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中編まとめ

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「妹のちヤンキー、時々メイド」

「妹のちヤンキー、時々メイド」

〇〇(4歳)「あやちゃん、おいで〜。」

あや(0歳)「んむぅ。」

小さな彩は〇〇に抱えられてそのまま布団に2人で倒れ込む。

4歳の〇〇の小さな体の上に、さらに小さな0歳の彩が乗っかる形に。

〇〇(4歳)「かわいいね〜。あやちゃん。おにいちゃんだよ〜。」

あや(0歳)「んにゅぅ!」

〇〇(4歳)「おにいちゃんだってわかってくれてるのかなぁ。えへへ〜。」

そしてそのまま…。

「○○〜、

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「Hello, My future.」

「Hello, My future.」

頬を撫でる、真冬の風。

眼下に見えるは大小様々なビルや道路を走る車の数々。

クラクションや電車の走る音などが風と共に耳に届く。

僕は今、とあるビルの屋上にいた。

皆んなはこんななぞなぞを知っているかな。

「ものすごく遠い所だけど、行こうと思えば2秒で行けるところってど〜こだ?」

僕は今、その答えである場所に行こうとしている。

幸い、この屋上には柵がない。

靴を脱ぎ、事前に書いた手紙

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「ストーカー」

「ストーカー」

いつもの朝。

俺は登校のため電車に揺られていた。

○○「ふぁぁ…。」

ここであくびをするのも、いつものこと。

高校が近所なら今もまだベッドの中なんだろうかなどと考えるのも、いつものこと。

女性「この人!痴漢です!」

そう、痴漢ですと言われるのも、いつものこと……

……は?

○○「はい!?痴漢!?」

真横には俺の腕を掴んで高々と上げる女性。

女性「すっとぼけないで!私のお尻触って

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「悪魔の片思い」

「悪魔の片思い」

○○「よいしょっと…」

先生から言われた資料を運ぶ僕。

手がキツくなってきたので持ち直す。

真夏の今日、この資料の束を運ぶのは苦痛でしかない。

言うまでもなく長い長い廊下にはクーラーがない。

しかしこれは日直の業務であり、僕の横では同じように資料を運ぶ女子がいるのだが…。

○○「あ…じゃあ岩本さん、この辺に置いてもらって…。」

岩本「ん…。」

岩本蓮加。同じクラスで、外見も良い。

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「秋に開く美の花」

「秋に開く美の花」

俺が彼女と出会ったのは、高2の春だった。

俺は次のコンクールに出す絵のアイデアが浮かばず、キャンパスを抱えながら校内を彷徨っていた。

放課後の校内というのは、9割近くの音が運動部の声か吹奏楽部の音楽だった。

2年にもなり完全に聞き飽きたそれらは、俺の中で、ただけたたましいという印象だけが残り、静かに絵を描く俺の作業を邪魔する雑音でしかなかった。

音楽室から遠ざかり、吹奏楽部の音声が小さくな

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「想い人にかける魔法」

「想い人にかける魔法」

昼休み。

この高校には中庭や昇降口前のロビー、渡り廊下など、さまざまな場所にベンチやテーブルが設置されている。

いわゆる談笑や昼食にうってつけのスポットだった。

今の僕は青空の下ベンチの一角で昼食を済ませ、教室に戻る途中。

廊下を歩いていると、ガタン!と自分の数メートル先で物音がした。

そしてふとある部屋が目に止まった。

教室ではない、部屋だ。

なぜそこに目が止まったかと言えば、いつ

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「甘え」

「甘え」

私は今日、多分、彼氏と別れる。

というのも、彼に非があるわけではない。

多分日があるのは私の方、なのかもしれない。

わからない、思い当たる節はない。

でも、最近気付いた彼のある兆候から、私が何かしたのかも、彼はもう私を嫌いになったのかも、と思うようになった。

それも最近に始まったではない、付き合ってからずっとそうだと気付いた。

もしかして、最初から好きだったのは私だけだったのかな。

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「一筋のオモイ」

「一筋のオモイ」

空が橙色に染まり、今にも日が落ち夜が近づいている事を知らせる夕刻。

剣道場から一つの足踏みをする音と声が聞こえる。

やっぱり。

道着で来て正解だった。

覗いてみると、案の定音の正体はあいつだった。

○○。

小中高と一緒で、いわゆる、幼馴染。

そして、私と同じ剣道部に所属している。

私は、6歳までは関西にいたから方言があるけど。

彼は額に玉のような汗をかきながら、それらを全く気にせ

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「新しい世界へ」

「新しい世界へ」

僕は今、空港にいる。

もうすぐ遠くへ行ってしまう彼女の絢音を送り出すためだ。

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数日前のことだった。

家で一緒に飲んでいた時のこと。

僕は2人で食べたご飯のお皿を洗っていて、彼女はテーブルに腰掛けて俯いていた。

絢音「ねぇ、○○君。」

○○「ん?どうした?」

すると、伏し目がちに彼女が言った。

絢音「私ね、今度留学しないかって話が来て…。」

○○「…えっ?」

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「夢幻」

「夢幻」

俺は夢を見ていた。

誰かの声が聞こえる気がした。

誰かが、俺に話しかけている気がした。

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俺は目を覚ました。

辺りを見回す。

何か、長い夢を見ていた気がする。

だが、内容を思い出せない。

何か、壮大で忘れてはならないような夢だった、気がする。

いや、今朝見た夢の話なんてどうでもいい。

今日は高校の入学式だ。

朝食を済ませ、まだ着慣れないブレザーに身を包む。

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