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五十代、二次創作を一年間頑張ってみた(半年経過①)

 私がお話を書き始めたのは小学四年生の頃だったと思う。
 いわゆる陰キャの私の友達はまさに本。本さえあれば、頭の中は薔薇色だった。

 そして、ついに当時好きだった「ネズミが主人公の冒険児童書」を元に自分でサイドストーリーを作るという、あるあるな展開に行き着いたのだ。その作業はとても楽しかったと記憶している。
 好きなキャラを、好きな展開で思うまま動かせる喜び!しかし、こっそり書いていたのを母親と姉に見つかり(それだけで処刑)、なおかつ誤字まで指摘され、挫折という塩っぱい思い出となった。ので、お子さんが同じようなことをしているのを見つけたら、そっと見守るか、褒めてからの上手く優しく指摘することをお勧めする。

 十代半ば過ぎ、私はすっかり一次創作の世界にどっぷりハマっていた。歴史好きということで、書くジャンルは史実をアレンジしたオリジナル。日本史は勿論、ドイツやイタリア、フランス、イギリスの歴史を美味しく妄想に組み込むのが楽しかったし、なおかつ歴史のテストは高成績。一石二鳥だった。

 結婚後は三人の子育てで忙しく、創作のことはすっかり諦め、思い出となっていた。

 長女が高校生の時にある事実が発覚した。そう、彼女はとある推しジャンルの「腐女子」だったのだ!
 なぜ分かったかというと、私も十代から「腐」っており、同志の香りを感じたからなのだ。彼女は割とすんなり認め、固い同志の握手を交わした。推しジャンルの話や同人誌の話を親子でするのは楽しい。
「お母さん、昔、一次創作しててん」
と告白すれば
「私、二次創作してる」
 と返って来た。
 やるな、遺伝子と唸る。
 数年後、彼女が創作のアドバイス乞うので、一緒に取り組んでいると自然にアイデアが浮かんでくる。
「お母さんもしてみような……」
 と、思わず口から出てしまったのだ。

 選んだジャンルは、娘がここ最近推している漫画原作もある擬人化アニメで、私の好物の歴史も組み込みやすい。さらに彼女の推すカップル(以下CP)で挑戦しようと考えた。なぜかというと、彼女の部屋にはそのCPの「薄い本」という教科書がたんまりとあったからだ!そして、そのCPは割と少女漫画系の展開がウケる傾向にあり、私には書き易いと思った。

 私はPCを持っていないので、五十代、老眼気味に鞭打ってスマホのメモ機能でポチポチと文字打ちを始めた。
 楽しい!
 十代〜二十代に戻ったようだ。
 家事と育児、パートのみの人生が急にキラキラと輝き始めたのを感じた。

 書き上げたのはCPと、とある歴史人物を絡めた話。
「面白いよ!」
 と、娘に褒められて凄く嬉しい母。ついつい調子に乗って続編まで書いてしまった。
「いや、これ投稿しようよ!」
 は?投稿、だと?
 寝耳に水だ。
 そうか、若かりし頃にはないSNSが普及する現代、そんなサイトがあることは知っていたが頭にはなかった。
「私もしてるし」
 なんだとー!いや、知っていたけど。
「大丈夫これ?出しても大丈夫なやつ?」
 おばちゃんは慣れないので怖いのだ。
「大丈夫、大丈夫」
 ということで、十代の頃は友人一人にしか見せていなかった自己満足創作を、五十代にして投稿サイトにて全世界?に流すこととなったのだ。(大袈裟)
 選んだサイトは娘も登録している割とメジャーな所。とくれば、だいたい察しはつくだろう。
「怖い怖い」
 と謎に怖がりながら登録して、娘に導かれるままついに「投稿」をポチっと押したのだった。
 感無量……サイトのそのジャンルに自分の作品が並ぶのを見た時、じぃ〜んとしてしまった。すぐに娘は家族のよしみで、いわゆる「いいね」をくれる。
 それで十分だ、と「その時」は思っていた。

