三日坊主

 三日坊主というのはいけない言葉です。
 彼のおかげで、日本中で、こころざしの高い人が三日で辞めます。
 全部彼がいけないんです。
 勉強、貯金にダイエット。
 みんな、三日で辞めている。
 
 辞めた人と話すとき、いつも隣に立っている。
 
 「もし、あなたは。」
 「はい。三日坊主です。」
 「あなたのおかげで、いつもみんな三日で辞めますね。」
 「はい。そういうもんなんでございます。」
 「ところで、いつから三日坊主なんですか。」
 「はい。ずーっと、前からでございます。」
 「ずーっと、前ですか。」
 「はい。おっしゃる通りでございます。」
 「なら、あなたは三日坊主じゃない?」
 「はい。ずーっと、ずーっと、家業です。」
 「ならなら、あなたはきっと、『ずっと坊主』ですね。」
 「おっしゃる通りかも、しれません。」
 「これからは、ずっと坊主になりませんか。」
 「そうさせて、いただきます。」
 
 坊主は、いい言葉を広めました。
 彼のおかげで、日本中で、こころざしの高い人がどんどん成功しました。
 みんな、ずーっと続いたからです。
 勉強、貯金にダイエット。
 みんな、ずーっと続いてる。
 
 頑張る人と話すとき、いつも隣に立っている。
 
 「もし、お元気ですか。」
 「はい。おかげさまでございます。」
 「家業の調子は、どうですか。」
 「はい。三日は続いてございます。」
 「上々ですね。」
 「上々です。」
 「頑張って下さい。」
 「はい。では。」
 
 
 最近、いけない言葉が現れた。五日坊主というらしい。
 彼のおかげで、日本中で、三日続いた人が五日で辞める。
 全部、彼がいけないらしい。
 
 辞める人と話す時、いつも隣に立っている。
 
 「五日坊主はあなたですか。」
 「左様!」
 「いったい、いつから五日坊主なんですか。」
 「無論、ずーーっとだ!」
 「ずーーっと、五日坊主を続けていたんですか。」
 「そうだ!日本中を三日坊主が牛耳っている間、ずーーっと、ずーーっと、細々と家業として営んできたのだ!三日坊主がずっと坊主に変わったおかげで、やっと実を結ぶことができたのだ!」
 「なるほどぉ。」
 
 
 
 おしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?