Summer

拝啓
込み上げる 鳴り止まぬ 崩れる顔を眺めてる
机の奥には 君が過ごした ちっぽけだけど明るい記憶
犬が笑い 川に流す 大切な物の燃えカスを
取り払って 振り払って 目に沁みる あの夏を
走れ
走れ
夏を

捨てきれてない訳じゃ無い 指にこびり付いた残り香が
逃げろ
逃げろ

夏を思い出して水を飲んで乾く喉を忘れよう

そこら中に倒れる人の丸まる背中を見るお前がいる
透明な血を流す彼らに指を刺される傘をさして立つだけの自分がいる
降り止まぬ雨に溶ける血の行方もわからなくなる
胸に掲げる両手に溜まった透き通る感情の渦に
溺れる
溺れる

乾いた喉を癒せる血のありかをずっとずっと探し回ってる

過去の思い出がいつの日か憧れに変わった日を覚えてる?
眩しい日差しの下で手を差し伸べてくれる彼女の優しい笑顔を
真っ直ぐ伸びるあぜ道を入道雲に向かって駆けたあの日々を
錆びついた自転車を必至に漕いで宝物を作ったあの日々を
とうとうそんなことも忘れそうになった日のことを

敬具

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