 しばらくして、なんか通知の赤い⚫︎が付いてる……と、気味悪がって娘を呼んだ。
「大丈夫だよ」
 と言われ通知を見ると、「いいね」とフォローのお知らせだった。親切などなたかの評価とフォロー。
「フォローってなんなん?大丈夫?なんかせなあ、あかんの?」
 慌てる母にSNS慣れしている娘曰く、
「ほっといたらええねん。フォロー返しもしなくていい」
 らしい。そんなもんなんだ、よく分からないが、そうなんだ……。
 そして、赤い⚫︎は少しずつ増えていったが、二桁を前に止まることになる。が、閲覧数は思っていたより多くて(大手さんに比べると格段に少ないが)とても嬉しかった。

 私は承認欲求は強い方だと思う。姉は頭がよく、美人だとよく言われていた。反対に私は理数に弱く、「本当に妹?」と当時付き合っていた彼氏にも言われたことがある。コンプレックスの塊で、唯一褒められたのが絵と文章。仕事には役に立たなかったが、今になって文章に「いいね」を頂いて、とても嬉しくて一年間、二次創作にチャレンジしてもいいかな、と思った。おまけに、
「お母さん、凄く生き生きしてる!」
 と末娘にも言われてしまったので、さらに調子にのって次の作品に取り掛かったのである。  

 余談だが、私の書く話には必ず付いてくるものがある。それは「魂の救済」だ。と書けば格好良いが、つまり辛いことがあっても、どういう形になっても、救われるという作者の好み。
 子供の頃の記憶だか、初めて見た漫画は父が買って来た手塚治虫さんの「火の鳥」だ。幼心に人生はままならぬもので、どんな形でもどこかで救いがあれば……と悟った。凄く影響されたので、子供の頃に目にしたり聞いたりしたことは大切だと思う。因みに、母が買ってくれた「マザーグースのうた」の本は、絵がちょっと怖めだったので、今だに怖くて忘れられない。笑い話だ。

 話は戻り、新しい二次創作の構想を練るのと同時に、娘からそのジャンルの公式について学び、作品を読み、アニメも鑑賞。その界隈の二次創作の大手さんの作品も読んだ。好みの作家も出来、さらに楽しくなるが、反対に怖さも出て来る。そう、これはあくまでも二次創作だ。二次創作には携わる人々が古から守っているルールというものがある。それを何度も娘に確認し、キャラの解釈、口調などを崩さぬよう努めなくてはいけない。
「違う、こんな言い方しない」
 などと指摘されると少し凹む。仕方ない、娘とはいえ、彼女は先輩だ。一次創作民だった私はかなりストレスを感じだが、書きたい欲の方が強かった。

 そして、新作としてシリーズものを投稿した。前回と同じくそのCPと歴史を絡めての作品。フォローして下さる方は増えたが、閲覧数も「いいね」も少なく行き止まり状態。シリーズもニ、三となるとさらに少なくなる。
 何故?と首を傾げた。まぁ、内容と書き方の問題は勿論あるだろうが、何かコツというものがあるのではないかとネットでリサーチすることにした。
 まず、
その一 作品のキャプションを読み手のことを考えてわかり易く、興味を引くようにすること。

その二 閲覧数を増やすにはXなどの媒体での作品アピール。興味を持ってもらう。

その三 同界隈に人脈作る。
などなど。

 五十代、SNS初心者、臆病な私がすぐに出来ることは、今のところ「その一」しかない。一応、Xのアカウントはあるが、見る専。
 一年頑張ると娘に言った手前、引くに引けないのと、楽しくなった日々をまだ手放したくないという思いで挑戦してみることにした。

 キャプションをいわゆる「あらすじ」みたいなものと考えると納得する。本屋でふらっと本を買う時にあらすじを見ないで買うことってあまりない。二次創作、特に「腐」はその愛するCPがいかに幸せになるか、また、まれに別れても、互いを想い合っているかが重要視されている気がした。だから、ハピエンならちゃんと記して読み手に安心してもらい、地雷を踏まないよう気をつけないといけない。(個人的意見)

 私は少しやり過ぎかなと思いながら、詳しめにキャプションを編集して再び投稿した。
 結果は……閲覧数と「いいね」が少し増えただけ。娘に報告すると、
「え?そんなん気にしてるの?別にいいやん、数なんか気にすることないやん」
 と塩対応。
「いや、投稿するなら見て欲しいやん」
 と言うと、
「そんなん気にしたことないわ」
 と返された。
 そんなものかぁ……と感じるも、やはり投稿するなら見て欲しいと思ってしまうのである。



次回は伸びない数字とジャンルの中の「ジャンル」に惑わされる私。



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