

2ndアルバムとなる『Untopia(虚像の理想郷)』においても、Pallbearerの伝説の1stアルバム『Sorrow and Extinction』の影響下にあるエピックな叙情性を内包したトラディショナル・ドゥームメタルの重厚感溢れる肉厚のヘヴィネスと、クラストやDビートなどのハードコアをルーツとするビートダウン成分が融合した、鬼ヘヴィなのに重戦車の如き疾走感とノッリノリなグルーヴ感が、とにかく気持ちのいいヘヴィロック/ドゥームコアを展開している。それこそ、Artificial BrainやTomb Mold、そしてコロラドのBlood Incantationらの20年代を象徴する新世代デスメタル勢に、ハードコア畑から真っ向からスクラムを組まんとする理想的なデスメタルだ。

また、彼らは「理想的なデスメタル」であると同時に「理想的なデスボイス」の持ち主でもある。というのも、例えば「たとえ 糞まみれでも 掲げた拳は降ろさなーい」とかいうクソミソにかっこいい歌詞をはじめ、まるでパンクロックさながらのアナーキズムが込められた歌詞を、不動明王さながらのボーカル畳氏による理想的なデスボイスを以って咆哮する。正直、ここまで端正な発音の日本語デスボイスは初めてというか、それこそOpethのミカエル・オーカーフェルトのデスボイスに肉薄する心地よさと気持ちよさを兼ね備えているし、(歌詞の理解度を含めて)これは日本語が分かる日本人だけの特権かもしれない。

いかにもユートピア(理想郷)という名の地獄、地獄という名のユートピア(虚像の理想郷)の幕開けを飾る#1”Unknown Nightmare”からして、鐘の音と木魚を叩くようなSEとともにお経を唱えると、閻魔大王が降臨してカニコーばりに殺傷力の高いリフで殺戮のデスロールをカマしてこの現世を地獄(ユートピア)へと変える。先述したパンチラインの歌詞を聴かせるハードコア・パンクの#2”Harder Than Before”、Pallbearerさながらの叙情的なソロワークを披露する#3”Burn The System”、仄暗い水の底からお岩さんが不敵な笑みを浮かべる#5”Maze Of Suffering”、クロスオーバー・スラッシュさながらのキザミを垣間見せる表題曲の#7”Untopia”など、どの曲も理想的なデスメタルとしてただただ音が気持ちよくてスカッとユートピア。

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