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「三浦春馬とHEROたち」(2)


三浦春馬と宮沢賢治

ー信じる力は、人を感化するー


わたしは、ほんとうに何人(なにびと)でもないけれど、まぎれもなくファンで当事者であり、その目線で書き始めています。
 
前回の金子みすゞと同様に宮沢賢治も、詩や童話を書いた人です。いまではあまりにも有名ですが、はじめての詩集の売れ行きはすこぶる悪かったのですね。(このへんのことも、映画『銀河鉄道の父』に描写されていました。父や妹・トシに愛されたけなげな賢治の生き方を見ながらけっこう涙腺がやられました。)
 
少し前になりますが伝記を読み進めていったとき、いくつも春馬さんと人間性が似ていることに驚きました。いつでもひたむきで、美しいものに熱中する感受性の豊かさ…そして、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」のような生き方を貫いたことです。
 
賢治と交流のあった高村光太郎は『宮澤賢治全集』にこう書きました。「(同郷岩手県の)啄木といい、賢治といい、みな誠実な、うそのない、つきつめた性格のひとでした」。つきつめた性格とは、ひたむきさや一途という意味にわたしはとらえました。
賢治がこの詩を書いたのは、病床だったといいます。心からの自分の理想を描いたのだろうなと感じます。否、すでに『ほんたうのさいはひ』をもとめる生き方をしていた。

 
春馬さんもまた、「生真面目に、懸命に生きた」人でした。一見脆いようであっても、だからこそ理想に向かって極限まで努力を重ねた、という人物像がかさなるのです。そして、春馬さんを知るほどに、有名なこの詩が、春馬さんの生きかたを言い得ているようにおもえて、いつも胸が熱くなるのです。
 
 
「雨ニモマケズ」
雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 欲ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル

一日ニ玄米四合ト 味噌ト 少シノ野菜ヲタベ

アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキシ ワカリ ソシテワスレズ (略)
 
 
 またあるときには、三浦春馬のもつ「華とは意志」にほかならない、と綴られたかたの言葉をよんだとき感銘をうけました。賢治も「心の底からなにかを信じ切っている、自分の存在が信念そのものであるからこそ、オーラがうまれ、周囲の人を感化した」と賢治の研究者が書いていました。
「信じる力」は「人を感化する」と。

 
こんなことばにふれると、「自分らしく生き、さらに偏見を捨て、他人を受け入れれば世界が変わる」という作品のメッセージを伝えたいと願う、キンキーブーツのローラが鮮やかにうかんできます。
 
 
賢治は『農民芸術概論綱要』(1926年)という著書のなかで、「詩人は苦痛をも享楽する。永久の未完成、これ完成である」と書きました。賢治の童話は、「わからなさ」の感覚を残す。だからこそ想像力のスイッチが入り、それゆえに今も多くの人に読まれているという。
 
それだから結局今日も、三浦春馬のことが頭から離れない。


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