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【英語】可算・不可算名詞なんてない

引き続き「英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」」(朝尾幸次郎著 2019年)の一部受け売りです。

名詞の可算・不可算というのは名詞に内在する性質ではありません。それは話し手の認識です。

前掲書 p.149

この文を読んだとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。

「可算名詞」「不可算名詞」という区別は名詞に内在せず、
同じ名詞でも、話し手の認識次第で数えられたり、数えられなかったりする、ということです。

日本語でも、話し手の認識次第で同じ名詞でも捉え方が変わることはあります。

例えば、
「あ、車がある」 と
「あ、車がいる」 

いずれも正しい日本語の表現です。

これを「車は無生物だから『ある』が正しい」と機械的に覚えると、
「車がいる」の持つニュアンスがあまり理解できなくなります。

さて、英語に話を戻しますと、
「数えられる名詞」というのは、個人的には誤解を招く言葉だと思います。

「数えられる」と言うと、「1、2、3、、、」と指折り数えられるのかと思ってしまいますが、実際は必ずしもそうではありません。

例えば、「月」は「the moon」ですが、「満月」と言う時は「a full moon」と言います。この「a」は「月の見せる姿の1つ」を現しているわけです。

なので、別に「two full moons」という複数形を想定しているわけではないので、「数えられる」わけではないのです。

また、「a proud Graham(自慢気なグレアム、前掲書 p.148)」は、固有名詞に不定冠詞が付く形ですが、これも「グレアムの見せる姿の1つ」を現しているわけで、

「I know four proud Grahams」といった「数えられる」状況は前提としていません

前掲書では「形があるもの=可算名詞」「形がないもの=不可算名詞」と説明しています。

例えば「chicken」は、形があるもの、つまり農場で走り回っているニワトリの場合は可算ですが、形がないもの、つまり肉になってしまって決まった形をしていない場合は不可算になります。

「water」は水、「a water」はお店で出されるようなグラスに入った水。
「fire」は炎、「a fire」は火事。

「形がある」の概念はノンネイティブである私たちには分かりにくいですが、

「(おおよそ)決まった形のあるもの」(生きているときのニワトリ)
「始まりと終わりのあるもの・動作」(休憩、会議、風邪)
「とあるものの多様な姿の1つ」(月、グレアム(人物))

こういったものが「形のあるもの」と英語ネイティブには認識されるようです。

要するに、「形がある」とは「形を具えた」つまり「具体的」で、
「形がない」とは「抽象的」ということです。

抽象名詞という言葉もありますが、名詞自体が抽象的だというよりも、どの名詞にも具体的な側面と抽象的な側面があり得ると認識するのが大事です。

そのため、個人的には「〇〇という単語は数えられないから……」という覚え方は、長い目で見るとあまり意味がないと思います。

「可算名詞」「不可算名詞」という言葉は使い勝手が良い一方、落とし穴もありますね。

そのため、「数えられる」ではなく「形がある/具体的」
「数えられない」ではなく「形がない/抽象的」と捉え、
それも名詞自体の性質ではなく、話者の頭の中にある認識に過ぎないと理解する。

この考え方の転換は、語学学習に非常に役立つと思います。


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