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普通に生きたい僕であった(58)

下を見ると暗闇しか見えなかった。だが、無限に続く場所ではなかったようだ。少し落ちると目の前が真っ白になった。
「ばあ」急に目の前が真っ暗になると飛び上がった。周りを見るとそこは見覚えのある場所だった。だが、思い出すことができない。
白いベッドに寝転がっていた。窓から差し込んでくる光に目が眩む。少しずつ光に慣れてきた。
ちょうどその時、変なことに気が付いた。ついさっき、窓から光が照らしてきた。なのになぜ窓が見えないんだ。おかしかったがそんなことを気にする気はなかった。
ザー、カーテンが光ると少女が入ってきた。一人は無邪気で僕に飛びついてきた。もう一人は静かそうで額に涙を流していた。
いったいここはどこなのだろう、僕は彼女たちがいったい誰なのかわからなかった。2人は大丈夫だった?とか急に倒れてびっくりしたよとか言っていたがいったい何の話か分からない。覚えていない。
「誰?」僕は2人に訊いた。その場は静まり返った。静かそうな女子は口を少し開いたまま固まっている。彼女たちはいったい誰?なんで僕のことを知ってるの?全く分からなかった。覚えているとすれば自分が男子だということだけだ。自分の名前も覚えていない。
少しすると女性が入ってきた。「回復したようね、よかったわ」彼女もいったい誰なのかわからない。彼女たちは誰?というか自分は誰?ここはどこ?頭の中には質問が無限に出てきた。
ちょこちょこのことはなぜか知っていたドアの開け方、歩き方、言葉。だが、ここがどこなのかもここにいる人も何もほかのことはわからなかった。「記憶喪失のようね」僕はいったいその言葉が何なのかわからなかった。「キオクソウシツ?」不思議な言葉だ。「キオクソウシツとは君が記憶をなくすということよ、過去に起こったことをすべて忘れてしまうの。時には少し忘れないことはあるけどね」
急にキーンコーンカーンコーンと何かが鳴った。あまりにもびっくりして、音の聞こえたほうに手を向けた。
ちょうどその時、爆音が聞こえてきた。というか目の前で起こった。そこにあった四角いものが爆発して音を出さなくなった。女性はいったい何が起こったのかわかっていなかった。僕もわからない。僕は今、自分の手で爆発させたのか、それとも不運だったのか。僕はドアから外に出ると長い道を歩いて行った。どこに向かっているのかはわからない。だが、勝手に体が動いていた。
動かなくなったところは部屋だった。たくさん机があってたくさんの人がいた。全員楽しそうに話していたが、あまりの多さに驚いた。この部屋にだけでも何十人もいた。
思い出すことができない。いったいここはどこなのか、どうしてここに来たのか。僕は一つの席に目が入った。ほかの席とは変わらない机といすだ。なのになぜかそこに座ろうと考えた。
「いったいここは…」1人の男性が入ってくると静まりかえった。さっきまでの騒ぎが嘘だったかのようだ。「それでは5時間目を始める」全員は一人一人席に座っていた。全員その男性を見ていたので僕も見た。「起立、例」
『よろしくお願いします』

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