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【廃棄物処理法解説】特定有害産業廃棄物 4~ダイオキシン類編~

皆様こんにちは!越後谷と申します!
静脈産業に長年従事し、法令関連の記事制作を担当させていただきます。
今回は特定有害産業廃棄物に規定されている有害物質、ダイオキシン類について解説していきます。

ダイオキシン類とは?

ダイオキシン類は、塩素を含む物質の焼却や塩素系農薬などの化学物質合成時の副産物として生成される有機塩素化合物です。
ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)の3種類に大きく分けられます。
PCDDの1つである2,3,7,8-テトラクロロジベンゾジオキシン(TCDD)はダイオキシン類の中では最も毒性が高く、国際がん研究機関(IARC)からは人に対する発がん性があると評価されています。

セベソ事故と健康被害

セベソ事故とは1976年(昭和51年)7月10日にイタリアのセベソという街で起きた農薬工場の爆発に伴う大規模なダイオキシン汚染災害です。この爆発によりTCDDが住宅地を含む1,800ヘクタール(東京ドーム391個分)に飛散しました。

この事故の影響で事故当日に家禽やウサギなど3,300羽の動物が死亡しました。事故翌年には流産率の異常な増加や奇形出産率の増加などの影響がありました。
また、この事故でダイオキシンに被曝した多くの人々が糖尿病、心臓病、ガン、ホジキン病などの症状に苦しんでいることが公表されています。

国内のダイオキシン類対策

日本のダイオキシン類問題は1983年(昭和58年)に清掃工場の焼却灰から高濃度のダイオキシン類が検出されたという報道があったことから始まります。
1990年(平成2年)に『ダイオキシン類発生防止等ガイドライン』(旧ガイドライン)が厚生省より発出され対策が図られます。
その後1997年(平成9年)に『ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン』(新ガイドライン)が発出され規制強化が図られましたが、同年大阪府内にある清掃工場 豊能郡美化センターで排出ガスのダイオキシン濃度が基準値を大幅に超過していることが発覚しました。

その後の調査で施設の周辺も高濃度のダイオキシンに汚染されていることが
判明します。
この施設はダイオキシン類の基準値超過発覚直後に運転を休止、1999年(平成11年)6月から解体されました。
また、この事件はダイオキシン汚染物の処理の問題で未だに尾を引いています。興味のある方は下記の記事をご一読ください。

豊能郡美化センターのダイオキシン類の基準値超過問題を受けて1998年(平成10年)に厚生省から『廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類削減対策の徹底について』という通知が発出され対策の強化が図られます。

1990年代にはもう一つダイオキシン問題で社会の注目を集めた所沢ダイオキシン事件があります。
この事件は、埼玉県所沢市内に14基の焼却施設が乱立していた地域(通称くぬぎ山)で起きたダイオキシン汚染問題です。
1995年(平成7年)にくぬぎ山周辺の土壌などがダイオキシンに汚染
されていると報道されたことから始まります。
1999年(平成11年)には某テレビ番組で所沢産野菜はダイオキシン濃度が高いとの報道を行ったため、所沢産野菜の不買運動などが起こり社会問題となりました。

その後、住民運動や行政等の働きにより2002年には14基の焼却施設は廃止されました。
このような社会情勢を受けて、国会でもダイオキシン対策の議論がされ、1999年3月にダイオキシン類対策関係閣僚会議によりダイオキシン対策推進基本指針が決定、同年7月に議員立法でダイオキシン類対策特別措置法が成立しました。

ダイオキシン類対策特別措置法の概要

ダイオキシン類対策特別措置法は、ダイオキシン類による環境汚染の防止や環境汚染の除去等を図り国民の健康を保護することを目的とした法律です。概要は以下のとおりです。
1.耐容一日摂取量
ダイオキシン類を人が生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に影響を及ぼす恐れが無い1日当たりの摂取量(耐容一日摂取量)が4pg/kg/日以下と定められています。
2.環境基準
人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として環境基準が設定されました。環境基準は下表のとおりです。

3. 特定施設からの排出規制と届出等
規制の対象となる施設を特定施設とし、施設ごとに排出基準値が設定されました。
また、特定施設を設置している(設置しようとしている)事業者は、都道府県に届出が義務付けられました。
特定施設については、下記のリンクを参照してください。

また、特定施設を設置している事業者は、特定施設から排出される排出ガス、排出水、焼却灰について、毎年1回以上の測定を行い、都道府県知事(政令市長)に報告しなければなりません。(報告された測定結果は、公表されます)
4.ダイオキシン類により汚染された土壌への措置
都道府県知事は、ダイオキシン類により汚染された具体的な地域について、土壌からダイオキシン類を除去する必要がある地域をダイオキシン類土壌汚染対策地域として指定することができます。
ただし、指定する地域は政令で定める要件を満たしていなければなりません。
また、ダイオキシン類土壌汚染対策地域を指定した場合、ダイオキシン類土壌汚染対策計画を定め、土壌汚染の除去事業【廃棄物処理法解説】特定有害産業廃棄物 ~ダイオキシン類編~
を迅速に実施しなければなりません

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