骸骨

骸骨

 「この旗の下に集えし若人よ。私がキャプテン・カピバラ
だ・我が国でも秘密保護法なる一部の権力者や既得権益を握
った輩に都合の良い法律が成立してしまった。
自由の旗の下、彼らの鼻を開かして遣ろうじゃないか、
諸君の集めた情報は我々が責任を持って公表する。
今の力では、サイバー空間での活動となるが本格的な海賊船
を仕立てて海賊放送を開始する予定だから期待して呉れたま
え。
宇宙海賊戦艦シュピーゲル号を就航させる予定だ。
サイバー空間だけでは無く宇宙空間から放送する予定だ。
だから私は、宇宙海賊キャプテン・カピバラを名乗るのだ」

キャプテン・カピバラと名乗る変人は、カピバラの着ぐるみ
ゆるキャラだ。頭には、三角の大航海時代カリブの海賊を
彷彿させる帽子を被り、その時代の海賊が羽織る様な上着を
着ていた。無論、前は大きく開いている。特注品では無く、
コスプレ用の衣装で済ませている為か前は締まらないのだ。
大笑いの緩い緩いキャラクターが大真面目に演説しているの
だ。人混みが、出来ている。呆れて帰る人は少ない。
秘密保護法には、皆、疑念を懐いているのだ。
世界大戦を経験した高齢者は、戦中・戦前の国家統制と
何時のまにやら軍国少年。少女にさせられた恐怖を全共闘世
代を含む団塊の世代は、朧気に思っていた人民の敵の
イメージを浮かべたのだ。

 「シュピーゲル号の雄志をお見せしよう」

カピバラがそう喋った。途端にショッピングセンターの巨大
なビルの壁面が明るくなった。プロジェクションマッピング
だ。宇宙の渚、弧を描いた大気圏が日光に照らされ輝いてい
る。その中を骸骨のマークを付けたシュピーゲル号が現れ
た。段々大きく成っていく凄い迫力だ。
観客は沸いた。カピバラが乗り込んだ様に見えた。
カピバラが乗船したシュピーゲル号は、更に巨大に成って
行き艦底を見せ上昇した。やがてビルの壁面から上空に消え
ていった。何だったんだろう。カピバラの姿は消えていた。
騒ぎを聞いて駆けつけた公安当局が調べたが、プロジェク
ターの類は発見されなかった。撤収が鮮やかだ。

 「俺たちは公安警察機動隊九係『疾風の九係』だ。
俺たちを巻くとはとんでもない奴らだ」

DJポリスとして穏便な時期は脚光を浴びていた警官が、
嘆いた。でも噂では、『疾風の九係』は、撤退が風のように
早いから名付けられた筈だ。

文末

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