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私+君‐私は気絶しそうになった

「それで、どこに行く?」君は訊いてくる。私は顔を上げた。「え?」私は君が何かを考えているのかと思っていた。君は完璧だと思っていたから。でも君は考えていなかった。私は彼を眺める目で見た。君も見返してきた。私たちは何も言わずに歩き始めた。2人ともぽつぽつと歩いていた。2人とも何も話さなかった。
街中を歩いているとある店が目に入った。ぬいぐるみなどがたくさん並んでいるところだ。私がずっと生きたかった場所だった。ただ、いつも面倒で行かなかった。数分ほど使えば行けたところなのに。
私はそっちに引かれた。と、その時、君もそっちへと傾いた。私は驚いた。君がぬいぐるみを好むとは思わなかった。
「い、や…そっちを見てたからね…」君理由を作っていたが顔を見れば私にも興味があったと分かる。君は本当に私とは違う。私は心の底からそう思った。私たちは無言で店の中に入った。
私は目を輝かせた。目の前にはぬいぐるみだらけだった。ゲームのからクターから動物まで何でもあった。横を見ると君は口を薄く開けたまま光る眼で店の中を見ていた。
「いらっしゃいませ」店員さんがこっちに歩いてきた。「何かをお探しですか?」優しそうな人だった。背も高く、私が何年たってもなれそうにない背の高さだった。私は首を振った。
私は店の中を歩き回った。地面から天井までぬいぐるみが並んでいた。私の目を一番奪ったのは虎のぬいぐるみだった。体は薄い茶色で腹は白く、黒い線が体中にあった。座っているように見えて、私をじっと見てくる。
目を話すことができなかった。そこへ誰かの声がしてきた。「それが欲しいの?」君だった。私は慌てて首を振った。
「ちょっと待っててね」君は私が眺めていたぬいぐるみを手に取るとどこかへ歩いて行った。慌ててついていくとそこはレジだった。彼は財布を取り出すとお金を払った。
店員さんは私を見ると君に訊いた。「彼女は彼女かな?」君は慌てて首を振った。「友達です」私は少しがっかりした気がした。なんでだろう。
君はぬいぐるみを買うと私に渡してきた。「はい」私は首を振ったが押し付けてくるので遠慮なく受け取った。「また今度代金を返すから」だが、君は首を振った。「付き合ってくれたお礼ってことにしといて」私たちの会話を店員さんは黙って聞いていたが声をかけてきた。「あの…待っている人がいるのですが…」私たちは慌てて店を出ていった。
私は君を見た。どこに行きたいのかを聞こうと思ったが、口をパクパクさせるだけだった。「それじゃああそこに行こうか」今度はカフェに入った。中では滑らかな音楽が流れていた。心の底にひび子音楽だ。
一つの席に座ると君は横に座ってきた。「向こうでもいいのに」無効には席があった。だが、普通の椅子だった。「こっちでもいいじゃん」私はプルプルと震えていたい。顔が熱かった。
店員さんが歩いてきた。「ご注文は何にしますか?」君はお茶を頼んだ。私も同じものを頼んだ。「訊きたいことがあるんだけど、いいかな」君は私に訊いてきた。突然だ。「い、いいけど…」不安だったが、頷いた。「僕のこと、どう思ってる?」
『私は』
え???
『気絶しそうになった』

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