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(2024年3月)上野でみた大道芸(2)その2前編

(つづき)

上野公園内にある交番。
その交番の裏手にあるカフェテリア附近、スピーカーからテクノポップな音楽が聞こえてくる。
「風のチェック」と言いながら、年齢にして30歳前後の男性がなにかやっている。
それを見ている子どもたちからは「お~~~っ」「うゎ~~~」という声が聞かれる。
左右の手に持った棒はヒモでつながれ、その間をお椀を二つ背中合わせにしたようなモノがまるで生き物のように動いている。
疲れた日常生活の中では見慣れないその道具は、私こと飛吉が想像するにどうやらジャグリングの道具のようです。
男性はその道具を使って簡単なデモンストレーションのようなことをやりながら、30分のジャグリングショーをすると言っていました。
飛吉氏、正解。

細長い風船をニギニギネジネジしながら可愛いネズミのキャラクターを作っていると、お客さんが集まってきました。
大道芸人の人は、親しみやすいスマートなドラ声を張り上げながら大道芸的な雰囲気を作っていきました。
上野公園という場所柄、ジャパニーズ以外も多く、大道芸人の人は海外の人に向けてカタコトの英語を駆使してお客さんを迎え入れていました。
そして観衆の興味を引きつけるように細かなマジックやバランス芸を矢継ぎ早に行っていました。
大道芸人の人とお客さんとのYeah!の練習に付き合わされるドビュッシーみたいな外国人男性は若干はじらいながらも、子どもも大人も外国人もだんだんと盛り上がりの様相を呈してきました。
水晶玉を手のひらの上でコロコロしたかと思うと空中に浮かび上がりました。
「お~っ」と驚く間も無く、今度は大道芸人の人は細長い風船を手早く膨らませました。
そしてその風船を口の中へ入れようとした時のことでした。
寒さよけに帽子をかぶり白いマスク姿、両手に紙袋を下げた初老の男性が、ゆったりと歩いてきました。
そのまま何事もないように、大道芸人の人と集まったお客さんの間を、悠然と横切って行ったのです!
大道芸人の人の目の前を歩いて行くその男性には悪気があるようには見えず、むしろ彼の視界には目的地に向かって歩いて行く以外に何ものも存在しないようにさえ思えました。
大道芸という非日常を体感させる娯楽のなかに、突如として超然的な現実がぶっこまれた瞬間でした。
そんなちょっとしたハプニングがあったものの、再び大道芸人の人は細長い白色の風船を空に向かって立てるように持つとそれを口の中へ入れ始めました。
1m以上はある長く白い風船が大道芸人の人の口の中へ飲み込まれていきます。
いや、飲み込むというよりパクパクと食べています。
そしてあっという間に食べきってしまうと、ごちそうさまも言わずに両手で口を大きく開けると、お客さんの近くまで行って周り、口の中には風船がないことを見せて回っていました。
風船は完全に消化されてしまったのか。
食糧難の時代にあっても風船を食べて飢えをしのげるのでしょうか。
すごいぞ大道芸人の人。

(2024年3月)上野でみた大道芸(2)その2後編 につづく


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